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一一月は黄玉(一七)
「私、坂下希依ですッ!」
ムキになって言ってしまった希依に対して、いろは堂の東海林夫妻はきょとんとしてしまった。
「坂下先生、また、来週にしましょう。」
降谷は希依の肩を抱いて、落ち着かせようとした。希依はそれに従うようにと、降谷の方を向こうとしたそこへ里見がやって来た。里見はいかにも帰宅するところだったといった体で、自らのバッグと、降谷のものと思われる男性用の小さめのバッグを抱えていた。
「ネックレスは?」
またなにを言い出すんだと、そこにいた全員が呆気に取られたが、構わず続けた。
「榊田さん、ちょっと変わった色のネックレスをしていたでしょう?オレンジのような、ピンクのような。」