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第2話 集う

王の間。


天井には7色の水晶で彩られたシャンデリア。


部屋の細部には凝った装飾がなされ、部屋の奥に周りより高くなっている場所に漆黒の大理石で作られた玉座が置かれている。


そこに至るまでは高級感溢れる赤い絨毯が引かれている。


「……はぁー」


1ヶ月振りなので思わず溜め息が出てしまった。


今の感情を例えるなら、嘗ての黒歴史を見せられている感じだ。


俺が想像した階層だけど、やり過ぎだよな。



〈階層創造〉。

階層を作製する際に、細部をマスターの意思での変更と創造が可能。


これが、女神様から与えられた特別なダンジョンスキルの1つだ。


普通は、階層を製作してからDPダンジョンポイントと呼ばれる燃料の様なものをチマチマ消費して、自分の好きな様に階層をカスタマイズしていくのだが、このスキルがあれば一瞬で自分の思った通りに製作可能だ。


しかも、本来なら製作不可能な設備や機能を創る事が出来る。

夢がある機能だ。


ちなみに俺のダンジョンは、現在全階層合わせて7階層しかない。


少ないと思うかもしれないが、俺は量より質を選ぶ人間だ。


それにしても、誰も来ないのに豪華すぎるだろ……。


俺が2度目の溜め息を吐く。


いや、実際肺がないので呼吸はしてないと思うけど、人間だった頃の名残と言う奴だ。


その時、俺の背後から冷気が流れて来た。


相手は分かっているので、ゆっくりと振り向く。


俺に向かってドレスの裾をつまみ優雅に一礼する美少女。

見た目は、蒼みがかった銀髪にサファイアの様な碧眼。そして、モデルのような女性的体格と雪のように白い肌。纏っているのは清潔感と純潔な印象を相手に与える蒼いドレス。


しかし、どこか儚げで思わず抱き締めたいと思ってしまう。


少女の名は、ユーフィル・ニヴェリア。水の大精霊だ。

そして、第三階層の統治者である。


「お久しぶりでございます。私の全てを唯一支配出来るお方」


「……久しぶりだな、ユーフィル。……その、変わらず美しいな」


「ありがとうございます!」


白い雪の様な肌を高揚させるユーフィル。


実はこのユーフィルも唯のモンスターじゃない。



〈魔物創造〉。

魔物を創造する。

種類、見た目、性格、スキル、などを自由に設定する事が出来る。


これも特別なダンジョンスキルらしい。


まぁ、〈階層創造〉と〈魔物創造〉はどれもDPの消費が半端じゃない。だから、女神様から貰った大量のDPは階層とユーフィルなどの統治者に全て割り振ってしまった。


だって、中途半端な強さの部下を創造しても心配で安眠出来ないだろ?


「他の奴らの様子はどうだ?」


「……まぁまぁですね」


あれ?


「何かあったのか?」


「いえ、何もなさすぎて」


……あー、確かに1ヶ月誰も侵入して来ないんだ。変わった事などある筈がないか。


その時、もう1人の統治者が現れた。


「お久しぶりです、ヤト様」


現れたのは、ルドラ・アーレクス。

種族はキメラだが、人型をしている。

獅子の頭部に虎の胴体と下肢、上肢は狼、尾は蛇の様な鱗に包まれている。更に、獅子の頭部には山羊の様な角が生えている。

第四階層の統治者である。


姿は見た者に恐怖を与えるが、どこか人懐っこい表情や雰囲気を纏っている。


そして、キメラは神話で登場するキマイラと同一視される場合がある。そのキマイラの胴体は山羊だがルドラの場合は虎だ。


理由?そんなのモフモフを追求しただけに決まってるだろ?


「……堅苦しいな。いつも通りで構わないぞ?」


「ははは、それじゃ遠慮なく。お久しぶりでこぜぇやす、ダンナ」


何処かの盗賊の子分みたいな話し方だが、よく見れば愛嬌のある顔立ちの所為かそこまでの違和感はない……と俺は思う。


「うむ。……それでは、早速撫でても良いか?」


「くすぐったりはしないで下せぇよ?」


そう言いながらも俺よりも少し身長の高いルドラは撫でやすい高さまで屈んでくれた。


「分かっている。それにしても、流石の毛並みだな」


ルドラの最も拘った部分は毛のモフモフ感だ。

多分、ルドラを創造する上で1番時間かけたと言っても過言ではない!


いやー、1ヶ月経ってもこのモフモフ感は健在だったのは嬉しいな。


いや、更に磨きがかかっているかもしれない!


あー、異世界に生まれて良かったー!


俺が後ろからルドラの毛並みを撫でていると、ユーフィルが擦り寄って来た。


「や、ヤト様、私も撫でて下さい」


ポッ、と顔を赤くしながら俺に頼んで来るユーフィル。


か、かわいぃぃい!こんな可愛いモンスターがいて良いんだろうか!?

いや、絶対に良い!!


結局2人のサラサラとモフモフの頭を思う存分撫でる事が出来た。


ふぅー満足だ。


良し、俺は帰って寝よう。


そう思い出入り口である、両開きの大きな扉の方を見れば死神を背後に飼ったメレアが俺に微笑んでいた。


や、やばい、あの目は殺る気だ!


もし俺がアンデッドでなければ顔面蒼白間違い無しだ。


「これはこれは楽しそうやね。あても混ぜて欲しいわぁ」


「皆さん、お待たせして申し訳ありません」


喋りに京都弁を組み込んだ独特の喋り方と何処か品のある話し方をする男性が立っていた。


メレアの両脇に立つのは、一見狐の獣人とぽっちゃり体型の人間だが正体は紛れもないモンスターだ。


クラマ・カンナギ。

種族は、九尾の妖狐。見た目は、金髪に琥珀色の瞳、9つの尾と丸眼鏡をかけ巫女服に似た服を着ている。

第二階層の統治者である。


ドルボア・オーニスト。

種族は、猪人の王(オークのキング)。見た目は、明るめの茶髪に金色の瞳。丸顔ではあるが、よく見れば整った顔立ちをしていて、鷹の様に鋭い目をしている。体型はぽっちゃり体型で着ている貴族服の上からでもお腹の形が見て分かる。


しかし、動作に一切の無駄はなく洗練されている。そして、4人の統治者の中では最も頭が切れる。


それ故に、地上と第一階層を統治し、報告によれば5階層の管理にも協力していると書いてあった。



さて、やっと全員揃ったか。


俺は王座への階段を登り深く座る。


はぁー、創造する時はボスはやっぱり王座に座って待つのがカッコ良いと思っていたけど、実際に座ってみると少し恥ずかしいな。


隣にはメレアが立つ。


そして、統治者4名が練習でもして来たかのように揃った動きで跪く。


「まずは、この1ヶ月ご苦労だった。侵入者はいなかった様だが、良くそれぞれの階層を管理してくれた。感謝する」


「感謝などお止め下さい」

「その通りです」

「わてらは、わてらの意思でヤト様に従っています」

「その通り。しもべが主の為に働くの当然の事です」


うぅ、忠誠心が1ヶ月前より上がっている……。


「そうか、分かった」


ここで俺が引かないと面倒な事になりそうだよな。


はぁ、何だか疲れたしさっさと済ませるか。


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