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第9話 夢への誘い



はぁー、結局仕事を全て終わらせ第四階層に来たのはエルフ族とドワーフ族の件から3日が過ぎた後だった。


何故なら、こんなに遅くなったかというと、まぁ自業自得なんだけどな。

第二階層からの報告書の数が倍増し、中には鍛冶屋で作る武器や道具の確認の書類もあったので気を付けて目を通した。疑問があれば、クラマやガンロックを直接呼び話を聞いた。それに、開拓の計画もエルティナを直接呼び話を聞いたりした。


あと、あれだ。


本人の強い希望もあり、エアリィが新しく俺のメイドになった。


しかし、初めての作業の連続で失敗が続きメレアから毒舌を賜り、俺の作業効率まで落ちてしまった。


そこは俺が何度かフォローを入れたおかげで、最近はエアリィも仕事に慣れてきてメレアからの毒舌を受けても立っていられるまでになった。


死の化身タナトスの口撃を受けきるとは、エアリィ……成長したな。



それと、それぞれの階層に新しい魔物を配置する件なのだが、今、問題にぶつかっている。


その原因が俺が購入した鍛冶屋だ。


分割で払うのは良いんだが、各階層に魔物を配置するとダンジョンの維持費がギリギリになってしまう。


まさに火の車状態だ。



そこでだ。


現在、第四階層に捕らえている騎士12名をダンジョンの労働者として雇うことに決めたのだ。


今回ばかりは、本人たちの意思なんて無視させて貰う!!


これは決定事項である!


エルフ族やドワーフ族から不満が出るかもしれないが、そこは恩を笠にして黙らせるしかない。


まぁ、そうならない為にエルティナとガンロックにはそれとなく伝えてみたが2人とも快く了承してくれた。



という訳で〈迷宮門〉を潜りやって来た俺とメレアとエアリィを出迎えたのは第四階層の統治者ルドラだった。


そのフサフサの鬣とビシッと決めた黒と赤の軍服が今日も良く似合っている。


「出迎えご苦労。さて、話は聞いているな?」


「は!闘技場に騎士12名を集めております」


俺はルドラの言葉に頷き、案内されて石畳の上を歩く。


薄暗い通路は一直線に続き、一定の間隔で設置されている魔法道具の魔力光が足下を照らす。

掃除が行き届いているようで、清潔感を感じさせる道だ。


しかし、たった4人で良く此処まで掃除が行き届いているな。


俺は一度この階層のルドラ以外の配下を思い出す。


……謎だ。


誰1人として掃除が得意そうな奴が思い浮かばない。いや、あのウサギなら意外と掃除が得意なのかもしれないな。


そんな事を考えていると、通路を抜けた。


本来ならここは、侵入者を迎え撃ったり、配下同士が戦い互いに切磋琢磨する為に創った格闘技場なのだ。


しかし、今は、目の前には纏っていた鎧が剥ぎ取られ、腕と体を縛られ座らされる人間の男女が12人いるだけだ。


さて、少しはやる気を出すか。


俺は、無理矢理座らされている元騎士たちを眺める。


その中、最も強い光を目に宿す少女に視線が止まった。


あの時の騎士か……。


俺は金髪碧眼の少女に向け問う。


「人間の女騎士よ、名は?」


「コーネリア・アインバース」


「ふむ、ではコーネリアよ。俺を殺したくはないか?」


「何だと?」


俺の言葉にその場の全員が驚愕、又は呆れる。


「だから、俺を殺すチャンスをやる、と言っているんだ」


俺の合図を受けたルドラは、コーネリアを縛っていた縄を切り、何処から取り出したのか騎士剣をコーネリアの前の地面に突き立てる。


「もし、俺を殺せたら君たち全員をこの地から逃がしてやろう」


「……それは、本当か?」


「俺の命に賭けて誓おう」


ゆっくりと立ち上がったコーネリアは、目の前に突き立っている自らの剣を引き抜く。


そして、俺に向け構える。


俺は構えない。ただ、コーネリアがどう来るか待つだけだ。


「武技〈聖術付与〉〈身体強化〉〈獣の瞳〉」


剣が聖なる光を発し出し、コーネリア自身も強化されたようだ。


「死ねぇ!武技〈剣輝一閃〉」


コーネリアが剣を振るう為に一歩を踏み出す。光を纏う剣は更に強い光を放ち、俺へと迫る。


その瞬間、コーネリアが地面に膝を付く。


そして、震えながら俺を見上げる。


それを見た先程までコーネリアの勝利を期待していた他の元騎士たちにも絶望感が伝染する。


ここでやっと奴等は理解したのだ。いや、改めて理解させられた、と言った方が正しいだろうな。


自分たちが今相対している俺が、お前たち程度では触れることすらできないということをな。


「な、何故だ、何故、私の体が言うことを聞かない!?」


コーネリアは軽くパニックを起こす。


「お前一体何をした!!」


「……俺は何もしてないさ。今、そうして地面に這い蹲っているのは、コーネリア、君の意思だ」


「な、にをいっている?」


「俺の魔法、大罪魔法には7つ力が宿っている。今回は!その内の1つ、怠惰の力を使い、お前に働きかけた」


俺の言葉を呆然と聞くコーネリア。


「面倒じゃないか?とな。それに応え、お前の体は動くことを怠けてしまったのさ」


「そ、それじゃ……」


今になってコーネリアが、怒りからではなく純粋な恐怖から震えだす。


「そうだ。エルフの村で多くの騎士が死んだのは、自ら生きることを放棄してしまったからだ」


「……」


「これが、大罪魔法の1つ、怠惰ベルフェゴールの力だ」


誰もが声を発せず沈黙だけがこの場を支配する。


まぁ、ここまでの実力差を見せつけられればそれも同然か。


「……さて、そろそろ茶番は止めて本題に入ろう」


コーネリアは自分との勝負が茶番と言われて笑うしかない。


「君たち全員、俺の配下になれ」


「それはーー」


「ーー君たちに拒否権はない。まぁ、それでも嫌だと言うのなら、俺の試練を乗り越えてみせろ〝惰眠の旋律(ヒュプノス)〟」


俺の魔法を受けた騎士たちは1人残らず深い眠りへと誘われた。


そのタイミングを見計らっていたように闘技場に誰かが飛び込んで来た。


そちらに視線を向ければ、頭のウサ耳と額の綺麗な一角が特徴の黒みがかった金髪少女が此方に走って来て元気良く敬礼をした。


「ヤト様、席の準備が整いました」


「……アルミィか。分かった、案内を頼む」


統治者たちと最初の配下には全員名前を与えている。


正直、名前を付けたわ良いが覚えるのが面倒だった。


「はっ!」


「ルドラ、後のことは任せる」


「お任せ下さい」


俺はルドラの了承の意を受け歩きだす。




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