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鬼がいる町  作者: SIN


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兄弟喧嘩 2

 学校が終わって1件の依頼と買い物を済ませて帰宅して、洗濯カゴに入っている分の洗濯をして、お弁当箱と汚れた食器類を洗って、お風呂とトイレの掃除を済ませたら部屋の掃除。

 それが終わったら夕食の準備。

 今日のメニューは冷麺。

 大量の麺を茹で、大量の錦糸卵を作り、茹でささ身とトマトとブロッコリーを1個1個お皿ではなくボールの中に入れ、バイキング形式にして好きな具を好きなだけという風にしておくのが結構楽で良い。

 こっちはなにも考えずに大量に作れば良いだけなのだ。

 で、余った物を集めて食べれば残りも出ない。

 食器を片付けたら道場に行って、訓練と鍛錬と弟子の育成。

 こうして今日1日が終わろうとしている中、ゆぅちゃんとの接点がほぼないことに改めて気が付く。

 わざと時間をずらされてるって感じもあるけど、こんなに会わずに過ごせるものかな?

 まぁ良いよ。

 深夜に部屋に押しかければ済む話だから、夜にする分の依頼内容の確認して時間を調整しようかな。

 いくら深夜に部屋に押し掛けると言っても、熟睡しているような時間だと起こすのが可哀想だし、起きてくれない可能性もあるし、丑三つ時だと怖がらせるだけだしね。

 ピーンポーン

 夜の11時ちょっと過ぎ、シャワーで汗を流してノンビリしている所で誰かがやって来た。

 来客というには遅い時間だし、急な依頼だろうか?

「はいはーい」

 とか言いながら営業スマイルで出てみれば、そこに立っていたレオは微妙な表情を俺に向けてきていた。

「えぇー、そんな顔するぅ?」

 いや、それは丸っきり俺のセリフだ。

「こんな時間にどしたの?なにかあった?」

 なにかあるならメールなりなんなり連絡手段はあった筈だ。それを直接来るってことは?

「スマホ、電源切ってる?何回も連絡入れても返事ないし既読にもならんし」

 え?

 あ……。

「制服に入れっ放しで見てなかったわ。ゴメンゴメン」

「明日、ダンスの練習ん時に青シャツ持参ってさ」

 そういうことは、ホームルーム時に教えて欲しいし、今日のダンス練習が始まる前にでも次回の練習はーみたいな感じで言うものじゃないの?

 しかもシャツ持参ってなに?

 衣装は衣装担当が作るんじゃなかったっけ?

 しかも青!

「モリヤどうせ作務衣しか持ってないだろ?俺も青シャツかっこ無地かっこ閉じは持ってないし、今から買いに行くとこ。どうせなら一緒にどうかなーってさ」

 どうせってなんだよどうせって。

 俺だってタンクトップぐらいは持ってるし!肌着だけど。

 長袖のシャツだって持ってるさ!寝間着だけど。

「今からって、開いてる店あんの?」

 それにしても、青の無地って難易度高くない?

「2駅先に夜中2時までやってるディスカウントショップがあんだよ」

 そんな遅くまで開いてる店があったのか……2駅先……結構遠いな。

 用意するからと少し待ってもらい、どうせ作務衣しか持っていないのだと言われた手前制服を着て出て行くという訳にもいかず、1番草臥れていない作務衣を着て出てみれば親指を立てられた。

 ふっ。

 ディスカウントショップについてみれば、色んなシャツが売られていたが、種類が多過ぎて青というだけでもライトからダークまで。

「……どの色味?」

 青で無地ならなんだって良いのなら1番安いものでも……全部値段は同じか。

「こっからこっちは水色だし、こっちの方は群青色だから、こっからこの辺?」

 確かに青色のシャツと言われれば原色に近い色味の方が良いんだろうけど、せっかく買うのだから着回しとかも視野に入れて考えたい……2千円近くも費やすのだから体育祭が終わったら使わなくなるのはもったいない。

 まぁ、そうなれば部屋着として使えば良いんだろうけど、鮮やかな青色……んー……だからって黒に近い濃い色味を選んで「違う」と言われた場合は買い直しという無駄行為になるのではないか。

「赤組と黄組と見分けるためなら、青っぽいってだけでも良いとは思うけど……」

「この際、2人で真っ青買おっか。真原色」

 なにそれ!?

「真原色っ……アハハ」

 良いよ、2人で真っ青買おう。

 それで当日沢山画像も映像も残そう。

 2人して真っ青のTシャツを買ってお店の前で別れた後、そのまま依頼に向かわずに一旦家に帰ることにした。

 理由は、折角買ったTシャツをなくさないため。

 依頼内容はそう大して難しいものではないけど、簡単だと決めつけてゆぅちゃんを巻き込んでしまった過去があるから、どんな些細な依頼でもナメないことにしたんだ。

 実際に厄介だった依頼はあれ以降1件もないんだけどさ。

 なければないでそれは良いことだしね。

 後は依頼でボロボロになっても良い作務衣に着替えるため、かな。

 今度洋服でも買いに行ってみようかな?

 そうだよね……高校を卒業したら困った時には制服で行くって必殺技が使えなくなるんだっけ。

 なら洋服ではなくスーツの方が良いのだろうか?

 冠婚葬祭で着回せるように黒が良いかな……無難にグレー?チャコールかなぁ?まぁ、真原色の青ではない。

「フフッ……」

 イカンイカン、依頼前なんだから気を引き締めないと!

 パンッと手を合わせて深呼吸を2回したところで、窓の外でなにかが動いたように見えた。

 小宮家の敷地には悪霊などが入って来られないように結界が張られているから、なにかがいるとしたら塀の向こう側になる。

 窓を開けて身を乗り出すようにして外を確認してみるが、特になにも見えないし、なにも感じられない。

 なにかが動いたように見えたのは気のせいか?

 いや、気のせいじゃなければ恐ろしいか……得体の知れないなにかに見られていたってことになってしまうんだから。

 もしかして、結界の中から出て来いってこと?

 だったら、出て行かないわけにはいかないな……どんな用事なのか知らないし、本当に俺を呼んでいるのかも分からないけど、考えられる可能性はつぶさないと。

 急いで玄関に向かい、門から1歩外に出てみる。

 「ギャッ!」

 1歩外に出た瞬間、思いもよらない方向から短い悲鳴がした。

 声のした斜め後ろに顔を向ければ、そこにはいつものように恐ろしい形相をした母がいるだけで他にはなにもない。

 それにしても、こんな鬼のような形相って久しぶりじゃないか?

 ここ最近は表情が穏やかになってきていたというのに……。

 いや、母は俺をゆぅちゃんの従者にするためだけに現世に留まっている執念の魂だ。

 俺の力が1番強くなった瞬間に殺しに来る魄で……それで最近穏やかだったのは俺の能力がそろそろ頭打ちになりそうだったから。

 それが今はまたこの形相ってことは、俺の伸びしろが急にできた?

 それとも、今の瞬間俺は殺されそうになったけど、なんらかの防御反応ではじき返した?

 もしくは、誰かが弾いてくれた?

 さっき見えたあの影……だとしたらあれは……いや、俺は終始何も感じられなかったんだから、もし何者かがいて助けてくれたのだとしたら、それは幽霊ではなく妖怪だ。

 助けてくれるような妖怪に、心当たりはないけども……。

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