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「これは…」
水晶玉が書き出したカードを見て、テオノラが顔に驚愕の色を浮かべる。
これは――きたか?
異世界転移ものの定番、チートステータスが!!
「これは、これは…ほう…」
勿体ぶりやがって。
まあ、確かに――ありえないほど高い能力値を見て驚いてしまうというのは仕方がない。
ここまでテンプレ通りだとむしろ逆に清々しいほどである。
ここのところ災難続きだったからな、いかにテオノラといえどこうまで気持ちよく反応されればドヤ顔の一つや二つ出てくるものだ。
「まさか…こんなことがあるなんてねーえ…」
しかし、そうは言えどそろそろ自分のステータスが知りたい。
ステータスの表記はどういうものなのだろうか?
よくありがちなスキル方式か?
レベル方式か?
それとも数値式か?
「これは、魔法の適応属性とスキルの有無を調べるものなんだがね?」
「なるほど、そういうパターンか」
「そういうパターンとは?」
「ああ、独り言だ。それで結果は?」
「そうかい。そうだね、結果なんだが――」
俺はあふれる期待を隠せずに結果を待ちわびる。
なにせ、この結果によってこれからの行動の指針が変わると言っても過言ではないのだ。
魔法チートか?
スキルチートか?
どちらにせよ、あのクソみたいな王国に復讐できる力が手に入るならば――
「――残念だが、君には魔法の適正はないみたいだねえ」
え?
魔法の適性がない?
ということはつまり…
「魔法が使えない…ということか…?」
「そうなるねえ」
「ちょっと待ってくれ…でもこれから魔法を覚えたりもできるんだろう?」
「いや、それは無理だねえ。適性がない者はどう足掻いたところで魔法は使えない」
「絶対にか?」
「ああ、絶対にだ」
普段は飄々として何を考えているかわからないテオノラの真剣な顔というものを初めて見て、思わず押し黙る。
「大変残念だ。それはもう大変に。こうやって若い芽を摘むのは主義に反するんだがねえ…下手に希望を持たせるのもよくないだろう?」
魔法は使えない…か。
となると、魔法を使わずしてあの王国を潰せるほどの力を手に入れなくてはならない訳だ。
しかし、転移前に格闘技を少し齧っただけという、所詮は素人に毛が生えた程度でしか無い俺にそんなことが可能なのか?
待て、スキルは?
「スキルの方はどうなっているんだ?」
聞くとテオノラは少し顔を顰める。
「…どうした」
「いや…今まで何人もの結果を見てきたんだがね? こんな結果は初めてだから少し困惑してしまってねえ」
こんな結果?
その顔から察するにまた外れなのか?
「魔法適正がない時点でもう心は折れてるんだ。勿体ぶらずに早く教えてくれ」
「ふむ…」
テオノラは顎を擦りながら少しの間を開けた。
「私もわからないのだがね…?」
そう言いながらも、本当に困惑した顔でカードを差し出してくるテオノラ。
そのカードにはこう記されていた。
種族:人間
年齢:18
魔法適正:無
未確認スキル:熟練度100/100
未確認スキル:熟練度30/100
未確認スキル:熟練度10/100
称号:巻き込まれし異世界人