5
ついに、ついに感想&評価が…!
ありがとうございます!
めちゃめちゃ嬉しかったです! 思わず作業全部ほっぽり出して更新したくなるほど嬉しかったです!
一応あらかた片付いたので、また出来る限り更新ペースを早めたいと思います。
皆様、感想とか評価くれてもいいんですよ?(/ω・\)チラッ
魔導王国グラノス。
今、俺はその首都ダラノーグを散策している。
大きく聳え立つ白く荘厳な王城を取り囲むように円形に広がるダラノーグは、その全てが白い大理石のような石材を使って構築された美しい街並みだった。
王城付近にあった大きな噴水から流れる水が大通りの脇にある水路を流れていく光景には、その素晴らしさに思わず言葉を失ったほどだ
今まで見てきた限り、元の世界で言えば中世ほどの技術水準のようだが…元の世界にはなくてこの世界にはある2つの大きな存在がある。
それは、魔法と様々な異種族だ。
見かける魔法といえば、炉に火をつけたり重いものを浮かせて運んだり、という些細なものだったが――まあ街中で攻撃用の派手な魔法を使う馬鹿もいないだろう。
それに些細なものとは言っても、魔法などおとぎ話の中の話であった俺からすれば全て新鮮で、感動すら覚えた。
そしてなによりも異種族。
このダラノーグの街には、人間の他に小人やドワーフ、猫耳や犬耳、尻尾を持つ人々がたくさんいたのだ。
元の世界でオタクと呼ばれ、画面の中に入れないかと本気で願うこともあった俺にとってこれほど嬉しいことはなかった。
まだ見ていないが、探せば妖精なんかもいるのかもしれない。
と、そんなことを考えているうちに目的地へとついた。
手元にある簡易な地図を見て確認するが、間違いはないようだ。
白い石作りの建物だが、他の建物よりも一回り大きい。扉の上に掲げられた看板には『踊る白兎亭』という文字があった。
一つ小さく息を吐くと大きく重厚そうな門扉を開ける。
この踊る白兎亭はセラフィーナに教えられた宿だ。
どうもダラノーグ唯一の国営宿であるらしく、一文無しの俺をしばらく置いてくれるということらしい。
勿論いつまでも世話になる気はなく、ある程度稼げるようになったら出て行くつもりではあるが、まったく金が無い現状では大変ありがたい申し出だった。
踊る白兎亭に入ってまず驚いたことは、外装はもちろんのこと、内装も大変整っていることだった。
てっきり小さく薄汚れたものを想像していた俺は、まず入った瞬間に口を半開きにすることになった。
床に敷かれた絨毯や控えめなシャンデリアが醸し出す落ち着いた雰囲気は、元の世界でも十分に通用するであろうものだった。
扉から入ってすぐのところで呆けていた俺は、後から入ってきた人に邪魔そうに促されることでようやく受付へと向かう。
3つあるカウンターのうち、一番右端の受付嬢に声をかけた。
「ようこそ、踊る白兎亭へ。宿泊のご予定でしょうか?」
受付の綺麗なお姉さんに会釈しつつ、セラフィーナから預かっていた紹介状を渡す。
紹介状に押された封の紋章を見て一瞬だけ小さく驚いた様子ではあったが、すぐに接客スマイルを取り戻した。
「中身を拝見致します」
その場で綺麗に封を開けると中身を読む受付嬢。
その目線が手紙の上を這うのをぼーっと見ていると、思ったよりも短い時間で再び目があった。
「失礼致しました。今すぐにお部屋へご案内できますがよろしいですか?」
「ああ、頼むよ」
「かしこまりました。では、こちらへ」
背後にあったロッカーから鍵を取り出した受付嬢の後へと続く。
ふと思ったのだが、この世界では受付嬢が部屋へ案内するのがスタンダードなのだろうか。前の世界とは違うのかもしれない。
そんなことを考えながらも綺麗に装飾された廊下を進む。
まるで前の世界で何度か行った高級ホテルのような内装に、改めて舌を巻く。
エントランスロビーも相当なものだったが、廊下もすごい。
綺麗に整えられた街といい、この宿といい、もしかしたらこの世界の水準は思っていたよりもずっと高いのかもしれない。
「こちらのお部屋になります」
部屋へと入って、息を呑む。
もはや何度目かもわからない驚きだった。
これまで宿の内装を見てある程度のクオリティは予想したものの、まさかここまでとは。
「こちらがリビング、向かって右側の扉が寝室、そして左側にトイレとバスルームがございます。荷物については左側、バスルームの隣にクローゼットルームがございますのでそちらをお使いください」
ちょっと待て。
ちょっと待ってくれ。
バスルーム――バスルームと言ったか?!
「まさか、浴槽が…?」
「勿論ございます」
き…キタアアアアアアアアア!
純日本人である俺に浴槽は必要不可欠な、いわば相棒。
まさかこの世界にも入浴という文化があったとは。
俺がまず真っ先にやろうと思っていたことがこれで解消した。
「もし何かご入用なものがございました際はいつでも受付にてお声掛け下さい。今後は私ロゼッタがゼイル様の個人担当となります。お食事の際はエントランスホール右手にございますレストランをご利用ください」
何か質問は、と聞くロゼッタに首を振ると彼女は会釈をして部屋を出て行った。
一通り部屋を見て回ったあと、リビングにあるソファーに深く腰を下ろす。
思ったよりも何倍もふかふかなその感触に、思わず眠気がこみあげる。
一瞬このまま寝てしまおうかとも考えたが、頭を振ると眠気を飛ばす。
まだ考えなくてはならないことがたくさんある。
今後の身の振り方。
どのようにして生き、どのようにしてあの愚王達に復讐を果たすか。
洗脳されていたとはいえ、自らが起こしてしまった事態に対してどう責任を取るか。
そして何よりも、洗脳されている間に起きた体の変化について。
元の世界で多少格闘技を齧っていたとはいえ、それだけで単身で城へと踏み込み王を殺せるはずはないし、何よりも剣術など習ったことはない。
きっとなんらかの方法で身体能力を強化されたはずである。
小説などのお約束であるステータスという概念がこの世界にあるのならばそれの確認。
洗脳によって無理やり能力を底上げされたのならば、自分の体に何らかの異変がないか。
こういったことを確認しなくてはならない。
それに洗脳されていた間の記憶が丸々ないため、それについても確認したい。
まあ、それは追々でもいいが…。
「とりあえず、王城へ行くか」
落ち着いたらまた顔を出せと言われていたことを思い出し、居心地の良すぎるソファから無理やり体を上げる。
これからの面倒事を考えると気が重くなるのは仕方のないことだろう。