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第1話 目覚め

「ふぁ~、よく眠れた」


俺は竜骸夜兎、こっちの世界ではヤト・リュウガイだな。


異世界に転生して早1ヶ月。


何とか平和な毎日を過ごす事が出来ている。


一度体を伸ばすと体のいたる所からポキポキと音が鳴る。


その時、寝室のドアがノックされ扉が開かれる。

そこには、黒と白のオーソドックスなメイド服を纏った黒髪碧眼の少女が立っていた。


……うん、時間通りだね。


「おはようございます、旦那様」


「おはよう、メレア」


メレアは血が通っていないと感じる程に白い肌と人形のように整った顔立ちの少女だ。


そして、美と愛の女神様が俺の為に創ってくれたナビモンスターだ。種族名はタナトス。

世界でも高位に位置する程に強力な力を持ち、一部地域では死の化身として畏れられている。


「お約束通り、今日で30日です」


メレアの顔は無表情だが、流石の迫力だ。


常人なら卒倒してしまう程の冷たい殺気を感じる。


「もう少ししたら動くよ」


しかし、殺気を受け怯えるのは命ある生物だけだ。だから、俺は何ともない。メレアもそれは知っているが止める様子はない。


「いい加減働いて下さい。童貞ニート」


グサッ!


「それとも、白骨化した所為で脳まで干からびてしまったんですか?」


グサグサグサッ!!


「……なぁ、俺一応このダンジョンの支配者何だけど」


絞り出すような声でメレアに訴えかけるがーー


「だったら働いて下さい」


ーー一蹴されました。


「……俺が鋼メンタルじゃなければ再起不能だったぞ?」


「それは良かったですね」


この毒舌メイドは現在俺の代わりにダンジョンの管理を行っている。立ち位置的には、メイド兼サブマスターといった所だ。


そして、メレアと行った約束とは30日怠惰に過ごせたら少しだけ仕事をする、と言うものだ。


「分かったよ、少しだけ仕事をするよ」


少しを強調してメレアに言った。


「では、こちらのお召し物に着替えて下さい」


メレアが空間収納から取り出したのは、俺をこんな姿にしてしまったドM神が謝罪の為に送ってくれたローブだった。


闇を集めて作ったかの様な漆黒ローブ。凝った装飾は一切ないが、付与された効果は絶大だ。勿論、アイテムのランクでは最高位、創世級。正に神が纏し装備だ。


本来は俺が着るには畏れ多い代物だが、折角貰ったし有難く使わせて貰っている。


漆黒のローブを纏い、姿鏡で確認する。


そこに映った俺の姿は良くファンタジー小説だなどに登場するモンスター〝リッチ〟なのだ。


しかし、リッチとは魔法を極めた人間の魔導士が蘇った姿だと言われているが俺の場合は少し違う。


俺の姿は、竜を人型にした様な種族、竜人がそのまま白骨化した姿なのだ。だから、頭部は竜顔だし、手や足の骨も爬虫類の様な鉤爪がある。極めつけは骨の尻尾まである。


最初この姿を見た時はショックだったが、俺の目的は平和に怠惰な生活を送る事だ。なら、姿形など些細な問題だと割り切る事にした。


実際、この姿は便利だ。

疲れない、腹は減らない、排泄はしない、良いことの方が多い。


アンデッドなのに眠れるしね!



さて、そんなこんなでやって来ました。

1ヶ月ぶりの執務室です。


ガチャ……ガチャン。


だが、扉を開け俺の机の上に乗った書類の束を見た瞬間、俺は扉を閉めた。


「なぁ、少しって言ったよな?」


「はい。ですから、1ヶ月分の報告書の中で旦那様に見て貰いたい書類を厳選しました」


これは、厳選したと言えるのか?


振り返ったメレアの顔は笑っていたが、背後に大鎌を振りかぶった死神が見えるのは何故だ。


もし俺が人間だったら顔が青ざめ生まれたての子鹿の様に震えていただろう。


覚悟を決めて部屋に入り、質の良い革張りの椅子に腰掛け書類に目を通して行く。


前世では高校卒業を目前とした普通の学生だった為こういう作業にはあまり慣れていないが、根性で書類に目を通して行く。


背後には毒舌メイドが控えている。

適当な事は出来ない。


責めてもの救いは、この体が疲労を感じない事だ。



……それから何時間が過ぎたのだろうか。


やっと全ての書類に目を通し終わった。

現在、頭の中には纏めきれていない情報が詰め込まれショート寸前だ。


「お疲れ様です、旦那様」


メレアが冷えた紅茶を淹れてくれた。


俺は一口飲む。


アンデッドでも俺は食事が取れるし、味も同然感じる。食べた直後に魔力に変換されるので排泄もしなくて済む。


「相変わらず美味いな」


「ありがとうございます」


メレアは優雅に一礼する。


そういえば、報告書の中に気になる事が書かれていたな。


侵入者 0


各階層 統治者 1人 配下 3人


侵入者0は平和でいい事だが、各統治者に配下3人て何だよ!

つまり、この1ヶ月7つある各階層をそれぞれの統治者たちは配下たったの3人と協力して管理していた事になる。


「なぁ、配下があまりにも少な過ぎないか?」


「私もそう言ったのですが、旦那様にこの階層を任せられたのは自分達だ、と言って一向に配下を増やそうとしなかったのです」


なんじゃ、そりゃ……。

それはどんなブラック企業だよ。


階層つってもとんでもねぇ広さだぞ?


「……メレア、統治者全員を読んでくれ」


「畏まりました。旦那様も王の間に移動して下さい」


だよな。この執務室じゃ狭すぎる。


「はぁ~、面倒くせ~」

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