第四章
小さい体で何時間も拭き掃除をすると流石に疲れ、椅子に座って休む。家の中はだいぶ綺麗になり蜘蛛の巣だけは、高いところにあるので取れないままでいるが致し方ない
水が入っていた桶は休む前に水を捨て、川で桶を洗い外に乾かすよう置いてある。
家を掃除して気づいたが、不思議なことに木の中にしては虫が余り見当たらないのだ、普通虫がいそうな気がするが…この世界ではこれが当たり前なのだろうか?虫が苦手だからありがたいけれど
自分の体を見ると、掃除をしていたせいか身体が酷く汚れて服にも埃がくっついていた
「シェリーお昼出来たわよー」
お昼が出来たらしく私は「はーい!」と返事をしてリビングに向かう
ママが私を見て「ご飯の前にまず身体綺麗にしましょうね。」とあらかじめ水を汲んで沸かしたのか、先ほど私が使った桶よりも大きい桶にがお湯が張ってあり 傍には身体を拭く用の布と服が置いてあった。
ゴムで結んであった髪をママがほどき「1人でできるよー」とは言ったが「良いからママに任せなさい!」と髪を大きめの桶につけて、髪を洗い布で身体を拭くのを手伝ってくれた。
新しい服に着替えて、お昼が用意してある場所にママと一緒に向かう。
ママが椅子に座り、向かい合わせで私も椅子に座る。そこで先ほど忘れていた大事なことを思い出した。
テーブルを見れば焦げたパスタが皿に盛ってあり、朝とは違うスープに焦げたものが浮かんでいた。
「今日はママも頑張って、シェリーの好きなパスタ作ってみたのよ!」そう自信満々に言ってパスタを食べるママ
私は、顔が引きつるのをこらえて「いただきます。」と手を合わせて、パスタを食べた。焦げたパスタを何とか平らげて、皿を洗っているママに「私も料理覚えたい・・」と服を少しだけ引っ張って話しかけたら「なら夜一緒にご飯を作ってパパを脅かそうか!」と笑って話してくれた。
その後は、皿洗いを手伝ったあとママに「散歩してくるー」と言って外を出た際、玄関からママが顔を出して「遠くに行かないよう早めに帰ってくるのよー!」と言われた。
散歩しながら考え込むのは勿論この世界の事
前世のことも気掛かりだが…
今はこの世界でどう過ごして生きて行けば良いのか、考え込むので精一杯だ
この世界について私自身知らない事が多すぎる。
本があれば自分で調べられると思ったが、都合よく日本語である分けがない…
ならばこの世界の文字を覚えないといけないから文字を知ってそうな人に教えてもらうのが手っ取り早いだろう。
散歩をしていると古びた教会が見え私は教会へと向かう
教会のドアを静かに開けて中に入る。
祭壇の上には女神像が祈りをささげており、ステンドガラスからは光が差し込んでいて神秘的な光景が目に映った
その女神像の前に1人祈りをささげている人が見えた。この教会唯一の神父様で、他には誰もいないようだ。
「神父様こんにちは」
私が挨拶をすると神父様は静かに私の方を向き微笑みながら話しかけてくれた
「こんにちはシェリー今日はどうしました?」
この教会で1人過ごしている神父様は村の人気者だ
人当たりが良くて誰にでも優しく困った人がいたらすぐに手を差し伸べるそんな人だ
「実は神父様にお願いがあって、私に文字を教えてください!」
何故神父様に文字を教えてもらうかというと村で文字が分かるのはこの人だと思ったから
神父様なら聖書を読むから文字を知ってるだろうしこの世界について詳しく聞くには手っ取り早いのだ
他に居るとしたら村に何度か来る商人さんだろう
一々村の人に文字の書き方を知ってるか聞いて回るのも変な話だし、使わなくても特段困らないから知らない人の方が多い。
神父様は少し驚いた後「文字ですか・・それは構わないですがどうして急に?」と私に話しかけた
「必要だから」そう一言いった私に対して、深く聞くことはしなかった。
神父様は、私に少し待ってくれるよう話して、数分もしないうちに何処からか石板を持ってきた。
昔神父様が使っていた石板だそうだ。
その石板を使いその日から私に少しづつ、文字を教えてくれた。
日が暮れたところで私は神父様にお礼を言って、家路に帰る。
玄関のドアを開けて「ただいま!」と家の中に入り、桶で手を洗ったあと夕飯の手伝いをする。
ママに言われた通り野菜を洗い皮むきはママがやってくれた。
傍で野菜を切るやり方をママに教わりながら切った野菜を鍋にいれる。
焦がさないよう鍋の火加減をママが見ていないときに調整した。疲れたが無事に焦がさないよう夕飯を作り終えた。
その日パパが珍しく早く帰ってきて、家族3人で一緒に夕飯を食べた。
ママが、私が今日掃除をしたことや料理を手伝ってくれたことをパパに嬉しそうに話していた。
「シェリーは、掃除も料理もしてくれたのか凄いなー!」と笑うパパに対して
ママは「シェリーは将来いいお嫁さんになるわね~」と笑った。
それを聞いたパパは「シェリーはどこの馬の骨とも知らん奴に渡さん」と真顔で言ってママは呆れ、私は少し苦笑した。
前世の私では考えられないような家族愛で、少しくすぐったかったのは言うまでもない
その日の夜布団に入って、色々なことがあった為か、すぐに眠りに落ちた。