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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・二部 入学と新たな挑戦
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初授業前

 やはり、皆の作る朝ごはんはうまい。と言うか、アリーが指示してるんだろうけど、ここまで美味い料理が作れるとは思わなかった。いいお嫁さんになるな。俺の。


「今日は私、神魔級回復魔法を改良するために部屋にいるわね。あと、ベイにお願いがあるんだけど?」

「お願い?」

「そう、私、戦闘訓練がしたいの。だから、誰かに私の相手をして欲しいと思って」

「アリーが、戦闘訓練を?」

「そう。別に、昔もやっていたことでしょう?今も、1人で魔法の練習はしているんだけど、どうにも1人では限界があるのよね。それで、誰かに相手をして貰いたいんだけど」

「……ふむ、1人うってつけの人材がいるけど」

「殿、ここに」


 俺の脇に、一瞬にしてミズキが現れる。おお、昔の時代劇みたいで格好いい。


「ミズキなら分身出来るから、いつでも相手が出来るな」

「なるほど。じゃあ、ベイがいない間の稽古に付き合ってもらおうかしら。よろしくね、ミズキ」

「お任せ下さい、アリーさん」


 アリーも、ミズキ地獄に挑むのか。 ……強くなりそうだな。


「今日は、一日目の授業。と言うと、あれがあるのかしら?」

「あれ?」

「ええ、この学校の近くに初級の迷宮があるんだけど。そこで、簡易チームを作って狩りをさせるの。まぁ、戦闘に慣れ親しむことで、魔法の危なさや、魔物の怖さを知るための授業なんだけど。これが退屈でね。たまに魔法を使ってくる奴もいるけど、平和そのものなのよ。私は、1人で迷宮探索して、ボスまで倒したんだけど。あくびが出そうだったわ。集合時間まで、ベイに会いたいなぁ、と思いながら魔法を撃つ練習をするだけのつまらない授業だったのよ。せめて、中級くらいなら良かったんだけど」

「初級迷宮かぁ。俺は、いきなり中級から始めたから、行ったことが無いなぁ」

「ベイが、ミズキの能力で魔力量をごまかさなければ、あそこの魔物は寄ってすら来ないでしょうね。まぁ、退屈だと思うけど、頑張って」

「ああ、頑張るよ」


 その後、朝ごはんを食べ終えた後、身支度を済ませた。そして、時間まで皆とゆっくりお茶を飲んでくつろいでいたが。


「お?ご主人様。サラサさんが近づいてきてますね」

「へぇ~、一緒に登校しようだなんて、あの子もなかなかやるわね」


 うんうん、とアリーは頷いている。その表情は、どこか嬉しそうだ。


「うん?あと、レラって人も一緒みたいですね」

「レラ・サルバノ?なんであの人が?」

「……ふむ、ベイの魅力にやられたのかしら」


 いやいや、ないない。というか、今これだけモテてる状況自体、かなりレアケースすぎるから。そんな座してて女の子にモテるような力は、俺にはないよ。


「取り敢えず、お茶を片付けて、出迎えますか」

「そうね、何か用があるのかもしれないし」


 そして、皆でカップを片付けて、2人が扉をノックするのを待った。程なくして、部屋の扉がノックされる。


「は~い」

「おはようございます。アリーさん」

「おはようございま~す!!」

「サラサにレラ、朝からどうしたの?」

「私は、ベイと一緒に登校しようと思いまして」

「私は、シュアちゃんの件についてご相談をと思いまして!!」

「……あなたのところにも言いに行ったのね、あいつ」


 アリーが嫌そうな顔をする。もうアリーの中で、シュアは相当な嫌な存在に位置しているらしい。


「まぁ、いいわ。確かに、少しは気になる話しだしね。私は、巻き込まれたくないけど」

「でしょう!!言われたはいいですけど、協力するって言ったって、得体も知れない相手なんて相手していいもんだか。困りますよ、実際」

「……ふむ、長話してる時間もないし、歩きながら話しましょう。ベイ!!そろそろ、学校に行きましょう!!」

「うん。アリーも行くの?」

「ええ、最初からベイを学校に送るまでは、一緒に行く気だったし。じゃあ、行きましょうか」


 アリーが素早く、いつものおでかけ装備を身に纏う。俺達は、部屋を出て学校に出発した。


「で、どうしたいの、レラは?」

「う~ん、そうですねぇ。正直、家の中でも私は強い方でもないんで。行っても、役に立つのか怪しそうですね」

「なるほどね。まぁ、世界を滅ぼすかもしれないらしいから、並の人間では、耐えられそうにないわね。本当ならだけど」

「ええ。でも、よく当たる占い師さんに見てもらったらしいですし。本当なんじゃないですか?よく当たるって言ってもそこまでなのか分かりませんけど」

「だとしても、情報が少なすぎるわね。こんな中途半端な占われ方じゃなく、原因を占ってもらってこいって話よね」

「ああ、そうですね。確かに。その占い師さんに原因を見てもらってない、なんてことは無さそうですね。ということは、シュアちゃんのお姉さんは、何が原因でそうなるかを知っている?」

「かもね。シュアが聞いていなかったのか、それとも意図的に隠した情報で私達を釣ろうとしているのか。まぁ、どっちにしても、いい話には聞こえないわね」


 なるほど。確かにこれほど大事な話なら、原因もその場で占ってもらうはずだ。それで、今ここまでしか知らされてないなんて、隠したい何かがある可能性も大いにあるな。


「う~ん、なら、このことを家の人たちにも知らせるべきかなぁ。もし、何か変な事に巻き込まれるのなら、一応忠告しといてあげないと」

「レラの家って、他にも声をかけられた人がいるの?」

「ええ。シュアちゃんのお姉さんが、声をかけてるって言ってましたよ。まぁ、家って言っても、親戚みたいな立場ですけど」

「親戚?」

「ええ、サルバノ家は今は、流派が2つに別れてまして。もう片方の家系の子ですね」

「へぇ~、そんな家もあるのね」

「昔に、速さを追求する剣技と、受け流しを追求する剣技に分かれまして。私は、受け流し側の家系です」


 受け流しかぁ。相当難しそうだよなぁ。


「それはまた、えらく難しそうね」

「そうなんですよ!!お陰で、多種多様な攻撃を今まで見たり、受けたり。一番きつかったのは、魔法の受け流しですね。もう、これ本当に出来るのかと心が折れそうになりましたよ」

「……苦労してるのね」

「……分かって頂けますか」

「レラさん、それで私の攻撃にも慣れていると」

「大変だなぁ」

「ありがとうございます、皆さん。今までの苦労を知ってもらえて、私は嬉しいです」


 修行の時間を思い出していた間のレラの顔には、苦悶の表情が見て取れた。余程きつかったんだろうな。その自分の頑張りを、他人に受け止めてもらって嬉しそうだ。


「くぅう、研究会の仲間には、かっこいい先輩であるためにあえて苦労している部分を言っていなかったのですが。やはり、誰かに聞いてもらうってのはいいことですね。救われた気がします!!」

「大げさね。まぁ、そんな案件だし、関わったらろくな目には合わないでしょう。受けるなら、レラもその親戚も、覚悟を決めてから協力するべきね。遺書を書くくらいの」

「ええ~~、私、まだ死にたくないです。でも、止めないとどっちにしろ死んじゃうのかも。……う~ん、なんで私なんかにそんな話が回ってくるんでしょうね?家の当主に話すべきでは?」

「さぁ?もう話してるけど、一応、他にも声かけてるとか?まぁ、全貌は見えないわね。これだから、協力したいなんて言えるわけがないのよ」

「う~ん、私もこの件は流したくなってきました。でも、一応話だけは今後も聞いていこうと思います」

「そうね。あいつと喋るのが苦でなければ、それもいいかもね」


 アリーは、ちょっと引きつった顔をしている。シュアのことでも思い出しているんだろう。そうこうしている内に学校についた。


「じゃあ皆さん、お互いに今日も1日頑張りましょう!!ではでは~~!!」


 風のように、レラは校舎目掛けて走って行く。


「うむ。ベイ、私も教室に向かう。またな」

「ああ、またなサラサ。じゃあ、アリー行ってくるよ」

「行ってらっしゃい、ベイ。チュッ」


 不意打ち気味に、アリーがキスをしてくる。良かった、人は見ていないようだ。


「……うん!!なんだかやる気が出てきたよ!!!」

「ふふっ、頑張ってね」

「ああ、行ってきます!!」


 そして俺は、アリーと別れて教室へと向かった。


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