4. 圧倒的な差を前に
お読みいただきありがとうございます。
こちらはシステム上連載ですが、全体で12000字ほどの短めのお話ですです。ご興味あられましたら是非とも1話からお読みください。
それではどうぞ。
戦いは一方的だった。
得意な物体操作魔法を駆使したところでドラゴンに傷一つつけることはできなかった。
一方で、ドラゴンの攻撃は一つ一つが致命傷だ。鉤爪は建築物を倒壊させ、炎はすべてを焼き尽くし、町もろともリクィアへ攻撃を繰り返す。
「でもここまでは予想通り。行動も読める」
ただし、リクィアはかつて伝説の勇者のパーティで参謀をしていただけの男だ。逃げながらも入念に準備は進めていた。
「こっちにこいよバーカ」
挑発することでドラゴンの移動を制御する。右、左ときて、上から下へ。
「くらえ!」
そのタイミングで、ドラゴンのあごに対して、下から上へ瓦礫をぶつけた。
火力が足りない? ならばまず量で補えばいい。
だから、ここに瓦礫を集めていたのだ。
そして、ここからは質を高める。具体的には、質の高い相手の攻撃を逆に利用したのだ。
ドラゴンはついに体制を大きく崩す。今なら攻撃できそうだ。
「今だ!」
そう言ってから、リクィアは隙が大きいものの火力のある技を放出する。
少し砂埃が舞った。
そして、砂埃が風で飛ばされて、そこに現れたのは。
かすり傷程度にしか傷ついていないドラゴンだった。
リクィアにとって最大火力の大技だけにショックを隠せなかった。
その瞬間を狙ってドラゴンが迫りくる。思わぬ不意打ちに対応できずにまともに食らってしまい、吹き飛ばされた体はいくつもの家の壁を貫通した。
「くっ」
魔法で体を守っていなければ致命傷どころか肉片ひとつ残らない攻撃をなんとか生きたまま耐えきることに成功する。しかし、このあたりで限界らしい。
もう体が動きそうにもないのだ。節々の骨は折れてるし、回復しようにも魔力が足りない。
やっぱり足りないなぁ。リクィアはため息を漏らす。
奇策をもってしても、最大火力を放っても、やっぱり足りない。
体力が足りず、防御力も回復力も足りない。
動きを察知する五感も六感も足りない。
ドラゴンに致命傷を与えるほどの力が足りない。
そのすべてが俺には足りなかった。だってそれは、彼女が持っていたものだから。
そう、はじめから分かっていた。頼らない方法を考えたが、そんな世の中は甘くはなく、そして俺はそんな強くない。
やっぱり、俺じゃ勝てない。
俺だけじゃ勝てないから。
本当に足りないのは。一人の勇者。それも、偽物ではなく本物が。
最後に残った気力で息を吸う。突き飛ばされたおかげでドラゴンとは距離ができたので、余裕をもって息を吸い続ける。
肺が割れそう、というか、すでに割れている気がするが、そんなこともお構いなしに息を吸って。
俺は大声で叫ぶ。
「なあ、ラステリカ!! 聞いてるだろ!!!」
たのむ。 ラステリカ。お前が必要だ。
多分最後まで本日中に投稿するかと。