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【第一章完】からくり始末記~零号と拾参号からの聞書~  作者: 阿弥陀乃トンマージ
第一章

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第9話(2)抜けた先

「で、出られた……」

 技師が馬の上でぐったりとする。

「すっかり朝になっていますね……」

 楽土が目を細めながら呟く。

「ふむ……」

 藤花は周辺を見渡す。

「ここがどこかお分かりに?」

 楽土が尋ねる。

「……」

「え?」

「………」

「い、いや……」

「…………」

「ちょ、ちょっと……」

 無言が続く藤花に楽土が不安になる。

「……………」

「な、なにかお答え下さい!」

「……あ」

「そういうことではなくて!」

「冗談です……」

「はあ……ここはどこなのですか?」

「……分かりません」

「はあっ⁉」

「な、なんだって⁉」

 藤花の言葉に楽土と技師が驚く。

「……な~んちゃって」

 やや間を空けて、藤花は両の手のひらを楽土たちに向けて左右に傾かせる。

「な、なんだ……」

「冗談かい……」

「外に出られたのだから、そんなに慌てることでもないでしょう」

「そ、そうは言ってもですね……」

「出た場所によるだろう」

「出た場所?」

 楽土と技師に対し、藤花が首を傾げる。

「ああ、白石から南とかに抜けちまったら、またやり直しみたいなもんだ」

 技師が頭を軽く抑える。

「あ~……」

「あ~ってなんだよ、まさか……」

「いや、さすがに……」

 技師と楽土が半信半疑の目を藤花に向ける。

「……西と言ったら?」

「白石から西なら下手すりゃ山形だろう? 国境を超えちまっているじゃないか」

「……東と言ったら?」

「それはないな、白石から東に一日歩いたら、今頃は海の中だ」

 藤花の問いに技師が答える。

「……ふむ、案外地理に強い女の方ですね……」

「悪いかよ」

「悪くはないですが、ちょっとつまらないです」

「つまらないとはなんだよ」

 技師が藤花を睨みつける。

「ぎ、技師さん、落ち着いてください……」

 楽土が止めに入る。

「こっちは一日歩かされて、へとへとなんだよ」

「歩いたのはお馬さんですけどね」

「それは分かっているよ!」

 藤花に対し、技師が声を上げる。楽土がため息交じりに問う。

「はあ……藤花さん、そろそろお答えを……」

「……ここは仙台の北にある根白石という土地です」

「根白石?」

 技師が首を傾げる。

「鎌倉殿が東征の折りに見つけた根元の白い大きな石にちなんで、この地を根白石村と呼ばせるようになったという伝承が残っています」

「物知りだね~」

 技師が素直に感心する。

「そういう言い伝えなどを集めるのが好きなのです」

 藤花が自らの側頭部を指でとんとんと叩く。

「しかし、鎌倉殿ゆかりの土地とは……」

 楽土が感嘆とする。

「楽土さん……」

 技師が小声で楽土に話しかける。

「な、なんですか?」

 楽土が耳をすます。

「言い伝えを集めるのが好きだとかなんとか言いながら、実際はその東征の場に居合わせていたりしてな?」

「ま、まさか、四百年も前の話ですよ?」

「まあ、それは冗談だけどさ……」

 技師は笑いながら、藤花に視線を戻す。

「………………」

 藤花が黙って技師を見つめている。

「ひっ⁉」

 技師がのけ反り、馬から落ちそうになる。

「あ、危ない!」

 楽土が技師の体を支える。

「ふっ……」

 藤花が笑みを浮かべる。

「な、なんだよ……?」

 体勢を立て直した技師が恐る恐る尋ねる。

「なんでもありません。とりあえず腹ごしらえをしましょう。お馬さんも休ませたいですし」

 藤花が馬を進める。

「お、おう……」

 技師と楽土が続く。

「そういえばあの方も落馬の傷がもとでしたね……」

 藤花が遠い目をしながら小声で呟く。

「ええ?」

「いいえ、なんでもありません……」

 技師に対し、藤花が首を静かに左右に振る。三名は団子屋に入る。技師が藤花に問う。

「それで……これからどうするのですか? 南下するのか?」

「素直に南へ下っても、白石での騒ぎがもう知れ渡ってしまっていることでしょう。陸路で仙台の城下町に入るのは難しいですね……」

「海か?」

「ここからは遠いです」

「ってことは……」

 技師が指差した方を見て、藤花が頷く。

「そう、山伝えで仙台に向かいます」

「山からか……ん?」

「オオウ……」

「な、南蛮人⁉」

 道端に倒れ込む南蛮人を見て、技師が驚く。

お読み頂いてありがとうございます。

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