2章 入学試験-5
今日はベルリーナに呼び出された翌日。そう、合格発表だ。
王立学校の校庭には、百人を超える受験者が集まっている。筆記試験まで残った面々だ。世話役を連れている者も多く、集まった人数は二百人を超える。
合格者の番号は、空間に光で描かれていた。
もちろん、オレとシストラの番号はそこにある。
「やったねディータ!」
「シストラが落とされるなら、誰も合格しないさ」
オレは満面の笑顔で腕に抱きついてきたシストラを引きはがしながら言う。
シストラは不満そうにぷくっとほほを膨らませつつも、褒められたうれしさで目が笑うという、器用な表情をしてみせた。
見ていてこちらが幸せになる顔である。
「でもほんとよかったよ。筆記試験が簡単すぎたから、あたしが問題を理解できていないのかと思っちゃった。ディータと一緒にトップのクラスになれたってことは、間違ってなかったんだね」
合格発表と同時に、所属クラスも掲載されている。オレ達が属するトップのAクラスからDクラスまで、各クラス二十人の総勢八十人が合格者だ。
こう見ると、筆記で二、三割が落とされたようだ。
「キミ達も僕と同じAクラスとはね。平民が二人もAクラスに入るなんて快挙だよ。まあ、実技であれだけ目立ったんだ。あの難問が多少解けなくとも合格にはなるか」
近寄ってきたのはフレッドだ。実技試験でやたらと絡んできた貴族のボンボンである。見るからに小物っぽいが、Aクラスということは、これでもそれなりに優秀なのかもしれない。
ちなみに、ノッポとデブのおともは最後の実技試験で不合格になったようで、筆記試験の時点で既にいなかった。
「難問……?」
シストラは首をかしげているが、それが世間のレベルというものであることは、昨日のベルリーナとの会話で重々承知している。
「だがここにいるということは、実技だけではなく筆記でもそれなりに点数が取れたということだろう。なに、気にする必要はないよ。僕は女性にも知性を求めるタイプだ。余計な知恵をつけた女は面倒だなどと言うつもりはないからね」
「ちょっと言ってる意味がわからないのだけど……」
「そうやってトボけるキミもかわいいね」
いや、シストラは本当にわかってないと思うぞ。
貴族に嫁ぐ女性は女性であることの教育は受けるが、男性が生きていくためのものとは大きく異なる。だがそれは、田舎の平民にはピンと来ない話なのだ。
「合格した諸君、まずはおめでとうと言っておこう」
実技試験の時と同じく、風の魔法で校庭全体に響くのは、ベルリーナの声だ。
彼女からは、全員が寮生活になること、男女別の寮となること、手続きは今日中にしておくことなどの説明がなされた。
荷物の少ないオレとシストラは、宿を引き払ってくれば入寮は完了。
あとは来週から始まる授業を待つだけだ。
シストラが学園生活を満喫してくれること祈るばかりである。
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