兄弟喧嘩 10
謎の小学生、守下アラタと別れて帰宅し、夕飯の支度を始めながら親父達がいるのかを探るために耳を澄ませてみる。
しかし聞こえてくるのはダイニングでワイワイと喋っているレオとノブユキの声と、時々返事を求められて短く「はい」と答えるゆぅちゃんの声しか聞こえない。
何故ここにいるのかと問えば、大事な用事があるのだとしか答えないし、夕飯の支度があるからといえば終わるまで待っていると。
不思議なのは、この場に人見知りである筈のゆぅちゃんもいることで……そして若干レオとノブユキの機嫌が悪いこと。
俺、なにかしたっけ?
いや、学校を出るまで2人は機嫌よかったし、なんなら2人でなにかやることがあるからって笑顔で別れたよな?
まぁ、後で話しがあるようだからさっさと夕飯を作ってしまおう。
とは言え、最悪ご飯だけ炊いておけば後は冷蔵庫の中には納豆ともずく、めかぶ、ゆで卵、漬物、梅干しは常備用意しているからどうにでもなりそうなんだけどね。
簡単に野菜炒めを作って大皿に盛った後ラップをかけ、レオとノブユキに向き合えば、そこには相変わらずゆぅちゃんもいて、緊張したように姿勢を正していた。
「待たせたね。それで用事って?」
個人的には用事よりも先に機嫌が悪い理由を知りたいところではあるんだけど。
「弟クンと勝負するって話、ブラコンのモリヤらしくないから弟クンに直接話を聞いたんだ」
レオよりも若干落ち着いているノブユキが、それでも人相悪く睨んでくると、勢いよく立ち上がったレオがズカズカと目の前まで歩いてきた。
しかしだ……一体どこからどこまでの事情を聞いたんだろう?
あぁ、ブラコンって所は修正させてほしい。
「えっと……どう聞いた?」
「お前が勝ったら弟クンの従者になるって聞いた。呪いで縛られて一生こき使われるんだよな?それなのになんで勝とうとしてんだよ!」
なるほど、そういう感じで聞いたのか。
そりゃ流石に「死んだ後従者にする」なんて説明は難しいよね。
「俺は勝つし、その呪いってのは既にかかってる状態だし……子供の頃からゆぅちゃんを守れって教育受けてたから、今更それ以外の未来を描けと言われても困る」
それにだ、過保護に育てられているゆぅちゃんとの勝負だ、思い切り手加減をしたとしても負ける方が難しい
「はぁ!?それ以外の生き方が分からないからって一生こき使われる方が良いってのか!?」
落ち着いて。
「高校卒業したら家業を継げって言われてるとするよ?で、幼稚園よりも前、まだ二足歩行する前から家業を継ぐためだけの教育を受けてたとしてさ」
実際家業を継ぐのはゆぅちゃんの方になるんだけど、俺にとっては小宮家に仕えることが家業のうちに入るわけだから……家業を継ぐって例えで間違いはないのか。
「二足……歩行……」
二足歩行って言い方が、間違ってただけで……。
「フフッ……それで、四足歩行の英才教育をね……フフッ」
「四足……フハハ」
「ちょっ……モリヤ、笑かしに来てるだろ!四足歩行の英才教育ってなんだよ!」
大笑いを始めたレオとノブユキの隣では、ゆぅちゃんが2人に釣られて笑う俺を真顔で眺めていた。
一通りの笑いが治まり、レオとノブユキはもう1度始めから説明をした。
俺がゆぅちゃんに一生こき使われることになる、そういう呪いを受けていることに納得できない、ゆぅちゃんが高校卒業するまでに本気の勝負をして、その勝敗で未来が決まること。
そして最後に、
「モリヤには悪いんだけど、俺達2人は弟クンの応援するから」
とのこと。
「応援って……ダンスするとか?」
応援合戦みたいな感じで。
「キレッキレのボックスステップな」
「ふふ……」
真原色の衣装で?
「もー、スグに脱線するんだからさぁ」
笑い出しそうになる俺とレオにチョップを放ったノブユキは、呆れたように溜息を吐きつつも笑っている。




