大剣
「がはははははははははは!!!!!!お前がベイとか言う奴か。意外とひょろいなぁ!!もっと筋肉をつけんといかんぞう!!!!!がははははは!!!!!」
・・・・誰ですか、このおじさん・・・。朝になって、サラサと、アリーといつも通りに登校していたら見知らぬおじさんに声をかけられた。・・・というか、とにかくデカイ。身長も、腕や足も太い。そりゃあ、こんな人から見たら、俺なんてまだまだひょろいだろう。腕なんて、普通の人の二倍くらい太くて、ムキムキなんだが・・・、一体何者なんだ。背中には、とても普通の人が扱えそうもない大剣を背負っている。あれを振り回すなら、この腕の太さも納得だな・・・。
「・・・・紹介しよう、ベイ。うちのお祖父ちゃんだ」
「おう!!ガンドロス・エジェリンだ!!よろしくな、坊主!!!」
サラサは、何気なく、おじさんの紹介をする。・・・・え、ということは、エジェリン家の当主?
「しかし、お祖父ちゃんは何とかならんもんかなぁ・・・。俺はまだ65だぜ・・・」
「と言われましても、家系的にはお祖父ちゃんなんですから、仕方ないじゃないですか」
「まぁ、そうだけどよぉ・・・・」
「・・・しかし、お祖父ちゃん。用があるから帰ったんじゃなかったんですか?」
「ああ、そうなんだよ。ちょっと、行ってきたら思ったより早くおわってな。ついでに、孫娘が惚れたっていう男でも見てやろうと思って、ちょっと待ってたってわけだ・・・」
確かに、この道は多くの学生が学校に来る上で通らなきゃならない道ではあるけど、そんなところで待ってるなんて、結構、暇なんだろうか?
「うーん、しかしお前が惚れたって言うにしては、ちょっとひょろすぎじゃないか?確かに、修羅場はくぐってそうな体つきしてはいるけどよう・・・」
「お祖父ちゃん、ベイは魔法使いです。それで、こんなに鍛えているんですから、只者ではありません。恐らく、上級・・・・・、いや、聖魔級ぐらいの迷宮にも潜ったことがあるかと思いますが?」
!!!!!サラサ・・・・。その考えは、どんぴしゃなんですが。見ただけでそこまで分かるものなのか・・・?俺には、そこまで分からないから、俺もまだまだなのかもしれないなぁ・・・・。
「ほう、と言うとサラサ、お前と同じくらいの実力はあるってことか?」
「いえ、アリーさんが言うには、すでに私では勝てないレベルだそうです・・・」
「おお!!!それはすげぇな!!!ガキの頃から鍛えに鍛えたお前より上とは、普通に感心するぜ。それは、お前も気になるわな!!」
「ええ。まぁ、それだけでもないんですが・・・」
「おお!!なんだよ、色気づいて・・・!!孫の成長を見たようで、嬉しいような、悲しような・・・。これが年を取るってことか・・・・。俺も若いつもりだったが、これがお祖父ちゃんってことなんだろうなぁ・・・」
ガンドロスは腕を組んで、感慨に浸っている。というか、今、サラサが聖魔級と渡り合える実力があるって言わなかったか?・・・・なんか想像以上に強いんだな、サラサ。12でそれとか、普通じゃない・・・。
「サラサって、聖魔級迷宮に行ったことがあるんだ・・・」
「うん?ああ、まぁな・・・・・」
「そうだぜ!!俺がガキの頃から連れてってやってたからなぁ・・・。最初は、何も出来ないガキだったが、いつの間にかこんなに大きくなって・・・・。おっと、いかん!!!こんなこと考えてたら、急に老けた気分になるぜ。危ない危ない」
「・・・・まぁ、そういう訳で、昔から聖魔級相手を目標に練習していてな。一人でも、何体かは倒せるようになった。まだまだ、動き慣れしたやつだけだけどな」
「いや、それでもすごいよ・・・」
そう言うと、ガンドロスが俺の肩を叩く。
「おうおう、わかってるじゃねえか!!うちの孫はすごいだろう!!!・・・つまり、そんな孫娘の夫は、それより強い神魔級魔物くらい倒せねえと、いけねえと思うんだが・・・・。お前、出来そうか、坊主?」
「神魔級・・・・、ですか・・・・」
「当然よ。ベイなら朝飯前だわ・・・!!!」
「ほう・・・、本当かい、嬢ちゃん?」
アリーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!そんなこと、思ってても人前で言わないで!!!!!実力を隠してる意味が、全く無くなっちゃうじゃないか!!!!!
「私の夫よ?神魔級程度、障害にもならないわね・・・」
「ほうほう、言うねぇ・・・。ま、それだけ嬢ちゃんが、坊主を信頼してるってこったなぁ・・・」
ガンドロスは、うんうん頷いている。まぁ、普通12で神魔級相手にできるとか言われても、冗談として流すよな。普通。ガンドロスも、今のアリーの発言は冗談だと思っているだろう。
「まぁ、別に今すぐ神魔級と戦って見せろなんて言わねぇよ。坊主は結構、実力もあるみてぇだし。もう何年か鍛えれば、一匹ぐらいはやれるかも知れねぇなぁ・・・」
「だから・・・!!!むぐっ・・・!!!」
俺は慌てて、アリーの口を押さえた。勘違いしてるんだし、もうこのまま、勘違いしてて貰おう。
「おっと、だからって勘違いしちゃいけねぇぜ、坊主。神魔級は最低ラインだ。もし孫娘を本当に、嫁に欲しいってんなら・・・・」
突然、ガンドロスが背中の剣を振りぬく。強烈な斬撃によって、地面ごと、遠く離れたところにある木が、真っ二つに切れ、倒れた。
「この俺を倒す気で鍛えてきな・・・!!!・・・なんてな、がはははははははは!!!!!!!!まぁ、本当にやる気があるってぇなら、いつでも受けて立つぜ!!!!」
「ベイなら今すぐあんたをぶちのめして・・・!!!!むぐっ!!!!!」
また、俺はアリーの口を押さえた・・・。
「おっと、そろそろ別の仕事に行かないとな・・・。じゃあな、サラサ・・・。嬢ちゃん、坊主、サラサをよろしく頼むぜ!!!!じゃあな!!!」
「はぁ・・・、またね、お祖父ちゃん・・・」
「ぎぎぎ、ベイのほうが強いのに・・・・!!!」
「落ち着いて、アリー・・・!!!」
剣をしまい、背を向けて、ガンドロスは歩いて行く。途中で、振り返り・・・。
「坊主!!!!!サラサの件は関係なく、今度戦おうぜ!!!期待してるからな・・・!!!」
そう言って、ガンドロスは離れて行った。
「なんか、豪快な人だね・・・」
「ああ、あんな人なんだ・・。うちのお祖父ちゃんは・・・」
「昔から、都合のいいことしか聞かないわよね、ガンドロの爺さん・・・」
ともかく、時間を取られてしまったので、少し急ぎめで登校を再開した。しかし、神魔級かぁ・・・・。そろそろ、俺達も挑むべき頃合いかな・・・・・。よし、帰ったら、近くの神魔級迷宮を探してみよう!!俺は、そう思った。
次は、100回記念の特殊回です。