第二章
味気ない朝食を食べ終え、ママから「寝なさい。」と言われたが、今更寝れるわけもなく少しでも掃除しようと思ったが・・・
箒は見当たらないし雑巾もない。仕方がないので要らない布で床を拭くしかないと思い布を探す
水に至っては水道水もなく
外の川から木の桶を使って持ってくるしかないので不便だ。
布を探していると外からママの話声がした。窓から外を覗くことは残念ながら今の背の小さい私には無理で、近所の人と話をしているんだろうと考えた。
ふと日本で過ごして居た記憶がよみがえる。小さいころの私、シェリーとしての私と同じぐらいの歳だろうか
公園でよく周りにいた子供たちと元気に遊んでいた。
暗くなってくると他のママ友と話しをしていたお母さんが、妹を抱きかかえながら私の所にきて「ほら!いつまで遊んでるの家に帰るよ。」と言って、私の手を引いて歩く まだ遊びたりない私はお母さんに対して、「いやだぁー!帰りたくないもっと遊ぶー!」と何度も駄々をごねて家に帰ったのを覚えている。
帰り際には、駄々をこねるのも諦めて、無言で歩きながらふとお母さんの顔を見れば疲れきった顔をしていた。
母は家につくと台所に行き夕ご飯の支度をして、私は妹と一緒に絵本や玩具を出して遊んでいた。
夕飯が出来ると「いつまで遊んでるの早く片づけなさい!」と何度もお母さんに怒られたものだ。
お父さんは帰りが何時も遅く、私達はお母さんと夕ご飯を食べて風呂に入り妹と一緒に眠る。
たまたま私が夜遅くにトイレに起き出し、お母さんとお父さんが言い争ってるのを何度か見てきたが、今思えばあの頃からすでに家庭崩壊していったんだろう。
私も妹も少しずつ大きくなって母方の親戚に預けられることが多くなり、お母さんに似ている妹は可愛がられていたが、父に似て可愛げのない私に居場所はなかった。
親戚の人達に嫌味を言われながらも私は何も言わずに黙って過ごしてきた。
中学に上がった頃には親の離婚が決まり、妹はお母さんについて行き 私はお父さんについて行った。
仕事一筋なお父さんが、祖父と祖母に私を預け、上手くやって行けるのか不安だった私に対し、祖父と祖母は暖かく出迎えてくれたのが何より嬉しかった。
それからは、仲のいい祖父と祖母に良くしてもらいながら日々を過ごし、高校に上がった頃に祖父が亡くなり後を追うように祖母も亡くなった。
お父さんは「家を売り払うから私にアパートで暮らすように。」と話をしたが「祖父と祖母が暮らしてた家で暮らしたい。」と言った私に「・・お前の好きにしろ。」と言ってくれただけで、それからは何も言わずに仕送りをしてくれた。
社会人になってもあの大きな家に1人で暮らしていたが、あれからどうなったのか知る術もない。
昔の事を思い出しながら布を探していると如何にも使えなさそうなボロボロの布を見つけた。
これで拭き掃除ぐらいはできるだろうと思い
今度は桶に水を汲むため外に出る。
すぐ近くに穏やかに流れる川が見えるが、前世を思い出したせいか外の景色を見て眩暈がする。
目の前に広がる景色は色鮮やかで
そびえ立つ大きな木にはドアや窓がついており、私の家もそんな感じで本当の意味で木で出来ている。
空は大きな岩の塊が遥か上空に飛んでおり熱帯魚みたいな綺麗な魚が目の前に沢山泳いで・・飛んでいるのだ。
眩暈起こさすなと言うのが無理な話である。