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序2 秘され密談。

差し替えして、この一話。

反映されるの結構後だけど。

五枚目か・・・最低、四枚目がヴィオラの手元に着てからだね。

 


何処でもあり何処でもない、仄暗く闇がたゆたう空間。

 その何処かに唐突に芝居に造られるようなハリボテのように古めかしいデザインの洋室が浮かんでいた。

 床は白、それ以外はカーテン以外ダークな色調で纏められている明治辺りの日本風な洋館の一室を想像してもらえれば、まず間違いない。

 その中央にに黒いクロスが掛かったテーブル。

 置かれるのは、白い斑な大理石の盤と黒曜石と水晶で造られた駒のチェスセット。

 そして、向かい合う二人のそれぞれ好みの赤ワインと紅茶が、それぞれ入ったグラスと白磁の茶器。

 向かい合っているのは、男女。

 男性・・・少なくとも、男性に見えるほうは、金髪金眼でそれと肌以外は、闇に埋もれそうな黒尽くめの年齢不詳だが若く見える。

 女性は、座っていても解るほどの長身で、青く輝く髪と夕焼け色の髪でブラウスにロンジー男巻きで青い布スカ-ト姿をしていた。

 そして、明らかに女性は不機嫌そうだ。

 反するように、男性はニコニコと笑みを崩さない。

 「・・・で、萩行はんぎょう、何故呼んだの?」

 「というより、見当付いてるよね?」

 「・・・言い換えるわ、あのルート修正しろっていうなら、逆に人間滅ぼすわよ?

  エイレンさんが命を掛けて造ったアレや封印していたアレを滅茶苦茶にした子達がいる世界よね?

  あの世界の人間が滅びるのも、自業自得じゃないの。むしろ、滅びろ。」

 無表情でそういい捨てる女性に、萩行と呼ばれた男性は赤ワインを一口嚥下する。

 女性の放つ殺気も春の涼風のように彼には何も、もたらさない。

 答える気が無いのだろう。

 それもあって、十数手分無言でチェスの盤面は進む。

 「でも、君って()()には優しいじゃない?」

 「・・・甘いだけよ。」

 「別に僕は、あの世界は娘が関わらないからどうでもいいんだけれど、君は違うだろう?」

 やっと返した萩行の言葉に、女性は眼をすがめて皮肉げに言葉を返すが、それすらも止められる。

 女性自身は、とある地球系列の世界の生まれだ。

 多少の違いを置いて置いても現代としては変わらない。

 ただ、《御伽噺の幽霊》を宿してしまったが故に色々と数奇な道筋を歩んでいる女性だ。

 年齢に比しても、落ち着きすぎるまでに落ち着いている。

 ただ、今は殺気を隠そうともしていないが。

 チェスの手は、喋りながらも止まらないし、女性の殺気と萩行のニコニコ笑顔も止まらない。

 女性の逡巡を盤面すら哂うように、萩行優勢で進む。

 ・・・女性は知っている。

 萩行が関わらせようとしている世界は、もう一つのこの世界だ。

 今から約九百年後、道を多く間違えてしまったルートの自分の世界に極近い世界だと。

 ・・・女性は知っている。

 そのせいで、バランスが崩れ、向こうで起きた《大崩壊マニュス・ペリオドゥス》の影響でいろんなものが・・・女性の長命種の知り合い含め、向こうに行った。

 ・・・その長命種の女性が、普通の人間として逃がした使い魔二人も、何の因果か呼び戻されるように召喚され、あの世界に居ると言う。

 そして、彼女を迷わせる最たる理由も女性は理解していた。。

 数年前の《チャイルド.・クラン.》との決戦で死んだ師匠の一人、エイレン=マイセリアル。

 その彼女も、《御伽噺の幽霊》であり、その繰り返した生の中で封じた《占い札の精霊》達。

 彼らは、数百年前その時の彼女の最初の使い魔で何よりの友人だった。

 だけど、過去世のエイレンは封じた、それもあの世界に流れ・・・そして、利用された。

 エイレンは、封印したことを後悔していた。

 過去の自分ではない自分とは言えだ、そして、無茶を重ねた結果彼女は死んだのだが。

 そのエイレンが、最後まで封印された子らを案じていた。

 ・・・・・・そのオリジナルの彼らに重ねるように、『生身の人間』を材料にあの世界のあの男は造り出した。

 或いは、そのまま、使い魔に加えられた面子もいるらしい。

 何枚かは、萩行と対峙するこの女にとっても友人であり、同時に彼女自身の悔恨になっている。

 「条件は?貴方に利益が無いなら普通は手出ししないでしょう?」

 「・・・あこの世界の成り立ち知ってる?」

 「一応は、ね。」

 「その創生の女神の月の方、ラブライアからの直接の依頼。

  ・・・一応ね、あの子の運命変えるなら、手段は多いほうが無難だからね。」

 その言葉に女性は、明らかに顔をゆがめる。

 数年前に数ヶ月だけ一緒に過ごしたあの少年のことを思い出しているのだろう。

 彼との出会いにも、同じ月女神が関わっていたのだから。

 「また、あの世界のカミサマから?

  ホント、カミサマってのはどこの世界でも、人任せのいい加減なのは変わりないのね。」

 「君もそうじゃない?」

 「元、よ。転生重ねすぎてちょっと優秀な能力者な程度だもの。

  《御伽噺の幽霊》は、もう、ただの人間よ、能力者ではあるけど、もっとすごいのはいないわけじゃないし?」

 「・・・で、どうするの?」

 「エイレンさんには、教えるな。

  それが、条件。教えれば、さらに無茶をするだろうから。」

 「(甘くて優しいねぇ、変わらずに。)」

 内心で、ニヤニヤしつつも、その笑顔を崩さない男性。

 もう、話は終わったとばかりに、日時がはっきりしたら知らせろ、とだけ言った女性に一つ最期に爆弾を落とす。

 「後ね、その世界って魔力量でランク付けされてるんだよね。」

 「・・・一ついい?

  能力者としては、上がいるだろうってのは承知してる。

  だけど、私達ほとんどの《御伽噺の幽霊》は、四桁以上の転生を記憶を保持した上で繰り返してるのに。

  全部全部じゃないけど、前の魔力霊力を受け継いでいるから、量だけは馬鹿みたいな量なんだけど?」

 参考までに言うなら、彼女は一番低下している時期であっても、人族歴代100位ぐらいには入るだろう。

 その程度には、前世を保持して転生して受け継がれる魔力が微々足るものであるのに多いのは単純に数が多いからだ。

 「一応、基本公表されるのは人間だけのランクなの。

  ネコミミケモシッポつけない?」

 「確認するけど、魔力量が多くても不思議じゃない獣人か亜人種は?」

 「エルヴがオススメだけど、基本的にアレって《神羅の森》だったっけね、そこに引きこもってる連中だしね。

  一応、旅してるような変わり者とかもいないわけじゃないけど、目立つよ。」

 「二十歳超えてのネコミミってかなり痛いんですが?」

 こめかみに青筋浮かべて、女性はわざわざ敬語・・でそう言った。

 笑顔では在るが、逆にそれが怖い。

 それでも、萩行は想定範囲内だったのか、或いは交渉の為の無茶言いだったのか代替案。

 「んじゃ、キツネ娘でどうだ!!

  髪色に合わせて、銀色のミミとシッポで。」

 「・・・・・・いやさ、魔力霊力多いよね。

  で、猫やキツネ系統って、魔力が生来種族的に多いからなじめるのはいいけど・・・。

  本数増えるわよね?」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 二人とも、ニコニコ笑顔ではあるけれど、萩行は朗らかに、女性は目が笑っていない般若笑顔でそれぞれ見つめあう。

 もしも、首から下だけを見るならば、女性が萩業の顔に手を添えていることもあり、ラブシーンにしか見えない状況だ。

 「・・・・・・そうだねぇ、九本行くんじゃない?」

 「逆に目立たない?」

 「うーん、詳しくは投げるけど、今の人族のランキングって上位十位が千年前五英雄と銀色の一族なんだよね。

  一応、十位から百位までは闇領なんかも混じるんだけど。」

 「あー、異世界人で多少補正付いても、100位以上は段違いだものね、あの世界。

  何人か、所謂、異世界の勇者がいたっぽいけど、上位十人に肉薄はしても勝てないもんね。」

 「そそ、そ、だから、亜人種の方が色々と楽なんだよ。」

 此処までの話を聞いて眉根を寄せて、女性は思考を巡らせる。

 ついでにではないのだろうが、萩行の情報の裏取りの為に、極めて無意識にかすかな接点を持って向こうの異世界と世界を繋ぐ。

 そして、初めて気付いた。

 いや、知ってしまった。

 その事を意識すると女性の顔から表情と血の気が消えた。

 「・・・ねぇ、萩行。」

 「ど、どうしたの、ディスティア?」

 此処に至って、萩行は女性の名前をやっと呼んだが、それはどうでもいい。

 属性ゆえか、或いはその巨大な力ゆえか、制御する気が無い力のせいか物理的に気温が下がる。

 「・・・知っていたでしょう・・・・・・・・・

  あの子が、ベッドで死ねなかったことを、ジンエイさんに殺されていたことを。」

 氷で女性の笑顔を掘り出せば、今の彼女の顔になるだろう。

 そして、普段『無表情』と言っているのは、無表情と言う表情なのだろう、と言うぐらいだ。

 明らかに、彼女は口の端が吊り上がっていても笑顔に見えない表情が消えた顔をしていた。

 あの子・・・エデルバルト、今の闇領の帝国を造った千年前の歴史の闇に葬られた世界の英雄だ。

 ディスティアは、その彼の幼いころに預かった。

 その子がまだ十歳で、祖国を滅ぼされ喪って立ち直るまでの間だ。

 甘やかすだけではなかったが、彼女にしても懐に入れて暮らしていた、

 モチロン、王というものがベッドで死ねるようなものではないとは知っているけれど。

 だけど、知っている使い魔の転生体に殺されているとは思っていなかったのだ。

 「・・・一応、ね。」

 「ねぇ、萩行、条件もう一つ。

  未来のジュリさんもあっちに行ってるのも知ってるけど、今の幽霊のジンエイさん、消してもいい?

  勿論、チャンスがあればだけれど。」

 「・・・・・・解った、私は手出しをしない。」

 「うん、じゃ、またね。

  一応、仕事もあるし、情報も聞き出さなきゃいけないから。」

 「オレンジジュースを絞るのかい?」

 「ええ、オレンジを搾りかすにするの。」

 そう言いながら、ディスティアはこの仮初めの空間から退場する。

 自分が原因とはいえ、彼女の本気に触れたせいか、縁の無いはずの背中に冷や汗を感じる。

 また、無関係ではあるが、これから彼女に搾り取られるオレンジに・・・彼女に捕まった下っ端に心底同情しよう。

 下手な話、回復能力を持つ人間が拷問尋問してはいけないと思うんだ。

 一応、増血剤があるとは言え、普通は其処までしないから。

死が具体的に見えてるのに死なせてもらえないのだから、喋らざる得ないのだから。

 喋れば、少なくとも、死なせてもらえるのだから。

 「・・・・・・姉さんだけ送るつもり?

  ストッパーは要らない?」

 楽しげな声音でありながら、氷に触れたような冷たさも含まれた声が響く。

 次の瞬間、初めからいたように、一人の青年がいた。

 白いふわふわのウサギの尻尾を毛束にしたようなまとめ髪を膝丈ウィンドブレーカーのフードに押し込めた青年。

ディスティアより背が低いが、一般的な日本人よりは高い身丈。

とりあえず、呼び名をラビと言う。

 裏稼業で、超能力の関係から、情報屋よりの運び屋だ。

 そして、ディスティアの実弟でもある。

 普段は、外見と相まって女と間違えそうなそんな声音だったが、今はハスキーな男性声だった。

 ・・・ハスキーと言うのも、女性の低い声の形容詞なのは気にしちゃいけない。

 作り声なのは、仕事中だからだろう。

 「良いのかい?」

 「姉さんになんかあるほうが怖いし・・・。

  《翁》と《占い師》も、一応、弟の眷属の関係で憂慮してんだよね。」

 「・・・《語り部》か。」

 元はとは言え、『自分が都合の言いように《御伽噺》を廻せるよう』、作ったのが彼らである。

 それは、渾身の封印が、《大崩壊マニュス・ペリオドゥス》により緩んでしまった。

 封印を箱とするならば、その箱ごと向こうに流れ、それを利用されて作られたのが向こうの世界の彼ら名のだ。

 「うん、そっちの世界風に言えば、《占札使鬼フォーチュンテラー・スピリット》の32枚。

  あんまり、関係ないし思うところの無い僕でも、壊したいねぇ?」

 「となると、《翁》さんとそよぎさんとナツメちゃんも?」

 「《翁》、と言うよりは、ルキかな。

  ちびっこの癒しは貴重ですってことで。」

 「・・・私の、負担大きくなってません?」

 「う~ん?嫌がらせ込みだからね。

  姉さんもだけど、僕もファミ・コンだから、一応、怒ってんの。

  エデル坊やとは、付き合い薄かったけど、弟みたいなもんだし、ジンエイさん殺すのは、あんまり止める気ないし。」

  「わかりました。」












  こうして、当人達以外は知らない会話がなされ、約定が結ばれた。



  ならば、一つの物語なのだろう。





 

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