表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/129

一一月は黄玉(二四)

「あ、は…、」

希依は学校の名前を出すことを躊躇した。

「いえ、地元の…その、知人でして…」

女は訝しげな表情を変えることなく、答えた。

「入口ですれ違いませんでしたか?さっき出ていったばっかりで、今日は遅くまで戻りません。」

これを聞いて希依は駆け出した。扉のノブが引っかかって、うま廻らなかった。受付の女にお礼も言わなかったことに気がついた。ドアノブが廻った。扉が開いた。一歩外に出て女の方へ向き直り、深くお辞儀をした。扉を締めた。大きな音がした。予想を遥かに超えたあんまりにも大きな音だった。もう一度扉を開けて謝ろうかと思ったが、それは辞めて、扉へ向かってもう一度深くお辞儀をした。希依の横を訝しげな表情で通り過ぎ、社内に入って行った男性があった。受付の女も訝しげな表情で季衣を認めた。希依は階段を駆け下りた。出したスピードが止まらないといったくらいの速さで、大きな足音を立てて駆け下りた。階段を上がって来る人が恐怖を感じて立ち止まるほどの勢いだった。地上階までたどり着いた希依は開けっ放しの正面玄関も走り抜け、勢いを落とすことなく駅の方へ向かって走り続けた。その目からは涙がちょちょ切れていた。下唇を強く噛み、拳を強く握り、強張った表情のまま街を駆け抜けて行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ