僕の家族
引き続きよろしくお願いいたします。
全員が古賀さんに注目する。
古賀さんの悲しそうで、真剣で、その両方を持ったその顔が、やっぱり綺麗で見惚れてしまう。
今日振られたはずなのに、別の女の子をそんなことをこんな風に思ってしまうなんて、ふしだらな男だと思う。
でも、それも仕方ないと思えた。
どこか、綺麗というだけじゃなくて、…何と言ったらいいのだろう。
神々しい?ではなくて、芸術か?というわけでもなくて、……結局、何が言いたいのかまとまらない。
古賀さんの泣いている部分を見てしまったからだろうか。それとも、見慣れているからなのか。……いや、それは違うな。
今日の古賀さんは、僕が見たことのない表情ばかりだ。
新鮮?、と言う事なのだろうか。
さほど大事な事ではないのに、なぜか、なぜか、答えを求めてしまいたくなる。・・・・・・
もしかしたら、それが古賀さんの魅力なのかもしれない。
でも、はっきりしたことは分からない。・・・・・・分からなくていい。
・・・・・・だって、僕が言っている分かるって、――――
「・・・ま、まず、夜分遅くにすみません。」
「いやいや、歓迎しているよ。」
父さんが言った。
「ありがとうございます。」
「うん。挨拶が丁寧な事だ。」
「さっそく、本題に入ります。」
「その前に、父さん笑える話じゃないから。」
僕が釘を差しておく。
そういえば、父さんは「お、おう、そうか。」という。
雰囲気を察したのか分かりやすく静かになる。意外なのが、母さんが古賀さんを見て黙っていると言う事。
謎だ。
「いい?」
「うん。」
「では、・・・スゥ―ハア・・・・・・私は、古賀紅羽です。…いきなりですが、身の上話をします。」
いちいち説明する古賀さんは律儀だ。
「私の家は、あまり…いえ、貧しい家でした。」
知らなかった。…
当然というべきか、いつもの古賀さんからは微塵も想像できない。
「いつか、父が事業に失敗したと聞いています。それから、同時に借金を抱えることになり、今日帰ってみれば、私の家は差し押さえられていました。」
「?!」
父さんは、声には出さないが目を見開いて驚いている。
だが、なぜか母さんだけが驚いていない。いや、隠しているのか、落ち着いているのか。
「続けます。」
「そして、「いや、十分だよ。後は僕が言う。」・・・・・・」
「いいや、言わせて。・・・・・・お願い。」
「・・・・・・」
僕は、古賀さんが図々しいと思われないようにしようと思ったけれど、それは無理な事だと解ってのことか、単に必要ないと思ってかは知らないが、提案は蹴られてしまった。
古賀さんは強い。この先も、言いにくいことも、きっと全部話してしまうのだろう。
憧れる。
僕は、家族にしか自分を出せない。でも、古賀さんは、そんなの目じゃないくらいのレベルの事を言おうとしている。
やっぱりすごい。…空気の読めない感嘆の声が心の中で反復される。
「・・・分かったよ。」
「千堂君、ありがとう。」
古賀さんは、僕にお礼を伝えると、二人を見据える。
「私は、頼れる親戚も居なければ、親は、これを置いてどこか消えました。」
そう言って、制服のポケットから取り出したのはあの置き書き。
直筆の力強い字。優しさも謝罪もすごく…にじみ出ている。
この文字を見る度に、誰かじゃなくて、僕が動かなきゃいけないと思ってしまう。
直接頼まれたわけじゃないのに…胸が熱くなって、さっき言った言葉が自然と出てくる。
――――『古賀さん。僕の家に来ませんか?』――――
「・・・・・・ずるいって、分かってます。でも、・・・・・・私を、少しの間でもいいです。どうか、この家に、置いてください。・・・お願いします。」
「・・・・・・」
黙って見守るしかない。
これは、見守ることが今僕にできる事だから。
「紅羽ちゃん。顔を上げて、私たちを見て。」
語りかけるのは優しい声。――――二人とも笑っている。
「ゆっくりしていってね。」
「一度歓迎したら、そう早く帰れなんて言えねえしな。」
やけに返答が早いが、安心した。
やっぱり、お人よしだ。
父さんも母さんも、僕も断る理由がない。
だから言おう。
もう一度。
「古賀さん。僕も、歓迎するよ。」
「さあ、みんなでご飯を食べよう!」
僕の家族は、古賀紅羽を迎えた。
この日、父さんと母さんに永久に返品要請お断りの娘ができた
どうでしょうか?
思うところがあれば、何なりとお申し付けください。
あと、癖の方言が出てしまったらごめんなさい!
出来るだけチェックしています!!