誰ですか?
引き続きよろしくお願いいたします。
「こんな感じでどうですか?」
店員さんの声を聞いて、正面に立て付けられて鏡へと視線を送る。
見れば、何年振りか分からないくらい時間を空けた僕の顔と対面した。正確には、僕と鏡だけれど。
細かいことはいいけれど、・・・・・・何だろうこの髪型は……
確かに、お任せしますとは言ったものの・・・・・・と、いうか、こんな顔していたっけ?
・・・・・・誰、この人?
いや、目が母さんにそっくりだ。ということは、僕?いや、誰?…
ま、まあ、どうでもいいか、なあ。
「か、か、か完璧だと思います。」
言えば、美容院の女性の店員さんはパアーッと顔を明るくした。
よ、喜んでもらえて良かった。…けど、まだ、緊張してしまう。
家族以外の人の前でも、自分でありたい。古賀さんに、背中を押してもらえたから。
「ありがとうございます。今回は、素材を生かすために全体的に遊ばせてもらいました。」
「えぇ!?遊んでいたんですか?」
「フフッ、お客様そういう意味ではございませんよ。」
「//////・・・・・・あ、はい。そうでしたか。あ、あありがとうございました。」
どうやら、早とちりしてしまったようで、恥ずかしい思いをした。
店員さんも、お人が悪い。笑うなんて…
僕は、最近の…というか、おしゃれの事が疎いことを知った。
なんというか……そういうのを意識していないと、疎いことにも気づけないという事実が学べました。
「えっと、カットだけなので、三千円ですね。」
「あ、じゃ、じゃ、電子マネーで。」
かっこいいセリフをしっかり言いたかった。…
って、それよりも、
「古賀さん。お待たせしました。」
「・・・・・・・・・おお、これまた予想以上。」
えっ!
この、予想以上って、なに?
すごく、不安になる。…
「・・・似合っている、かな?」
恥ずかしいけれど、問題ない。
だって、家族だから。
「うん、最高だよ。ちゃんとカッコいい。」
誰かにカッコいいと言われたのは初めてだ。とても、嬉しいような、照れくさいような、不思議な感覚だ。
「あ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
と言いながら、すごく凝視してくるのは何故なのか。
なんか、怖いよ?
というか、本当に怖いのはブツブツ言ってることなんだけど…。
「いや、まさか過ぎ。」だとか、「私の目は何て節穴だったんだ。」等々。
人の顔を見ながらの独り言ほど怖いものはないと思った。……
僕たちは美容院を後にした。
「この後どうする。」
「いや、僕は、何も。・・・あ、そうだ。古賀さん、付き合ってもらったお礼をするよ。」
「な、なるほど、そういう、魂胆で連れ出したんだ。」
「か、からかわ…古賀さん、帰ろっか?」
「ああ、うそうそ、ごめん。」
慌てて謝ってきた古賀さん。
ぼ、僕も、いつまでもやられてばっかりでは、いられないのだ!
「うーん。お礼・・・ねえ。私何にもしてないよ?」
そういう古賀さんは、自信がなさそうだ。
「い、いや、感想を言ってくれた、から。」
「いやいや、普通でしょ。」
どこか、お金を使う事に対して、申し訳なさそうにして見える。
昨日の夕ご飯の時も。…
「じゃあ、゛普通゛を教えてくれたから。じゃ、ダメかな?」
僕は、゛変わりたい゛。そう思わせてくれたお礼もしたい。
教室でボッチだった僕に、話しかけてくれたお礼がしたい。
僕に、優しくしてくれたお礼がしたい。
僕に、僕の、家族になってくれたお礼がしたい。…
たくさんの、お礼がしたい。
「・・・わかった。千堂君、デートの続きをしよう。」
はい、いいですよ。…
「からかうのは、なしですよ。」
僕は、返す。
何倍にして、お礼を返す。
僕は、変わりたい。
どうでしょうか?
『「私は、ネカマです。」なんて、今更言えない。』も、よろしくお願いします!
感想,アドバイス等ありましたら、何卒宜しくお願い致します。