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鬼がいる町  作者: SIN


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兄弟喧嘩 9

 体育大会は、ゆぅちゃんの赤組でも俺の青組でもなく、黄色組の優勝に終わった。

 2位は青組だったので、この体育大会の結果を後から”俺の勝ちだった”とゆぅちゃんに利用される心配はない。

 一旦教室に戻って担任からの激励を受け解散となった。

 ゾロゾロと廊下を歩く生徒達はそのまま下足室に向かって下校する者や、友人の教室に向かう者、記念撮影をし始める者などさまざまで、そんな中レオとノブユキは他に用事ができたとか言って廊下を走って行った。

 もう少し大会の余韻に浸りたい気分だったんだけど……まぁいいや。

 下校途中で夕飯の買い物をするためにスーパーに寄り、ふと実父のことを思い出した。

 親父達は揃ってゆぅちゃんを見るために学校に来ていたから、今はゆぅちゃんが帰宅するのを小宮家で待っている可能性がなくはない。

 お茶菓子を買うべきか?

 買わずに帰って気が利かないだのなんだのと言われるより、買って帰ったけど誰もいなかったという方がマシだな。

 買って帰ってもスーパーの安売りかーとか言われる可能性はあるけど……そこまで気を遣う必要はないよね?

 第一俺自身あの2人に尊重された試しがないんだし。

 それを思うと、なにも買わなくて良い気がしてきた。

「っ!」

 手に持っていた和菓子の詰め合わせを棚に戻そうと手を伸ばしたところで、隣にいた子供が何故だか大袈裟に身構えた。

 別に腕が当たりそうな至近距離というわけでもなかったのだが、不意に動く人物が怖かったとかだろうか?

「えっと、大丈夫?」

 しゃがみこんで視線を褪せて子供を見れば、なんとなく見覚えがある。

 何処で見たんだっけ?

「大丈夫です……あ……ゴメンなさい」

 この声、覚えてる。

 裏山で半妖の学校に繋がる階段を見つけた時、非常に激しい睡魔に襲われていた所で声をかけてきた小学生だ。

 そういえばその時、上空から恐ろしい気配がしたんだっけ。

 それにしても、こんな時間に小学生が1人でスーパーにいるのはどういう……しかもよく見れば服は汚れている。

 手を振り上げた人物に対する反応を見る限り、良い生活が送れているとは思えない。

 とはいえ、人の家庭に首を突っ込むのもなぁ……。

「……お兄さんね、友達にお菓子を買おうと思ってるんだけど良いのが分からなくてね。君が美味しいと思うお菓子を教えてくれないかな?」

 小学生は少しの間考え込んだ後プリンをオススメしてくれたので、一緒にプリンが陳列されている冷蔵コーナーに行ってみれば、結構な種類がある。

 するとさらに悩んだ末、至極のプリンを指差して教えてくれた。

「これ、凄く美味しいよ」

 ニコリを笑顔を向けてくれる小学生からは、敵意のない腕に対してすら怯えていた様子とは違い、小学生らしい無邪気さを感じられて、それと同時にまた薄く感じる上空からの気配。

 なんとなくだけど、上空にいるのはこの子を監視している何者かで間違いなさそうで、この子が笑顔になることに嫌悪感を抱いているという感じか?

 両親のどちらかの生霊にしては気配が強いし、祖父母というには存在が遠い気がする。

 なら、考えられる答えはそんなに多くはない。

 この子はゆぅちゃんと同じような能力者で、上空の気配はこの子を守る従者の妖怪ってことで解決する。

 おすすめされたプリンを5個買った後、小学生を連れてイートインスペースに向かって座り、テーブルにプリンを2つ置いた。

 別にプリンを1つ手渡して別れても良かったんだけど、両親から咎められる原因になっても嫌だから食べてから別れようと思って。

「良いの?」

 と遠慮がちな言葉とは裏腹に、目をキラキラと輝かせている小学生は、そこから「召し上がれ」を進めること2回と、率先してプリンを食べることでようやく食べてくれた。

 懸命に食べている小学生のランドセルには、”守下アラタ”と書かれた名札が付いていたけど、直接名乗られなかったので俺は最後まで名前を呼ばなかったし、俺も名前を聞かれなかったので名乗ることなく別れた。

 上空からは見張るような視線がずっとあったけど、それ以外には特になにもなく、恐ろしい気配が底頭に広がることもなく……俺が危険人物ではないと認識されたのだろう。

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