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三月は藍玉(二)
毬鈴は実に朗らかで明るくて積極的で、快活で、正統派の美人で、頭も良くて運動も良くて、クラスの人気者ナンバーワン!になることが間違いのない女の子だった。父母の目どころか、姉と弟以外に彼女の存在を知る者はいなかったけれど。
「オバケのくせに。」というのが二人の口癖だった。
毬鈴はなにかと姉と弟を元気づけ、勇気づけ、どんなに面倒くさがられても姉弟を励ました。
阿久愛が自分以外の人には妹が見えていないと気づいたのは、小学校に入学し始めた頃で、自分が内気になったのは毬鈴のせいだと言っていた。弟ができたときも、他の人には見えないんじゃないかと心配で心配で、友達を家に呼ぶことなんてできなかったとまで言っていた。
藍も同じくで、ほかの人には見えない姉のせいで自分は内気になったのだと言っていた。
「いいわよ。そうやってなんでもアタシのせいにしなさいよ!」
いつもそう言って笑い飛ばす毬鈴であった。