準備
「うん。やっぱり、ベイ君にも仲間になって欲しいわね。お願いアリーちゃん、ベイ君。一緒に世界を救いましょう?」
「何か、すごい大事なことをお願いしている割には、お願いの仕方が軽いわね」
そう言うと、う~ん、とアリーは腕組みをして唸なり始めた。何を考えているんだろうか?
「……まぁ、アホに付き合って死ぬのは嫌だし。付いて行ってあげてもいいわよ」
「え、本当?やった~~!!」
「ただし、条件があるわ」
「え、条件?」
アリーは、俺の隣に歩いてやってくる。そして、俺の腕に抱きついた。
「私とベイは、大会で優勝するからいいでしょう。でも、他にも何人か連れて行こうと思うわけ」
「他にも。……誰かしら?」
「そうねぇ。候補になるけど、サラサ・エジェリン、レラ・サルバノ、ニーナ・シュテルン辺りかしらね」
「え、ニーナ?」
「まぁ、彼女を参加させられるかは、ベイ次第だけど。有能な回復役は、一人でも欲しいところよね」
う~ん、サラサや、レラはまだ分かるが。ニーナか。危なくないだろうか。危ない気がする。
「う~ん、サラサちゃんや、レラちゃんかぁ。こっちでも声かけたけど、微妙そうだったのよねぇ~。連れてこれるの?」
「私とベイが言えば問題ないでしょう。取り敢えず、何人になるかは分からないけど、行く生徒の手続きは頼むわよ」
「うん、それぐらいなら全然大丈夫よ」
「あと、一つあるわ」
「あと一つ?」
アリーが、シアに歩み寄り、そっと耳打ちする。
「と、いうわけね」
「う~ん、難しいけど、出来る範囲でいいなら」
「それで構わないわ。でも、この件に関してのことは、最低限協力してもらうわよ」
「まぁ、協力するのも悪く無いから別にいいけど、あまり無茶なのはやめてね」
「……考えとくわ」
アリーは、また俺のもとに戻ってきて、俺の手を抱く。
「じゃあ、何か動きがあったらそっちから連絡しに来なさい。私達は、今日はこれで失礼するわ」
「アツアツだねぇ~、二人共。よし、引き受けた!!2人のために、お姉さん頑張るわ」
「ベイ・アルフェルト!!……次は、私が勝ちます!!」
「シュア、あなたじゃ無理よ。じゃあね、二人共。後はよろしく」
「む、無理じゃありません!!次は、こうは行きませんよ!!!!」
「あはは、じゃあ、またね。二人共」
俺は、アリーに腕を引かれ、2人に手を振って帰宅することにした。
*
「勝手にOKしちゃってごめんなさい、ベイ」
「いいよ。アリーが考えて決めたことだし。俺も、世界が滅ぶのは嫌だからね」
「ありがとう、ベイ」
アリーが、きゅっと、抱いている手に力を込める。う~ん、可愛い。
「……ところで、何でサラサや、レラ、ニーナまで連れて行こうと思ったの?」
「万が一を避けるためでもあるけど。複数人いたって事実があれば、皆を召喚しても言い訳ができるかなって思って」
「なるほど」
「それに、ベイの力になってくれそうな女性がいるなら、距離を縮めるいい機会になるわけだし(ボソッ)」
「え、アリー、今なにか言った?」
「……いえ、独り言よ。ふふっ」
アリーは、どこか楽しそうだ。なら、いいか。俺達は、そのまま雑談をしながら部屋に帰った。
*
「ご主人様。今日は、私の練習に付き合って頂けませんか?」
「ああ、うん」
部屋に帰って、皆を呼び出し休んでいると、シデンが座っている俺の膝の上に座ってきた。しかも、巫女装束じゃなく、シャツと短パン姿だ。上から眺めると、シャツからシデンの白い肌がそっと見える。う~ん、エロい。
「ふふっ」
俺の視線に気づいたのか、シデンは笑うと、俺に抱きついて肌を密着させる。
「ご主人様の、えっち」
「!?」
耳元で、そんなふうに甘く囁やかれた。しかも、そのままシデンは俺の耳を舐めてくる。
「レロ。ハム」
ゆっくり、優しく唇で耳たぶを甘噛してくる。うわああああああああああああああ!!!! なんなんだ、この幼女は!!!! あざとすぎるぞ!!!!
「でも、そんなご主人様が、好き」
「!!!!」
いやいやいやいや、いくらなんでもあざとすぎませんか!! これ、ミルクの入れ知恵かなんかじゃないんですか? ……いや、そうだ!! そうに違いない!!!! そう思うことで、俺は落ち着きを取り戻した。
「ああ、ありがとう。訓練だったな、俺は何をすればいいんだ?」
優しく、シデンの髪を撫でながら、俺は答える。
「次の進化で、私に何が必要かを教えて下さいませんか?ミズキ姉様に教えたように、何か特殊な職業のことや、水着などの私が知らない未知の知識でも構いません。少しでも、強くなるヒントを得たいんです」
う~ん、強くなるための知識かぁ。ミズキはニンジャだったからなぁ。だとすると、シデンは妖怪的な知識でいいんだろうか?
「じゃあ、適当に話すから、それで大事だと思うものを覚えていてくれ」
「はい!!ご主人様!!」
俺は、適当に妖怪の話をシデンに聞かせていった。
*
「……なるほど、面白いですね」
「どう、参考になりそうかな?」
「はい。幻術や呪い、なかなかに興味深いです。存在感を消すというのも、ミズキ姉様みたいで格好いいですね」
シデンは、自分の尻尾を手で毛づくろいしている。これが、シデンが考えている時の癖だろうか?
「ふむ、分かりました。ご主人様!!私、立派な妖怪になります!!」
俺の膝から降りて、シデンは決意表明をする。うん、進化の目処がたったみたいでよかった。
「取り敢えず、黄色と黒の縞模様の服を着るところからですね!!」
「いや、そこは真似しなくてもいいから」
シデンが、どんな進化をするのかこれから楽しみだ。あ、別に下駄も履かなくていいからね。