表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

1. その勇者は今日も閉じこもる

御覧いただきありがとうございます。


なお、この作品は『相棒(バディ)とつむぐ物語』コンテスト応募作品です。

連載作品ですが、今日と明日(5月6日or7日)含め、10000字とちょっとで完結しますので気軽にお読みください。


それではどうぞ。

「私には仲間がいた。だからこそ戦ってこれた」


 男は腕を大きくふるう。その姿は正真正銘の勇者にふさわしいものだ。そこに観客がいたならば、この瞬間に歓喜の声があがっていただろうか。


「魔王軍は私たちの力によって……ええっと、力を落とし? これでしばらく街に平和が……なんだっけ?」

「私の力によってその勢力をおとした。だから私の力で町に平和が戻るだろう、だよ」

「あぁ、そうだった、すまん」


 もちろん、今は観客などいない。買ってきたじゃがいもと、やつれた一人の少女の前で、男は演説の練習にはげんでいた。


「てかこれいうの、やっぱりちょっと恥ずかしいなあ」

「あたりまえでしょ。だってあなたは勇者なんだから」


 かつてこの世界は魔王軍に蹂躙されていた。しかし突出した力を持つ勇者達によって魔王は破れ、魔王軍はその勢力を大幅に失ったのだ。


 今日はその日からおよそ五年が経った記念日。お祭りが開かれて、彼はそこで演説をする練習をしていたことになる。


「いや俺は……まぁそうなんだけどな。体制的(・・・)には」

「みんなもあなたが勇者だと思ってる」

「町の奴らはまぁそうなんだけどな」


 勇者は人間離れした身体能力を持っていた。勇者は神獣に匹敵する魔力を持っていた。


「でも、俺なんてちょっと人より魔法が得意なだけだ。俺がいくら頑張ったところで――」


 そして、その勇者は――


本物の勇者(おまえ)には勝てる気がしない」


 一人の女の子だった。


「そんなことないよ。だって私はもう戦えないから」


 あの日から今日にいたるまで、勇者(かのじょ)は家に籠っている。

次話投稿は2時間後くらいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ