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三月は藍玉(四)
藍がキッチンに入って来た。
「一人にしてあげなよ。」
「つまんなーい。」
ドン!と阿久愛は肉に包丁を突き立てた。
「あぶなーい。手伝おぅかぁ?」
「あっち、行って。」
「手伝わせてよぉー。」
「だからさー!」
「あら、また怨念カレー?」
母が父を連れて帰って来た。
「…悪い?」
「悪い訳ないだろー。」
「そーよねー、毎回おいしいものねー。」
「あのさぁ、」
「なぁに?」
「両親だろ?心配じゃないの?」
「まぁ、心配は心配だけど。」
「うん、解決はしてやれないからな。」
「カレーは一緒に食べてあげられるけど。」
「うん、うまいしな。」
こんな風に、両親が居ると毬鈴の声はかき消されてしまうのだった。
阿久愛は黙々とカレー作りを続けていた。