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第15話 世界への一手

皆さんに楽しんで頂けたのなら幸いです!


短い間でしたが、ありがとうございました( ̄^ ̄)ゞ


憤怒する龍神(サタン)〟は、俺がゼウスから喰らって奪った神力を解放し、俺自身の姿も本来の龍に戻す魔法だ。


しかし、この姿でいるだけで魔力を消費するし、何よりも大き過ぎて日常生活が不便なのだ。


はぁー、さっさと終わらせるか。


俺は騎士から視線を外すことなく地上に舞い降りる。


停滞領域故に振動が伝わる速度も遅くなっている。



「〈迅雷滅槍〉」


俺が地上に舞い降りた瞬間に騎士が聖槍の一撃を放つ。この巨大では交わすことは不可能だ。


いや、もう交わす必要もない。


「〝虚無の神衣(ギヌスガァルブ)〟」


俺が詠唱した途端、漆黒の鱗が闇へと変わり、騎士の聖槍から放たれた武技を飲み込んでしまった。


「無駄だ。この力の前には全てが無力だ」


ま、嘘なんだけどね。


確かに、この力は無敵だ。


しかし、1日の使用回数制限があり、神の力は無効化出来ない。騎士は聖神の力を宿してはいるが全く使いこなせていないので無効化出来る。


まぁ、神の力であっても9割くらいは削れる。


そんな俺の考えを理解している筈もない騎士は動揺し見るからに戦意を削がれている。


「では、そろそろ終わらせるぞ」


俺は再度、巨大な翼で羽搏き天に向かい浮かび上がる。不思議な感覚だが、これ程の巨体を浮かしているのに全く重みは感じない。


楽ちんで嬉しいから良いけどな。


「さて、簡単には死ぬなよ?」


俺の周囲に雷が降り注ぐ。


そして、俺の詠唱が進むにつれ雷が大きな魔法陣へと姿を変えていく。


「我、愚かなる愚者は 神を食らう者


我は全ての喪失者 故に万物を喰らう


我が存在は大罪であり 至高


しかし 世界は我を拒絶した


愚かな世界よ 我もまた拒絶し否定する


汝の全てを破壊し 始まりの闇へと還す


我が身に宿る雷霆の血よ 湧け


その絶対なる力と 全能の権限を持ち


崩壊し 秩序無き世界を在るべき世界へと為す


森羅万象を改変し 新たな世界の楔を穿て


世壊魔法〝虚無龍の咆哮〟」


俺の頭上に広がっていた黄金の魔法陣が弾け、世界を黒く変えた。



◇◆◇◆



何もない。


何も見えない。


我は一体何なんだ?


何度も頭に過ぎり、応えの出ぬまま我を苦しめていた言葉。


しかし、この闇を見て漸く悟った。


もう既に、自分とは何者でもない。


唯、破壊する為だけの道具でしかない。


だから、名も知らない。


記憶もない。


あるのは、泣き、怒り、我が手により消えて行く命。燃え落ちて行く大国。


そして、弱い人間の姿。


誰かは分からない。


知りたくもない。


……でも、逃げてはいけない、そう我の空っぽな鎧の中で誰かが叫んでいる。


だが、我には無理だ。


知るのが、恐くてしょうがない。


何もかも知りたくない。


何処を見てもあるのは闇。


ゆっくりと自分が闇の一部になって行く感覚を感じる。


「誰カ……」


寂しい、恐い、寒い、色々な感情が噴き出す。


必死に水に落ちた子供の様にバタバタともがき手を上へと伸ばす。


其処に光はない。


あるのは、闇。


そう、我には最初から何もーー


「ーーなら、これから創れば良い」


「!ーーッ」


既に声が出ず、消えかけている身体を無理矢理動かし芋虫の様に闇を這う。


そして、闇に立つ骨の竜人に胸にしがみ付く。


まるで、希望を見つけた泣き噦る少年の様に。


「寂しいのなら俺が隣にいる。寒いのなら温めてやる。もう、恐くなどない。お前の名は、オーディム」


「オーディム」


声が出なかった筈なのに、はっきりと声が出た。


それと同時に闇の世界が砕け散り、砂漠の様に広がった霧が包む大地に我は立っていた。


我から手を離し立ち上がった骨の竜人は、俺を見る事なく口を開いた。


「もうお前に、あの世界は必要ない」


それだけ言い残し歩き出す。


しかし、数歩歩いた所で再度声が届いた。


「来ないのか?」


「……ェ」


「オーディム」


不思議だ。いつも冷たかった我の内側が熱い。


これが心、なのか?


それを確かめるより早く我の心の声が叫んでいた。


「ハ!コノオーディムノ命ハ、何処マデモ至高ノ御方ノ為ニ!!」


世界を生み出し、世界を破壊する御方が我の主人。


その場で忠誠を誓った後、立ち止まりこちら見ている御方の元へ迅速に移動した。



◇◆◇◆



そういう訳で、城に戻ってくると涙を流す部下たちからの大喝采を浴びた。


あー、疲れた。でも、これで終わりだ。

頑張れ、俺。昼寝だ、俺!


俺が右手を上げる事で地を揺らす様な大喝采は止み、痛い程の静寂が空間を包む。


「オーディムが部下となった事で遂に準備が整った!」


その言葉に部下たちから様々な声が聞こえる


「遂に!」

「やっと我らが世界へと動く時が……」

「てか、ヤト様1人で何とか出来ると思う」

「確かに」

「ウヒョー、戦だ!!」

「頑張ったら、キスしてくれるかな」

「腕がなるぜ」


どうやら全員理解しているようだな。


メレアを筆頭に、ユーフィル、ルドラ、クラマ、ドルボアが俺の前に跪く。


それに続きそれ以外の部下たちも一斉に跪く。


俺は立場上オーディムに向けて視線で命令する。オーディムも直ぐに理解し、メレアたちの後ろに移動し跪く。


再度、空間を包む静寂。


「俺は、俺の望む完璧な怠惰せかいを俺たちの力で創り上げる!その為に、此処にいる皆の力を貸して貰う!」


「「「「ウォォォオオオオオ!!!!」」」」


部下たちの高まりに思わず俺も嗤ってしまう。


本当に、魔王みたいだな。


「さぁ!明日からが、世界への一手だ!!」


騒ぎ、叫び、昂ぶりを抑えられない部下たちを見ている時、メレアが音を立てずに寄って来た。


「では、旦那様、報告書は今日までに提出をお願い致します」


「はぁ?」


「はぁ?ではありません。あれ程の極大魔法を放ったのですから、周辺領域の修復と明日からの事も含めて10日程は眠れないかと」


「ま、マジか!」


「ええ、では、さっさと仕事に取り掛かって下さい。童貞白骨化チート人外ニート」


おいおいおいおい!どんだけ長くなるんだ!!


童貞、白骨化、チート、人外は否定しねぇし出来ねぇけどな。


「俺はニートじゃねぇよ!このダンジョンの支配者だ!!」


「「「「「ウウゥぉぉぉぉおオオオオ!!!!!!」」」」」


先程よりも大きい声が城を包み、本当に大地に揺らしている様に感じる。


「あー!誰か変わってくれーー!!」


こうして俺の平和な怠惰は更に遠去かり、世界への干渉の仕方を考え抜く俺だった。


「全ては平和で完璧な怠惰の為に!!」

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