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「女は窯でも焚いてろ……」

 泣くじゃくるメグ先生に教室内は浮足立っていた。

委員長でさえも対応できなく困っている。

そんな時、メグ先生のいる教卓に近づく者がいた。

………ためちだ。


 「先生……顔を上げて……」

優しい声色でメグ先生に語り掛ける。

 「ひぐっ………ひぐっ……た、ためちさん………!」

先生は不意にかけられた優しい言葉にかすかに安堵した。

だが……

 「ほら。せっかくの悔しそうなツラを拝めないじゃない…」

 「ひぐっ!!」

ビクッとメグ先生の肩が震えた。

 「こらこらっ!ためちさん!先生が怯えているじゃない!」

委員長がすかさず割って入り、状況の整理に努める。

ためちの性格の悪さにシノンは背筋が凍った……。


………………………………………………………………………………


 「なるほど、メグ先生のブラが盗まれた……と」

少し落ち着いたメグ先生の話によると、昨日の体育の時間の後、更衣室にあるはずの自分のブラがなくなっていた、ということだった。

 「………悪質ですね、どうやったら犯人を見つけられるだろ」

話を聞いた委員長がクラスメイトに助言を求める。

 「私に任せてもらえないかね?委員長……」

威勢よく立ち上がり声を発したのは『龍一鳳』という男子生徒だった。

なぜか軍服を着ている。

 「龍一鳳君……何かいい案があるの……?」

見た目が怖いせいか委員長が恐る恐る龍一鳳に尋ねる。

 「……こういったことは可能性をつぶしていくんですよ……」

 「(何か探偵っぽい)」

シノンは相変わらず不干渉を貫いて状況を見守る。

 「まず事件性から男子が犯人となるでしょうね、ほらこれで半分だ」

 「………確かに。でもここからは推理しようがないわ……」

 「いいえ委員長。メグ先生のブラは授業中盗まれたんです。これだけで大分絞り込める」

 「……どういうこと?龍一鳳君」

訝る委員長の問いに余裕を見せる龍一鳳はさらに饒舌を並べる

 「犯人は何かしらの理由でその授業から抜けるしか犯行ができない。つまり昨日の授業の様子を精査すればこの事件の真相を解き明かすのは容易……」

龍一鳳の言うことに皆も納得しつつあった。

このまま事件は解決すると誰しもが思った。

だが………

 「ちょっと待ってもらえるかしら」

割って入ったのはボンテージ姿の女、ためちであった。

 「なんだ女、なんか文句でもあるんか?」

ボンテージ姿の女と軍服姿の男が正面でにらみ合う。

 「ええ。なぜ生徒が犯人だと決めつけるの?」

 「ここは学校だ。不祥事が起こったのなら生徒が原因になることが多い」

 「あなた馬鹿ね。そんな浅い考えで推理されちゃ困るわ」

 「……女ぁ。女のくせに大事な話し合いにまざるんじゃねぇ……」

 「古い考え方ね。あくびが出るわ」

そう、龍一鳳も言わずもがなアウトゾーンの人間なのである。

一言でいうと『右翼』だ。

個の思想や主義を貫く危険な奴なのである。

 「…………」

 「…………」

二人は言葉を交わさずにらみ合う。

シノンはこの空気に耐え切れず、思わず隣の席の翠星を見た。

 「シュゴーーーー!!シューゴーーーー!」

翠星が握っているのはよくイラストでデッサンに使う石こうの人形だった。

 「(レゴだけじゃないんかい…てか怖いよ!)」

場違いも場違いだが馬鹿が一番最強なのかもしれない。

忌々しい……とシノンは机に伏した。


そんな中、委員長が申し訳なさそうに手を上げ申し出た。

 「そういえば、昨日の犯行時間にちょうどシノン君が授業を離席してたよ…」

 「!!?」

ボンテージ女と軍服男に集中していたクラスメイトの目が一斉にシノンに向けられる。

同様にためちと龍一鳳もシノンを見た。

初めて存在を認識したみたいだった。

シノンは生まれて初めて大多数の人数に見られ、パニック状態になった。


シノンの喉が「ヒューヒュー」と音を鳴らし始めた時

翠星は掲げていた石こう人形をゆっくりと下ろし、シノンを見た。

じっとシノンの顔を覗く翠星のその瞳には全く感情がこもっていなかった。



続く

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