長野県の迷信(フィクションであることにご承知下さい)
Day.1
長野県某所、大津旅籠屋。ここに宿泊している15人に、人狼が紛れ込んでいるとの情報が入り、宿泊者は全員ロビーに集まった。遅れて警察も来たが、支配人が追い出した。なぜなら血文字で、
「人狼のことを警察などの第三者に密告した場合、お前らの命はない。覚悟しておけ。」
と書かれていたからであって、全員が青ざめた。
「この村って、人狼が出るなんてないよね。」
秩父から来た小芝と那賀の二人組は、早くも帰る気満々のようだ。
「もしかしたらだけど、三国峠の長野県側に、|《人狼注意》なんて物騒な看板があった気がする・・。」
そう、この村は、100年に一度、村を荒らす人狼が出るとか出ないとかの迷信があるらしく、県境には、|《この長野県に立ち入るものは、人狼に殺されることありけり》とか、先の|《人狼注意》とか、迷信とは程遠く、長野県民はその迷信を信じている(らしい。)ので、こんな針小棒大な看板が県境の道路に建てられており、長野県警が検問を設置し、意思を確認しているので、ここにいる者はかなりタフな面子ばかりだ。でも、あんな血文字で書かれてもらった、ということはだ。まじで人狼が出たらしい。まあそうだろうが。とりわけこの川上村では全旅館に人狼の注意点が貼られているのだ。
「だとしたら、このままでは俺たちは全員血祭りに揚げられるということ?」
神奈川県からのハイキング客、能登原が怪訝そうに隣の神海を見つめた。
「だけど、僕たちは怪しい人が誰かを見極め、処刑することができるから、怪しかったら即吊っていくよ。」どうやら神海は地元の人らしく、人狼が出るかを知っていたかのように、落ち着き払っている。
「もう誰がどの役職かは、支配人が、『部屋の紙切れにあるらしいので、確認しろボケカス。』だとさ。」
神海が話した途端、大原がすかさず反応した。
「なんなんだコイツ。ゲームを運営している張本人が、俺たちにボケカスだとよ。まじでクズでござんす。」
「ったく、相変わらずお前はうるへーな。」
大原の同僚、三峰がメントスを噛みながら大原の頭を叩いた。
「こんな楽しい話も今日で終わりだ。明日から誰も信じないからな。」
先程とは打って変わり、神海の表情が真剣になり、闘争心がむき出しになった。
そして全員が部屋に戻ったところで日がしずみ、伝説のゲームが始まった。