兄弟喧嘩 12
3対1だと宣言した通り、レオとノブユキはゆぅちゃんの前に立ち、防御姿勢もまともにとらずに攻撃する先々に飛び込んでくるものだから、俺は力を込めた攻撃が打てなくなっていた。
隙を見て後ろに回り込んだというのに、それでも捨て身で立ち塞がるものだから、少なくとも2人に2発づつくらいは攻撃をしてしまっている。
「こんなの無効だ!可笑しい!」
そう親父に抗議をしてみたところ、ルール違反ではないと突っぱねられてしまった。
そんな間にもゆぅちゃんからの攻撃は続いているんだけど、俺からの攻撃にだけ集中しているレオとノブユキは背後にいるユゥちゃんからの攻撃は見えてはいないらしく、何度も竹刀がヘルメットに当たっている。
このままじゃあ、ゆぅちゃんの全力竹刀攻撃を受けてしまいかねない。
じりじりと後退っていくと、かかとが岩戸に触れた、
この中には恐らく小宮家のご先祖に仕えていただろう正真正銘の妖怪の従者が封印されていて、ゆぅちゃんの力が開花することを心待ちにしていた。
従者にされる俺と、既に従者としてご先祖を守った妖怪とではどちらがより強いだろう?
そもそも、妖怪を相手に戦う者の従者が妖怪を見ることができない元人間ってどうなんだろう?
死んで従者になった後、絶対に妖怪が見えるようになっているという保証もない。
なら、岩戸内にいる妖怪を迎え入れた方が良いんじゃないか……。
いや、俺が死ぬことは悪霊にまでなってまで俺を呪い続けている母親の願い。
ガンッ!
「うわっ!いっ……」
少し考え込んでいると、大きく竹刀を振り回したゆぅちゃんの攻撃を避けきれなかったノブユキが安全第一のヘルメットを吹き飛ばす勢いで攻撃を受けてしまっていた。
それでもお構いなく繰り出された第2打目は、先程と同じ軌道を辿り、ノブユキの……ヘルメットが飛ばされて防御する物がなくなった頭部に向けて吸い寄せられていて……。
「ノブユキッ!」
思わず、防御態勢なんて考えず、ただただノブユキの頭部を守りに走った。
ガッ!
そして米神辺りに突き刺さるような痛み。
「モ、モリヤ!?大丈夫か!?血、血が出てる!」
眼下にいるノブユキは実に元気そうだ。
「これくらい大丈夫。それより2人は大丈夫なのか?」
そう尋ねて2人の体を確認しようとして再びの衝撃。
今度は背中に竹刀が当たったようだ。
「いや、痛い。思いっきり腹パン喰らったの初めてなんだけど」
それは……。
でもさ、まさか飛び出してくるなんて思わなかったから……。
「……ゴメン」
「ん、許すから”まいった”って声に出して言ってみ」
それとこれとは別だろ。
「じゃあ気絶という名の睡眠時間でも取る?」
急に寝ようかってテンションにはならないからね!?
「その手がありましたね」
レオの提案に賛同するかのような声が頭上から聞こえて、見上げてみれば1体の霊体が浮かんでいて、今まさになにかしらの術を発動させようという動きを見せた。
しかし、霊体が術を使えるなんて聞いたことがない。
もし俺に対して有効な術が使えるのだとしたら、それはもう霊体ではなく妖怪に近い存在に違いないんだけど、それだとこうしてしっかりと見えていることが可笑しくて……中間のような存在?
そういえば半妖は見ることができたんだ……っけ……。
「ん……」
あれ?
足元が……安定しない……。




