気づかないでいた
私は目の前で頭を下げる同級生に困惑していた。
…彼は、ただの同級生じゃない。
もう、私の中では家族であり、恩人だ。
なぜ頭を下げるのか、理解ができないわけじゃないけれど、下げる頭が違うと思った。
下げるなら、私が頭を下げるべきだ。
卑怯で、弱い私が。
私は気づかないでいた。
いいや、もしかしたら気づいていたのかもしれない。
だけど、君の変化に気づけたのはあの時。
少しづつの見た目の変化には気づくのは簡単だった。
君だって、見た目の事には私を頼ってくれていたから当然なのかもしれない。
最近、目がよく合うようになった。
私はそれを、髪を大きく切ったからなんだと。
そう、決めつけていた。
でも、よく考えてみればそれは大きな変化だったとわかったはずだった。
君を家族と思い始めて、そう意識したことがあまりなかった。
心には余裕があった。
このままあの家でずっと過ごしていきたいと思ってしまっていた。
それが、あの家族のおかげと分かっていながらもまんざらでもないように、どこか甘えがあったんだと思う。
…お母さんやお父さんには頼ってほしいといわれたけれど、君は大人でもなんでもなくて、いつの間にか大きくなっていただけの同い年なんだと気づいてしまって…
私に向けるその眼差しも、君だけ強くなってまた釣り合いが取れなくなってしまった。
だから言わなくてはならない。
君が見ていた古賀さんは、中身なんてなくて、もう、見破られてしまって…いないんだって。
「……もう一度言うね、私は千堂君にはふさわしくないよ」
いきなり何を言われたかわかっていないみたいな顔をする君。
…でも知っていてほしい、これだけは。
私はあの告白が嫌で逃げ出したんじゃない。
どこかで、私を探し出してくれるんじゃないかって…そんな妄想をしていたつもりもない。
ただ、私は背伸びしても君に届かないことが嫌だっただけなんだと、思ってしまった。
「…なら、前の僕って古賀さんにふさわしかったの?」
そんなことを言われた。
…それは、どうだろう。
考えたこともなかった。
…けど、
「違うよね。…でもね、古賀さんは今でも僕なんかふさわしくないと思ってるよ。」
「…だよね、私なんか…」
私が言いかけたのを千堂君は遮った。
「それは違うよ」
「不釣り合いなのは僕の方。古賀さんは、高嶺の花だよ」
…うれしいけど、やっぱり私の方が劣っている。
「そ、そんなことは――――――――」
「あるよ」
私は言葉を飲み込んだ。
千堂君の言葉に力負けして。
言葉の力は、意志の強さ。
私の方が意志が弱かった。
それだけ。
「でもね、もう古賀さんを困らせたりしないから」
「僕は大事なことを忘れていたんだよ」
「不釣り合いだとかそんなのはどうでもいい」
「家族に不釣り合いも何もない」
そう言ってわずかに笑って見せた。
でもそれは、ちょっと恥ずかしそうな顔。
ああ、まだ私のことを家族と言ってくれるんだって嬉しくなる。
でも同時に、それ恥ずいんじゃないかって思う。
私にだ。
千堂君の気持ちはわかった。
でも、それと私の気持ちは別。
…こんなのエゴだ。
でも、それはけじめともいえる。
もう、仮面をつけたくない。
それが本音で。
それが私の劣等感。
私は、それが許せない。
友達に、底辺作家と言われました。
…何も返す言葉が見つかりません。
とりあえず、ブックマークよろしくお願いします。
あと、自分の書いたもの見直してて思ったのですが、ちょいちょい出てくる前書きの「突発」って、何ですか?
…誤字ですが、おちゃめな感じがしたのでそのままにしてます。
読んでくださってありがとうございます。




