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五月は翠玉(三)
「ご飯よー!」
階下からの母の呼び声で潤子の妄想は打ち切られた。潤子は不機嫌になってしまったが、お腹が空いていたのも確かだった。
「ご飯を食べようってときに、なんで潤子は仏頂面をしてるんだ?」
「別に。」
「かわいくないなぁ。」
「ふん!」
「まぁまぁ、とにかくいただきましょうよ、お兄ちゃんも。」
「はーい。」
「いただきまーす。」
いつもどおり、家族揃っての夕食が始まった。
でも、潤子は迷っていた。哉子から預かった緑色の宝石について話をしてもいいのやら。本当は話したくてしょうがなかったのだけれど、預かった手前、家族に話していいものかどうかを迷っていた。いっそのこと、話してしまうきっかけが欲しかった。いや、むしろ、話をするきっかけを探していた。