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一二月は灰簾石(二)

マスターは箒を持ち出して掃除を始める。分かっているのだ。見慣れないこの場違いな身なりの良い女性客が大事な誰かを待っているということを。龍美は心の中では申し訳ないと思いながら、見て見ぬふりをする。店内の明かりを薄暗くしているため、もう入ってくる人はない。あと、もう一人がくればその日の営業は終わるはずだった。

龍美は考えてはいなかった。「もし、カズさんが来なかったらどうしよう」なんて選択肢は彼女にはなく、ただ、その約束の場所で待っているというそれだけであった。そして不安をかき消すかのように龍美は二人の幸福な未来を想い描いて没頭しようと努めた。カズさんがどんな職に就こうとも自分は支えよう。いや、自分も仕事をしよう。自分にはなにができるだろうか。子供も欲しいけれど蓄えが必要だから、後になってもいい。けれど、年齢もあるから三〇になる前には出産した方がいい。いや、何歳になっても出産できればいい。カズさんの子供がこの世に生まれて欲しいもの。男の子がいいかしら。女の子の方がいいかしら。龍美の妄想は尽きることがなかった。


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