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一一月は黄玉(六)
「ああ、用務員の降谷さんですか?」
「そう。ないわよね?」
希依は呆れて答える気にもならなかった。里見は躊躇しながら、上目遣いでこれでも気を遣っているという様子を希依に見せつけながらも言った。
「降谷さんとなら、いいのよ。」
「してません!」
思わず大きな声が出てしまい、ビックリしたのは里見よりも希依自身だった。
「すみません。荒げた声を出してしまったりして。でも、降谷さんとも、保護者や生徒、誰かと個人的に校外で会うなんてことはしていません。」
里見は真偽のほどを確かめるように、希依の顔をしばらく眺めてからやっとこう言った。
「信じたいのよ、私も。あなたのこと。」
「信じてもらえないんですか?」
「見た人がね、あなたが誰それとどこそこでであんなことをしてたとかっていう人が複数いるんだけどね、」
里見はやけに野暮ったい言い方をモゾモゾと続けた。それを希依は我慢強く最後まで聞いてやっていた。
「ほら、あなたが良くしてるじゃない?ピンクがかったオレンジ色の宝石のネックレス。あれ、ちょっと珍しい色じゃない?それをしてたから間違いなくあなただって…」