表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

6. 二人なら

お読みいただきありがとうございます。

こちらはシステム上連載ですが、全体で12000字ほどの短めのお話ですです。ご興味あられましたら是非とも1話からお読みください。


それではどうぞ。





 言えることは言い切り、リクィアは壊れた肺を最低限生命活動が維持できる程度に直す。


 ドラゴンももう悠長に待ってくれない。もしドラゴンがここまで来たならば、リクィアは間違いなく死に至る。


 しかし、リクィアは決して恐れることはなかった。


 なぜなら、リクィアは信じていたから。


「っていっても、あいつけっこうおっちょこちょいだから、間に合うのかな」


 リクィアは知っていた。

 超人じみた聴覚をもつ彼女なら、きっと演説の始めからすべて聞いていたであろうことを。


 そして何よりリクィアは信じていた。


 リクィアが信じる、ただひとり、正真正銘の勇者を。


 ドラゴンは容赦なく迫りくる。更地になった大地をマッハにも近いスピードで。

 差はみるみる小さくなる。近づいて近づいて。



 そうして、目の前に来た。これでおしま――


「間に合った!」


 一人の少女の声が聞こえ、その瞬間にドラゴンが先ほどのスピードを保ったまま逆方向に吹き飛んだ。


 そこにいたのはありふれた小さな女の子で、別の言い方をするならば、疑いようもなくただひとりの勇者ラステリカであった。


「やっぱり来てくれたんだな」

「当たり前だよ。リーリが私を必要としてくれたから」

「……ところでその右手に持っているもの何?」

「ああこれ? ケバブ屋さんにあったお肉がくるくる回ってるやつの棒」

「棒しかないってことは……食ったのか?」

「さすがの私もお肉を食べないとドラゴンは倒せないからね」

「どっからつっこんでいいのやら」


 数えきれないほどのツッコミが思い浮かぶ。でも、結論としてききたいのは一つだけ。


「体は大丈夫?」

「うん、大丈夫!」

「それは良かった」


 ならまあ、なんでもいいだろう。言いたいことは明日にでもたくさん言えばいい。


「来てくれてありがとう。信じてた」

「私こそ、信じてくれてありがとう」


 これまでも、これからも。俺達にはたくさん辛いことはあるだろう。


 でも大丈夫だ。この二人でなら、きっと困難も打ち破れる。


「それで、作戦はどうするの?」

「まあ、やっぱり最強技で行くしかないだろ。ってなわけでちょっと魔力くれ」

「はい、ン」

「ン、ありがと。じゃあまあいっちょ行きますか。準備運動も終わったことだしな」


 ラステリカが背伸びしてリクィアに魔力を受け渡す。体を癒し、そして二人は走り出す。


 最強技とは、ラステリカの身体能力とリクィアの物体操作と、そして地球の重力を使った、とてもシンプルなものだ。

 しかし、どんな固い生物もこれでぶち壊してきたし、今回だってできるはずだ。


「私の剣もいっしょに空に投げてくれるんだよね!」

「任せろ! 物体操作が俺の専売特許だからな!」


 彼女が唯一できない魔法、物体操作をリクィアは自在に操れる。

 そして、これができなければそもそもこの技は成立しない。


 遠くにいるドラゴンがついに体制を立て戻す。近づけば近づくほど、当たり前だがその巨体は大きく見える。


「やっぱり怖いね。一人ならちびっちゃいそう」

「年頃の女の子がそういうこと言うな。でもおれも怖いな。一人なら漏らしてた」

「良い大人がそれをいうのもどうかと思うよ」


 そんな時にお互いに軽口をいいあえる人間がいるのなら。


「でも大丈夫。不思議と今は怖くない」

「そうだね、全然怖くない」


 それは紛れもなく――


「「二人なら」」


 最強で最高の二人に違いない。


 ラステリカが空に舞った。ドラゴンの上まで美しく、優雅に、そしてたくましく。


 思わずドラゴンが上を向いた瞬間、俺は勇者の剣をドラゴンの顎にぶつけ、ドラゴンの体制を崩す。

 油断は大敵の体勢だって崩せるんだぜ。


『天は空に、地面は下に』

『その真実は今逆転する』 


 空にあるのは勇者の剣。そして彼女が蹴ってもびくともしない、地面に向けられし一つの足場。


 

 手に持った瞬間、その剣は朱く燃えさかり。


 

 空と地を逆転させ、天を駆け地を裂く最強技。


 

 重力の方向に向かって、隕石の如く突き刺され!!



天空落とし(スターブレイク)!!!』



 町が揺れた。



 想像を絶する衝撃波があたり一面を吹き飛ばす。

 

 何もかもが崩れ、はじけ飛び、無に帰した。


 そこに残るものは――



「おーい!」



 ひとりの勇者と――



「どうだ?」



 それに仕えた一人の魔法使いと――





「ニシシ、ばっちりー」


 そして勝利を示す、黒く焦げたドラゴンだった。

お読みいただきありがとうございます。


もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」をクリックして応援していただけると嬉しいです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ