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一月は柘榴石(二)
ゆえに蕗子はジャンヌと呼ばれていた。本人はどこかで聞いたそのあだ名を気に入っているようだった。冗談交じりに自らそう名乗ることさえあった。
三日月が輝く夜空の下、真っ赤なルージュの横、さらにどす黒い柘榴石が鈍い光を放つリングを纏った人差し指を添えて「私はジャンヌ」なんて囁かれた日には、帰宅を忘れる男がどれほどいたことか。一夜を共にした男は翌日もその翌日もジャンヌを求めたが、蕗子が同じ男と二晩続けて共に時間を過ごすことはなかった。
はたして蕗子はふしだらで破廉恥きわまりない魔女に過ぎなかったのか。