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序4 知らないで居ること故の平行線

お相手入れ替えです。

諸事情ゆえに。

少なくとも、わかる人にはわかる感じ。


 私はね、君にどう思われてもいい。

 どう思われても、君が存在していることが。

 この私の幸せなのだから。

 だから、この蝙蝠のようなこの立場にいるんだ。

 世界のことわりに、逆らっても、君が居なくなって欲しくないから。

 だから、君は動かないで欲しい。

 どうか、君は動かないで欲しい

 彼らが呼び出され始めた以上、事態は坂道を転がるように悪化してしまう。

 だけれど、君に、居なくなって欲しくない 道化に堕ちた黒き死神の微かな願いだから。

 唯一にして、誰にも明かさぬ願いだから。


                とあるの黒衣の隠者の言葉。

  








 ―――白の賢者の領域より出て数時間。


 「酔えもしないのに、酒が飲みたくなるのは、人間を捨てきれない証なのかな。」

 数時間後、学園一高い塔の屋上には、ラム酒やジンなどの空になったフルボトルが、数十本床に転がっていた。

 少なくとも、この数時間という短時間で、一人で且つ、肴無しで、飲んだのだとしたら、人間なら間違いなく、病院行きではないかと思う。

 むしろ、病院に行く前に、天国に逝っているのではないかと言うような量だ。

 と言うか、人間を名乗っているなら、おとなしく天国に行っていろという量である。

 それなのに、屋上の縁に座るスキアーは、顔を赤くすらしていない。

 素面と言われれば、納得してしまいそうだ。

 それは、昔からすら変わらない。

 「・・・手痛く噛まれたようね。」

 後ろから声をかけられた。

 腰を超えて真っ直ぐに伸びる白銀に輝く髪と血よりも紅い瞳に、黒いミニドレスに黒と赤紫のフリルとレースをたっぷり飾り、赤い裏地の黒マント。

 年齢は、十歳を幾らか超えた・・・ヴィオラより若干年下程度の少女。

 少女の年齢で時を止めた真祖吸血鬼ノスフェラトゥ

 名乗っている名前をジュリと家名を名乗らない。

 他に名乗っても、ジュリエッタなど、「ジュリ」であることに拘っている。

 《大崩壊マニュス・ペリオドゥス》以前から生きているらしい数少ない夜族だ。

 基本的に、スキアーは、彼女の事は嫌いではない。

 千年前の故郷である異世界に置いて来た親が向けてくるようなそんな感情を向けてくるせいだろうか。

 そして同時に、似て非なる平行線であることを知っているからだ。

 かつて、誰かを身を焦がすほど愛し。

 かつて、その誰かを人間によって殺され。

 かつて、その殺した人間を屠り尽くし。

 かつて、引きこもるよう様に隠遁していた。

 違うのは、ヴィオラーテ=アルジェントに執着しているかどうか。

「それでも、好きなのだから世話ないねぇ。」

 そうして、もう一つ違うのは。

 どのような形であれ、その愛した誰かが、今も在るか無いかだけである。

 スキアーは確かに、あの子も、セレンも好きだった。

 だけれど、愛したのは、『白き賢者』。

 拾ってくれた黒砲姫に執着はしたが、本人には言えなかったが、愛したのは、『白き賢者』だけ。

 セレンはあくまでも、家族のそれだ。

「それが、恋なのよ

 落ちてしまえば、種族も立場もどうでも良くなるの。

 相手の命が、私達よりも短いことも含めてね。」

 我が子に向けるよう愛おしそうな表情でジュリは、忠告のようにスキアーに言う。

 しかし、彼は聞いていないようで。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

  初めは、家族だったんだだよ。

  或いは、友人、日常に無くてはならない人。

  それがあの事故じみた夜で、自覚してしまったんだ。」

 「この世界は、爵位持ち・・・特に、伯爵級以上には優しくないね。

  いや、人族以外には優しくない。」

 「うん、だけど、恋をしてしまった。

  告白する間もなく、彼女は殺されてしまったけれど。」

 出会った日も、死に別れた日も、雨が降っていた。

 死に別れたあの日、スキアーは泣けなかった。

 その代わりの雨だったのかもしれない。

 遺体が残った伯爵級以上は、死後も学園に利用される。

 最後には肉体すら残らない。墓は残るが、ただの石だ。

 それに、抵抗して、彼女が持ちうる力を全て注ぎ込んで、《霧の縛呪空間ミスティ・チェーンゾーン》を作り出したは、そこに立て篭った。

 リュリュレイアの意図は誰にも分からない。

 当時、稀代と呼ばれ、今の白魔法の基礎を作った賢者。魂と肉体まで利用させないと、引きこもったのだ。

 ジュリがそそのかしたのではあるけれど、それは誰も知らない。

 だから、スキアーを含めた他の四人の肉体は、あの場所にあるのに、彼女だけは其処にいない。

 「・・・貴方は何を目的とするの?」

 「さあ、どうなんだろうね。

  私があの頃の私のままという保証はないからね。

  ただ、過去のむくろが過去の残骸ざんがいを糧に動いているだけなのかもしれないからね。」

 「長過ぎる・・・・その方法いきかたを君は、後悔して・・・・いるの。」

 「後悔はしていないよ、残念ながらね。出来る立場でもない。

  ・・・僕や《初代管理人》、マルコを含めてのとがだよ、後悔なんてできる筈もない。」

 「難儀だね、全く、人間と言う奴は。」

 「だから、戦争は無くならない、と言うことだよ、ジュリ嬢。」

 「・・・・・・・・・・・・君は君の意思で果てるといい。」

 何か思うところあったのか、それだけ言い残すと吸血鬼は、霧になって掻き消えた。足音からですら内心を読まれない為の様に。

 ――――千年だ。

 たかが、千年。

 言葉にすれば、数文字で終わるその時間。

 だけれど、人の生まれでのそれは長い長い時間だろう。

 リュリュレイアの元へ足繁く通ったのは、幾らでも理由はつけられる。

 だけど、言葉を弄さずとも、理由は簡単だ。

 だけど、リュリュレイアに会えるだけで良かったんだ。

 「・・・・・・・いつからなんだろうね、君が『友人』ではなくなったのは。」

 いつからかは解らないけど、スキアーに取って、彼女は家族ではなくなっていた。

 それ以上の存在になっていた。

 あの焦燥を。

 あの切なさを。

 あの執着を。

 あの愛おしさを

 『友人』への『家族』への感情だと言ってしまったら、『恋愛』なんかないんじゃないかって言うくらいに、焦がれていた。

 「それだけで、リュリュレイアを騙して抱いてしまうと言うのは、我ながらガキ臭いとは思うけれどね。」

 カンケイを持ってしまって、改めて気付いた。

 自分が、リュリュレイアに恋愛感情を抱いていると。

 そうスキアーは、自覚してしまった。

 「それでも、今の彼女の立場は危うい。」

 だから、スキアーは、学園側に介入されないように立ち廻った。

 屈辱的な目に遭おうと、彼女に居なくなって欲しくなかったから、

 だから、彼女には、動いて欲しくない。

 そうすれば、学園が動く事はないから。

 「・・・・・この《黒き死神》とか、呼ばれた身で、『あの子』頼りとは情けない。

  大切な人を護れないとは・・・・・・・」

 でも、もう少しでそれも終わるかもしれない。

 沈黙が落ちて、しばらく。

 音が欲しかったのか、スキアーは呟く。

     


 「それでも、私は僕は、意志を貫くだけかもしれないね。

  ・・・・・・だって、幽霊だもの。」











 

しっかし、もう一話増えるかのう。

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