私の夢はここから始まった
新緑が眩しい4月。
私は真新しい制服を身にまとい、期待に胸を膨らませながら知らない世界へのトビラを開いた。
県立旗山高校。
今日からここが私のフィールド!ここが私の夢を叶える場!
だけど・・・決まっていないことが一つだけ・・・。
どの部活に入る?
小学校の時に入っていたクラブは「卓球クラブ」、中学生の時には「卓球部」、当然卓球部に入るものと思っていた。
県立旗山高校卓球部は県内でも屈指の強豪校。
中学ではレギュラーになれなかった私。
そんなところに入ったらずっと球拾いで終わってしまう未来が見える。
キラキラな高校生活を送ろうと思っていたのに、それはあまりにもイヤだ。
高校のクラスにも生活にも慣れてきた4月中旬。
「里実~(これは私の名前)、もう部活決めた?」と中学からの同級生・神崎美波が声をかけてきた。
「まだ決めてないよー・・・、いろいろな部活を見たんだけど、何がいいかよくわからなくなっちゃって」
「美波はもう決めたの?」
「まだ」と美波。
「一緒じゃん」
「でも気になってるところはあるんだよね」
「え?なになに?」
「弓道部」
「キュードーブ???なにそれ?」
聞いたこともなかった私は怪訝な顔で美波を見る。
「聞いたことない?弓と矢を持って的に当てるやつ」
「あー、あれって弓道っていうの?」
「はぁー・・・中学から思ってたことだけどさ、里実って何も知らないよねえ」
なんて失礼な。
「とりあえず見に行ってみない?弓道部」
「りょうかーい」と気のない返事をしてみる。
「じゃ、放課後ね!昇降口の前で」
クラスを出ていく美波の背を見送りながら5時限目の支度を始める私。
とりあえず騙されたと思って美波についていけばいいか。
見学はタダだし。
そんなことを考えていたら6限の授業も終わり、すっかり放課後になっていた。
昇降口で美波がイライラしながら待っていた。
「遅い!何やってんのよ」
「ごめんごめん、掃除してクラスでしゃべってたら美波との約束を思い出して・・・てへ」
「てへ、じゃないわ!さ、行きましょ!」美波は笑いながら応える。
「弓道部ってどこでやっているの?」
「体育館の奥」
「あんなところに何かあったっけ?」
「弓道場があるのよ」
「知らなかったなあ、あんなところ普段行かないもん」
「私に付いてきなさい」とよくわからない自信に満ちた美波のあとをついていった。