壊れた者
無謀であるが、彼にはもう何もなかった。
ゼロは龍に近づき、双剣を振るう。だが、鱗には傷一つ付かず、龍は前脚を振るい、地面に叩きつけようとする。ゼロはそれを回避するが風圧で吹き飛び、叩きつけられた前脚によって地面が陥没する。
「ははっ、化け物かよ」
ゼロはそう言うと、龍は口から光を放った。ゼロはそれをギリギリで回避したが、触れていないはずの装備がドロドロに溶けた。
「光属性のブレスか…」
そう呟きながら躱しつつ、龍の全身を攻撃する。だが、龍にはダメージは入らない。やがて、龍は咆哮を上げてゼロの動きを阻害すると、尻尾が神速とも言うべきスピードで振られ、直撃する。それによって瀕死のダメージを喰らい、地面に激しく打ち付けられながら転がり、巨大な岩に激突した。
「ガハッ…!」
それにより、身体中の骨が罅が入り肋骨や右足が折れ、血反吐を吐く。だが、彼は再び立ち上がった。頭から血を流し、朦朧としながら。
(これは死ぬな…なら、足掻いてやる)
ゼロはそう思いながら、あの龍に突撃する。
「身体強化…」
自身が使える唯一の魔法を全身に、尚且つ全力で自分に使う。そして、足の骨を代償に龍の攻撃を避け、天高く舞い上がると龍の背中に双剣を刺した。そこだけは、そこまで固くなかったのだろうか、龍の血を浴びながら深々と突き刺そうとさらに力を込めた瞬間、双剣が折れる。
(まぁ、折れるよな)
ゼロはそう思いながら、龍の背中から振り落とされ地面に激突する。
そして、龍がこちらを見て近づいてくる。
(…終わりだな…あぁ、なんかもう…ど…う…も…い…)
ゼロはそう思いながら、目を閉じた。
「…貴様は見殺しにはせん」
そんな声を、最後に聞きながら。
次回 龍神から語られた真実