お昼
1年教室前に着くと、張り紙がしてあった。一人一人名前が書いてあって、この教室で講義を受けてくださいとなっている。自分の名前の書いてある張り紙の教室へと入り、あたりを見回す。特に、席は決まっていないようで、適当に座った。
「名前を見た感じだと、だいたい女子と男子が半々くらいかな・・・。1クラス、30人位ってとこか・・・」
「(ふむ・・・、1クラスの女子を全制覇するというのも、いいんじゃないですかね?ご主人様)」
ミルク、お前は何を言っているんだ・・・。
「(そんなに増えても、あたし達が困るだけな気がするけど?)」
「(まぁ、それもありますか・・・。ですが、せっかくのクラス分け。ここで何人か、ご主人様が気を許せる、力になってくれそうな人材を一人でも確保したいものです・・・。特に、ご主人様のあっちのやる気を高めてくれそうな女子なら、なおよし!!!!)」
ミルクは相変わらずだな・・・。しかし、人との繋がりを持つのは悪いことではない。ミルクの私利私欲はともかく、そんな気軽に話せる人ができれば確かに楽だな・・・。と言っても、俺は常に、9人近くにいる状態ではあるけども・・・。
「揃ってますかね・・・。えー、ではこれより、授業について説明を行います」
程なくして教員が教室に入り、説明を始める。配られた紙に書かれている通りに授業が行われ、そこ以外の空いている時間で、好きな授業に出ることが出来るようだ。上級生の授業でも、興味があるなら聞いてもいいらしい。その後は、学校のマナーや規則、生徒会の入会方法や、研究会活動のパンフレット説明などなど・・・・。説明で、昼まで時間を取られた・・・・。午後からは、屋外での軽い訓練らしい。集合場所を見た感じ、アリーが言っていたやつかな?取り敢えず、俺はアリーが作ってくれた弁当を食べることにした。
「お、ここの教室か、ベイ」
「おう、サラサ。サラサも弁当?」
「ああ、自分で作る習慣が身についていてな・・・。一緒に食べないか?」
「勿論いいよ。どうする、どこか移動して食べる?」
「そうだな。そう言えば、食堂もあるんだったか・・・。メニューを見に行きがてら、そこで食べるというのはどうだ?」
「じゃあ、そうするか。よし、行こう」
俺とサラサは、食堂に向かって移動した。食堂は離れたところに立っている、大きめの建物だ。内にも、外にもテーブルが置いてあり、所狭しと、多くの生徒が席に座っている。俺達は空いている、外のテーブルに座ることにした。
「ふむ、賑わっているな・・・」
「だな。料理のジャンルごとに、注文するカウンターも複数あるのか・・・。2階もあるみたいだし、これは通うのが楽しそうだ」
「見ろ、メニューがある。・・・・ふむ、これだけ料理の種類が多いと、目移りしそうだな」
「デザートもあるのか・・・。しかも、結構安いんじゃないか?今度、アリーと一緒に来ようかな?」
「その時は、是非、私も一緒にこさせてくれ」
「ああ、勿論いいよ。うーん、でも俺にはどんなメニューより、いい弁当があるから。それがあるかぎり、ここのお世話になることは無さそうだな・・・」
「アリーさんが作った弁当か?気になるな。参考に見せてくれ」
「ああ、じゃあ、開けるよ」
俺は包を解き、弁当箱の蓋を開ける。
「ほう、野菜も、肉も、バランスよく入っているな。見た目にも美味そうだ・・」
「アリーは、料理が上手いんだよ。この野菜にかかってるドレッシングでさえも美味い」
「少し、くれないか?」
「いいよ。どうぞ」
「ありがたい、では、頂きます。・・・ふむ、野菜を引き立てるように辛味と酸味が良く出ている。あっさりしているのに、食べ進めたくなる味だ・・・。アリーさん、お見事・・・!!」
「肉にかけても美味しいんだよなぁ・・・。これ、売り出せる味だよ・・・・。うん、美味い」
「私も、それなりに料理はしてきたが、まだまだだったようだな・・・」
「そう言えば、サラサの弁当はどうなってるんだ?」
「私のか、こんな感じだ・・・」
サラサが、弁当の蓋をあける。肉が中心で、少し少なめに野菜、ご飯が入っていた。見た目には、とても体力がつきそうな弁当だ。
「へー、美味しそうだな」
「そ、そうか?肉が多いから、あまり可愛くは無いが・・・」
「うーん、でも、体力がつきそうでいいと思うよ。午後からも、授業頑張れそうな感じのする弁当だ」
「うむ。確かに、その通りだ。しかも私は、結構食べる方でな・・・。量的に、これくらいボリュームがないと、ちょっと不安だ」
「サラサは、良く動きそうだもんな。運動にはエネルギー使うから、それぐらい食べても普通だよ」
「・・・・そういうことは、初めて言われたな。何かと、女性にしては多く食べるんですね、と言われたものだが・・・。そうか、これくらいでも普通か・・・」
「それに、食べないと力が出ないし。そっちのほうが問題があるよ。特に、量で気にすることはないと思うなぁ」
「うむ、そうだな・・・。これが私の普通だ!!それでよしとしよう!!」
「うんうん」
そうやって、俺とサラサは会話しながら、お昼を過ごした。そう言えば、午後からの授業は戦士科と合同でやるらしい。お昼からの授業の話をしたが、どうやら、サラサとは集合場所が違うようだ。別々に、授業を受けることになるのかな・・・。知り合いがいたほうが楽なんだけど、そう一緒になれるわけでもないか・・・。サラサと会話していると、あっという間に時間が過ぎ、俺達は、それぞれの集合場所へと歩いて行った。
「えー、ではこれより、初級迷宮探索を行う。何人でチームを組んでもいいが。慣れているものは、出来るだけ周りを助けるように動いてやって欲しい。特に、危なくはないと思うが、危険があったら、すぐに先生か、周りの人に助けを求めること。いいですね?」
「「「「はーい」」」」
集合場所に着くと、授業説明もほどほどに、いきなりチームを組めと言われた。お昼の時間で決めていたのか、何人かはそのまま固まって迷宮に入っていく。他の周りの奴らも、一緒に授業説明を受けていた戦士科の人間と組んだりして、続々と迷宮に入っていった。うーん、俺も誰か捕まえて行くべきか・・・。でも、アリーの話だと、楽すぎて暇らしいからなぁ・・・。一人が気楽という場合も・・・・。
「あの・・・・・・・」
「うん?」
迷っていると、声をかけられた。見た目からして、魔法科の女生徒かな?
「一緒に、迷宮に入りませんか?」
「・・・ああ、いいよ」
まさか、女生徒から誘われるとは・・・。予想外だ。でも、せっかく声をかけてくれたんだし、お言葉に甘えて、一緒に行くことにしよう。
「(ふむ、これだけ人がいる中でご主人様を選ぶとは・・・。見どころがありますね。この眼鏡っこ・・・)」
「(すごい華奢な感じだけど、大丈夫かしら?つついたら壊れそう・・・)」
確かに、この娘は少し小柄だ。大事そうに、立派な杖を握りしめている腕も細い。青い髪を帽子で覆い、白いローブを着ている。イメージ的には、アリーの真逆と言う感じの、おとなしい娘だ。
「あ、あの・・・。私、こういうの初めてで・・・・」
「うん?迷宮に入ったことも、戦闘したことも無いってことかな?」
「はい、そうです。・・・・魔法も、回復魔法は得意なんですけど、戦闘系は苦手で・・・。え、援護する形でも、大丈夫でしょうか?」
「ああ、ぜんぜん大丈夫だよ。で、どうする?このまま2人で迷宮に入る?」
「あ、・・・・、えっと、だ、大丈夫ですか?」
「たぶん、問題無いと思う。俺はちょっと迷宮に潜ったこともあるし。・・・じゃあ、このまま行こうか」
「は、はい!・・・よろしくお願いします」
そして、俺達2人は迷宮に向かう。おっと、その前にこれは聞いとかないと・・・。
「俺はベイ。ベイ・アルフェルト。君は?」
「あ、私はニーナ。ニーナ・シュテルンです。よろしくお願いします」
シュテルン?どっかで聞いたような・・・。まぁ、思い出せないものは仕方ない、取り敢えず俺達は挨拶を交わして、初級迷宮に入っていった。