兄弟喧嘩 14
とりあえずまだ横になっていた方が良いということで、レオにグイグイとベッドに押し倒しされてしばらく、部屋にゆぅちゃんとノブユキ、そして親父達が入ってきた。
よし、ここは先に勝負のやり直しを要求しよう。
俺が自室で目覚めているということは、親父達には俺が倒れた原因が半妖の仕業であることを知っている証拠。
「途中で邪魔が入った。さっきの試合は無効だ」
親父に向かって、こんな試合は認められないと主張し、続けて再選予定日などの提案をしようとした所で片手をあげて待ったと合図を出された。
なんだ?
「まずは上を見なさい」
言われて見上げると天井付近にあの半妖がプカプカと浮いていた。
その顔を確認してみると、記憶の中にある幽霊さんで間違いないようだ。
しかし睡眠の術を放ったことで随分と消耗してしまったのか、俺ですら少し見え難いほど薄れている。
「お邪魔、でしたか?モリヤ様」
あ、いや……そう面と向かって言われると返答に困るよ。
「えっと、そうじゃなくて……試合中だったから。今日以外にも何度か助けてくれたよね?改めてお礼を言わせて」
半妖が見えていないゆぅちゃんやレオ、ノブユキは俺が天井に向かってボツボツ喋る光景は酷く奇妙に感じているんだろうけど、黙ったまま天井を見上げている。
本当に見えてないんだなと思ったのは、全員が明後日の方向を見ているからだ。
半妖なのだからゆぅちゃんには見えてないと駄目だというのに……薄くなっているせいか?
「お役に立てたようで嬉しいです。しかし言わせていただきますと、3対1ではなく4体1だったとお考え下さいませんか?ユウイチ様からは了承いただきました」
許可を出したという親父の方を見ると、腕を組んだまま不動。
何故だ?
だって俺はゆぅちゃんの従者になるためだけに存在している筈で、親父も母もそれしか俺に望んでこなかったじゃないか。
それなのに……。
「……後ろを見なさい」
声を掛けられ、そこにいるであろう俺と同意見である筈の母の顔を確認しようとしたのに、俺の視界には白い部屋の壁しか映らなかった。
「え?」
恐ろしい形相でそこにいる筈の母の顔が、振り返れば必ず視界に入る筈のあの母の顔が、どこにもない。
「約束通り、呪いは解いた」
え……いや、だから……どうして?
「だって俺は……」
詳しく説明しようとして、ここにレオとノブユキがいることを思い出した。
「小宮家には代々従者となるモノがいる……モリヤには祓いの仕事を続けて欲しい」
あぁ……。
岩戸の中にいるのは妖怪に違いなく、ゆぅちゃんに会いたがっていたから、あの気配の持ち主が小宮家の従者なんだってのは分かってた。
結局のところ、ゆぅちゃんの従者として働く未来から、親父の元で働く未来に変わっただけのこと。
どうせ仕えるのなら、封印されない未来の方が良いに決まってる。
「分かった。俺の負けだよ」
負けを認めて呪いが説かれたことを受け入れると、ゆぅちゃんやレオとノブユキだけじゃなく、何故か1度もまともに会話を交わしたこともない実の父親までもが嬉しそうに笑っていた。
うんうん。
なんだこれ。




