表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
振られたその日から逆転するラブコメ  作者: スクールストライカー
ぐちゃぐちゃな好き
1/59

プロローグ

 初めまして。

 新連載です。

 この話は、振られたその日から加速する日常です。



 僕は、自分の気持ちを相手に伝えることが苦手だった。

 自分という人間を伝えるのも。

 


 「へえー、ごめん。ムリ。」


 それは、興味がなさそうな、冷たい声。

拒絶の意味を含み、僕の顔は歪んだ。



 ・・・・・・・・・・・・噓でしょっ!

 ガクッと、膝から崩れ落ちる僕。

 地面で手を汚しながら、僕の中の気持ちが期待から、絶望に変わったのが分かった。


 「・・・・・・な、なんで、か・な?」


 自然に出た言葉。一言で切り捨てられただけでは、納得のいっていない自分が居た。

 

 傷つくのが解っていたとしても、教えてほしかった。

 

 それなのに、さくらさんにとっては違ったようで、何で分からないの?という視線を感じた。



 「何でって、そりゃあ、釣り合ってないじゃん?」

 「・・・・・・」

 「あたしさぁ、人の外見どうこう言うのあんまり好きじゃないんだけどさぁ、千堂(せんどう)だっけ?一旦鏡見てきた方がいいよ。」


 「現実は、しっかり受け止めないとぉ。」

 


 それは、当たり前でしょ?というように、端からお前には言葉に出す資格すらないのだと、言われたような気分だった。


 こんなにも、刺さる言葉があるだろうか。

 こんなにも、傷つく言葉があるだろうか。

 

 必死に探すけれど、例え他の誰かに同じことを言われても、たぶん、こんな気持ちにはならないと思う。

 どこかで、淡い期待をした自分がバカだったのだ。

 初めから結果など解っていたはずなのに…名前すら…



 それは、ひとえに彼女の事が好きだから。



 「…そ、そうだよね。」


 必死に言葉を絞り出した。


 「き、貴重な時間をかけさせて、ご、ごめんねー。…あは、ははは。」


 「ん。あっそ、バイバイ。あ、あと、一応言っとくけど、気まずいからもう話しかけないでねえ。」

 「そんじゃあ」

 「……あ、う、うん。」


 彼女は、最寄りの駅の方へ歩いていき、姿が見えなくなると、



 ポタっ。


 ポタっ。


 ポタっ。ポタっ。


 頬を伝うモノが、とめどなくあふれかえった。


 「ふぐっ、ふぐっ、スっ、ズズっ、ああああ!ううう、うわああああ――――――――」



 僕は、その場で泣き崩れた。

 失恋を否定したい幼い子供のように。





 ※



 僕は、クラスの女子に一世一代の思いを伝えた。

 しかし、帰ってきたのは適当に虫をあしらうかの様な言葉。

 そして、振られた理由は、変えようのない容姿。

 「何故だ!」なんて、言えない。言いたいけど…それは、分かっていても悲しかった。


 今更嘆いたって、結果は変わらない。

 振られるどころか、絶交までされたんだ。


 これが意味するものは、――――…考えたくなかった。



 気づけば、辺りはすっかり茜色に染まっていた。

 帰るか。そう思って、立ち上がろうとするも、上手く足に力が入らない。


 どうして?

 何てのは分かっている。それほど、体力を使い切るほど泣きはらしていたのだろう。

 今や、涙の一滴すら出ないぐらいに、瞼は腫れ、目が充血している事だろう。


 

 自分の容姿をこれほど呪った日は無いだろう。

 生まれてこの方、自信がなくても、嫌になることはなかったというのに。…それこそ、虐められていたとしても。




 


 手の甲で、涙を拭う。

 僕は、気持ちの整理ができていないまま力を振り絞って立ち上がると、トボトボと家へと足を向けた。



 一歩また一歩と踏みしめる度に、肉体と精神的疲労が全身に伝わる。そのせいか、普段()()場所から二十分も掛からないのに、すごく遠い道のりに感じる。








 ※

 どれほど歩いただろう。

 体力はとっくに尽きて、疲れ切っているはずなのに、いろいろな道をぐるぐると回っては、家に着く。しかし、それでもなおまた新しい道に彷徨う。

 家に帰っても、何かが待っているわけでもないのに、気が晴れず、ずっと歩いていた。



 これで、七周目。

 別に楽しくなんかない。

 ただ、一人でいたいだけなのだろうと思う。


 そう思っている時だった。

 今、歩いていて、初めて人に会った。

 七周目だけれど、すっかり辺りは夜を迎えていたからだった。

 

 見れば、電柱にしがみつき、泣き崩れているようだった。

 ああ、あなたもか。

 しかも、僕と同じ高校の制服を着ている。


 一瞬、声をかけようか迷ったけれど、特に知り合いでもない僕に話しかけてほしくもないだろうと思い、その場を立ち去ろうとするが、通りかかるとき、完全に目が合った。

 

 ――――茶髪ポニーテールで、白を基調とした制服を着こなし、整った顔立ちは、どこか人に好かれそうな印象を受ける。僕は、その女子を知っている。古賀(こが)さんだ。


 古賀さんは、僕の隣の席の女子で、こんな僕にも優しくしてくれた数少ない人だ。僕が、人と話すのが苦手と分かってくれていて、それでも僕が退屈しないように話しかけてくれた。

 だからだろう。

 自分も心がえぐられたように悲しくても、話しかけようと思えた。

 それで、古賀さんの泣いているものが絶望に突き付けられないように。


 「あ、あの。古賀さん、だよね?」


 僕は、歩みを止めて言った。


 「・・・・・・。うん。」


 彼女は、どこか気まずそうに答える。


 「ど、どうしたの?こんな所で?」


 僕の言葉は、さっき振られた奴とは思えないほど落ち着いていた。

 僕も男なら、泣いている女の子をほっとけないとも思ったのか。


 「・・・千堂君か。千堂君こそ何で?」

 

 質問を質問で返された。答えたくないなら、無理に泣いている理由を聞くこともない。


 「・・・僕も、少し歩きたい気分になってね。」


 そういえば、「そっかあ。」と漏らした。


 「フフッこんな姿、誰にも言わないでね。」


 自分をあざ笑うかのような微笑。

 同族嫌悪と言う物なのか、それが、どうも引っかかる。


 「・・・言いませんよ。僕も似たようなものでしたから。」


 彼女に、何が起きたのか分からない。

 けれど、弱気な古賀さんは初めてだ。


 「何かあったの?」


 そう聞いてくれる古賀さんは、やっぱり優しい。

 

 「いや、うーん。ただの、失恋です。」


 言うか考えたが、話してしまおうと思った。彼女なら、変に言いふらすこともない。

 そして、それをしっかり理解している。


 思った以上に驚いていた。

 なんたって、僕は、古賀さん以外の女子と一か月に一度話すかどうかの人間だから。


 「へ、へえー。意外だなあ。千堂君も恋愛に興味あったりするの?」

 「あ~、まあ、人並みには?」

 「って、それより古賀さんも失恋ですか?」


 途端、彼女の顔から笑顔が消えた。

 俯いて、思い出したみたいに、また泣き出してしまった。


 「ぐすっ、ズっ、」


 鼻を啜る音

 だんだんと顔をゆがめて、


 「うわああああん。ぅあああ。ぐすん。お父さんのバカ,お母さんのバカああああ!」


 夜だから、その叫びは良く通る。

 そんな彼女を見てか、自然と俺の手は伸びて、彼女の背中をさすっていた。





 それは、長い間続いて――――


 やっと落ち着いたのか、しっかりと向き合う。

 

 「・・・ありがとう。」

 「どういたしまして。」


 そんな言葉を交わす。

 彼女の顔からは、出会ったときの余裕がなくなっていた。


 「・・・・・・。私はね、失恋なんかじゃないよ。・・・ただ、・・・親が、いなくなっちゃった。」


 その時の表情は、何かいつもと違う笑顔だった。

 

 ・・・・・・僕は、その笑顔が嫌いだ。

 無理をしているような、なんでも一人でやろうとする顔だ。


 さっきほどから、彼女の顔の事ばかり気にしている僕は、いつもの笑顔に戻ることを期待しているからか、なのかもしれない。


 そう、可能性があるならば、恩を返す時なのかもしれない。


 「どうして?」


 ここに踏み込む以上は、それ相応の責任を取る必要がある。

 古賀さんも、そう思っている僕の気持ちがわかるはずだ。いつも、気の利く古賀さんなら。


 「・・・・・・分からない。・・・けど、家に置き書きが置いてあった。から・・・・・・」


 間髪入れずに、


 「何と?」


 本格的にビックリした顔をする古賀さん。

 だけど、それを黙って首を縦に振る。


 「・・・・・・これ。」


 紙そのものを見せてくれる。

 失礼します。と断りを入れ、手書きで書かれた張り紙に目を通す。





     ――――――――――――――――――――――――――――――――――





 『紅羽(くれは)へ』



 『不甲斐ない父で済まない。』

 『これからお前に突きつけるものが、許されるとは思っていない。』

 『本当に、済まない。』

 

 『お父さん達は、返しきれなくなった借金から逃れることにした。』

 『だから、帰って来たら家は、差し押さえられていると思う。』

 『これは、父さんたちの責任だ。』

 『お前は、付き合わせるわけにはいかない。』


 『どうか、紅羽の未来が幸せであふれる事を願う。』

 『さようなら。』

 



     ―――――――――――――――――――――――――――――――――





 ・・・・・・つまり、古賀さんのお父さんは、夜逃げして、古賀さんを置いて行ってしまった。ということ。

 

 「・・・千堂君は、どう思う?」


 試すような口調だけど、本当は真剣なのが隠しきれていない。

 力になってあげたい。


 「・・・僕は――――(返す言葉に正解は無い。)、・・・・・・。」


 言葉もまとめていないのに、話し始めて詰まる。

 ・・・・・・でも、決まった気がする。


 今日した告白なんかよりも、もっと恥ずかしくて、でも古賀が救われるかもしれない。……なら、言おう。

 失恋をした僕にとっては、恥ずかしいの一つや二つでは立ち止まらない。

 恩を、女の子を、助けよう。

 



 「・・・・・・やっぱり、難しいよ――――「古賀さん。僕の家に来ませんか?」」


 

 

 ――――――――クラスメイトから振られ、僕はその日、隣の席の子を助けた(拾った)のだった。





 どうでしょうか?

 どんな評価もお待ちしております。

 

 二人の会話を増えていくのはここからです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ