四月は金剛石(六)
そのボケットからまずは定期を取り出してみて、奥底に手を押しやってみたところ、やはり異物があった。取り出してみるとそれは、ダイヤモンドの粒のように見えた。少なくともさくらにはそう見えた。
いやいや、ダイヤモンドがポケットに入ったりしない。
さくらは心の中でそうつぶやいた。でも、目の前、机の上に置いてみたそれは、テレビドラマかなにかで見たことがある正に「ダイヤモンド」というあの形のそれで、それらしい輝きを放っていた。
そういえば母のネックレスのダイヤモンドだってこんな形だった。
こちらのダイヤモンドは直径五ミリくらいはありそうで、宝石の粒にしては大きいんじゃないだろうか。
それにしても一体なぜこんなものがカバンのポケットに?ポケットにはチャックがついていて、これを開けないと中にモノは入れられない。
満員電車の中で誰かが入れた?なんのために?
いやいや、もしかしたらそれよりもずっと前?学校で誰かが入れた?なんのために?
朝、学校に行くために電車を乗り降りしたときには、なかったよね?…多分。
それよりこれ、警察に届けなくっちゃいけない?こんな遅くに?明日でもいい?疑われない?親に言うべき?
さくらはそんなことをいろいろ考えてしまい、とても眠るどころではなくなってしまった。