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鬼がいる町  作者: SIN


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生命力の維持 10

 足取り軽く帰宅すると、自室に戻るよりも早くに呼び止められ、報告を求められた。

 親父の前に座り、林野から写真を借りた所からの説明をする。

 映像を見せた後、2人は祠がどうやって壊れたのかを完全に理解してくれて、軽い謝罪を述べた後そそくさと帰ってしまった。

 別に追いかけて捕まえて連れて来る事ことは出来たんだけど……必要だったら家まで行って連れてくればいい訳だし良いかなーと思って。

 「証拠となる映像を見せてきたら納得してくれたよ」

 必要なら今ここで親父に見せることも出来るよ。

 イメージ映像を記録してきたからね、この石っころに。

 ほら、よく言うでしょ?石も記憶するって。

 あれ?言わないっけ?

 ただし長期的な保存は自信がないから、見るなら今日の内にお願いしたいかな。

 映像としてでなく画像ならもう少し保てるかもしれないけど……こればっかりはまだまだ実験が必要だ。

 「あの2人が納得して帰ったのなら、そうなのだろう……」

 あ、見ないのね。

 それはともかく解決、かな?

 なら最後はゆぅちゃんのアフターケアだ。

 「ゆぅちゃんは部屋?」

 あの幽霊が苦手な子が連日祓い屋の従者に襲われてるんだから、きっと憔悴しているだろう……精神力を奪われる時には痛みを伴う人もいるし、その痛み方には個人差がある。

 俺なんかは結構慣れてるし、自分から無理矢理に食わせるーなんてこともまぁ、結構やっちゃってるから最早痛みとかもないんだけど、慣れないうちは痛いし、怖いし、大変そうだ。

 「お前の部屋にいる……」

 俺の?

 なんでまた……。

 話したいことでもあるのだろうか?

 いやぁー、お前のせいだーとか言ってゆぅちゃんにまでビンタされたらどうしようかな……高校卒業まで学校のどこかで寝泊まりして、卒業と共に遠くに行こう。

 何処が良いかな……樹海とか?

 樹海を彷徨う魂という魂を掴んでは浄化、掴んでは浄化させに行ってみようかな?

 それとも、人の意識に入って映像を証拠として見せることができるって能力を使って探偵になって、事件をバッサバサと解決しても良いかも?

 警察官……は、なんだか狭き門って感じだから無理そうだけど。

 さてと、現実逃避はここまでだ。

 コンコン。

 自分の部屋なのになんとなくノックをしてから入れば、明かりもついていない真っ暗な部屋のベッドの上に、恐らくは頭から布団をかぶって体育座りをしているゆぅちゃんらしき物体……メジェドみたいなのがいた。

 「ゆぅちゃん、どうしたの?せめて電気はつけようよ」

 パチンと明かりを付ければ、なんだかちょっと荒れてる部屋の様子が目についた。

 机の上に置いていたペン立てが倒れ、豪快に床にペンが散らばってるし、カーテンは破けてるし、制服にはしっかりとした靴の跡……。

 どうやらさっきの2人はゆぅちゃんを捕まえるために部屋の中にまで押し入っていたわけだ、しかも土足で!

 「制服踏むとかあり得ないし!洗いがえとかないんだけど!?」

 まだシャツの方なら良かったんだけど学ランの方とか本格的に腹立たしいよ!

 「あ、兄貴……」

 「あぁ、ゆぅちゃん、気にしないで。こんなのは叩けば大体綺麗になったりするんだよ」

 バツーン、バツーン。

 ほらほら、あまり目立たなくなってきた。

 スパァン!スパァン!

 「……それ、制服叩いてる音!?」

 ガバッと布団から顔を出したゆぅちゃんは、少しやつれているように見えた。

 「凄いでしょ?俺、力はあるからね。この力強さでアイツらにアイアンクローしてやったからね、もう大丈夫だよ」

 それに証拠も見せて納得したから、二度と来ないでしょ。

 もし来たら、その時は本気でこめかみを潰し……たら駄目だから、あの2人の従者に1回ずつ精神力を無理矢理に食わせて生命力を回復してもらうとしようじゃない。

 「もうここから出たくない。コワイ」

 あらら。

 「人が?幽霊が?」

 人ではないことを祈りながら聞いてみたけど、ゆぅちゃんからの返事はなく、ただ震えている。

 俺が隣に座っても平気そうだから、この場合は幽霊みたいだ。

 怖かったね。

 「コワイ……コワイよ。もぅ嫌だ、見たくない……見たくないよぉ~」

 あ~、もう。

 よしよし……。

 「ゆぅちゃん、あのね。この場所が怖い、ここが怖い、逃げたい……そんな恐怖心は集めるんだよ。だから平気ですって顔をするだけでもだいぶん違うよ」

 これは本当のこと。

 病は気から!みたいな感じ?

 まぁ、ちょっと違うんだけど原理は似たようなもの。

 陰と陽があって、まぁ病気の場合は陽性が出たら駄目なんだけど、気分の場合は陽性であればあるほど陰性に引っ張られ難くなるから良いんだ。

 だからって酒飲んだ勢いで強い陰性の場所に肝試しに行くとかは論外ね!

 あくまでも、普通に生活している分の話。

 「無理だ……目を閉じたら、アイツらの顔が……顔っ……」

 精神力が通常の場合でも怖いだろうに、連日吸われてるから更に深く心的ダメージが入っちゃった感じか……これはもう一種のトラウマになってる可能性まである。

 とりあえずしばらくは幽霊関係が見えないようにした方が良さそうだな。

 だけど学校には行かなきゃならないし、その学校って結構集まりやすい場所だし……今のゆぅちゃんは少し神経が尖ってるから普段なら気付かないモノにも反応してしまう可能性がある。

 黒く染まった気配を消すことは出来るけど、心身のダメージとなれば浄化をしたところでトラウマ自体がどうにもならない限りは同じこと。

 じゃあもう力業で見せないようにするしかない。

 立ち上がり、机の引き出しから伊達メガネを取り出してゆぅちゃんに手渡すと、不思議そうに眺めるだけなので一旦回収してかけてあげた。

 「キツイとか大き過ぎるとかない?」

 伊達メガネだから度数の心配はないけど、サイズが合わなきゃ意味がない。

 「うん……」

 大丈夫そうだね。

 なら、それでいこう。

 「1回外して」

 と、再び回収したらメガネに術を少々オーバーなリアクションでかけた。

 術の効能は、幽霊を見なくて済むようにすること。

 原理は、レンズ部分にフィルターとして陽の気を張っただけ。

 俺が今出せる最大級の陽の気を集めたから、俺よりも弱い幽霊はメガネをかけている限りは見ようと思っても見ることが出来ないスペシャルなアイテムだ!

 ただし、デザインは少しばかりダサイけど。

 「はい。幽霊が見えないようにおまじないをかけたメガネだよ」

 それに、メガネ自体からも陽の気を放つから俺よりも弱い幽霊は寄っても来ない優れものだよ!

 「あ、ありがとう!兄貴!」

 いいよ。

 でも、少しモヤッとするな……そりゃ俺が手がけたアイテムだし紛いものでも偽物でもなくて本物だけどさ、そんなすぐに信じる?

 将来、今みたいに怖さに負けたゆぅちゃんがペテン師とか詐欺師から大量のお祓いグッズを買ったりしないだろうか……。

 とてもとても心配ですよ……ユウト坊ちゃん……。

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