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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・二部 入学と新たな挑戦
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帰り

「……それじゃあ、私とベイはやることがあるから帰るわね。またね、サラサ、レラ」


 うん、やることなんてあったっけか? まぁ、いいか。俺達は、和気あいあいとし始めていたサラサとレラに別れを告げて、部屋に向かって足を進めた。


「……って、なにしれっと付いてきてるのよ」

「いえ、ベイがどこに住んでいるのか気になりまして」

「私は、サラサちゃんを勧誘したいし。ベイ君も強そうで、いいなぁ~と思って……」


 ちゃっかり、後ろを2人がついてくる。その2人を、アリーは若干嫌そうに見ていた。


(ちっ!!私は一刻も早く、ベイに神魔級回復魔法書を見せたいのに!!)


 む、何かアリーが、すねたような顔でこっちを見ている。可愛い。 ……いや、なんだろう? 二人がいるとまずいなにかがあるんだろうか? あれは、そういう顔だな。


「というかレラ、あなたの研究会、さっき女性のみだとか言ってなかった?なら、ベイは関係ないでしょ」

「あ~、まぁ、そうなんだけどねぇ。そんなに強いなら、特例ってのもありかなぁ~、と思って」

「ベイが入るなら、私は入るぞ」

「ほら、サラサちゃんもこう言ってるし」

「だからと言って、そんなにいきなり男を入れるなんて言っても、会員が納得しないんじゃないの?」

「うーん、臨時の助っ人って感じで説得すれば、なんとかなるかも?」

「そう、うまくいくかしらね?」

「うーん、確かにそうなんだよねぇ。でも、ここで逃すには、惜しい人材な気もするし」


 レラは、うーんと唸っている。俺としては、皆との修行時間を少しでも取りたいから、あまり時間を縛られるのはちょっと困るなぁ。でも、レラのこの悩んでいる感じなら、俺が引っ張られることはなさそうだ。


「まぁ、今年はまだ実力がありそうな後輩が入学しているようだし、そっちにしといたら?」

「うーん、でもねぇ……」

(でももなにも、私はベイと甘くてラブラブな学園生活が送りたいの!!厄介事を持ち込みそうな話は、ちょっとでも困るのよ!!)


 何かアリーが、レラを睨んでいる気がする。レラは気づいていないようだが。そうこうしている内に、部屋の前までついた。


「ここが、アリーさんが住んでいるところですか?で、ベイはどこに住んでいるんだ?」

「私と、一緒に住んでるわよ?」

「……え、いいの、そういうの?」

「親たちが認めている仲だもの。なにも問題ないわ。手続きもちゃんとしてあるし」

「ふむ、流石アリーさん。ベイの正妻として、一分のすきもないですね。少し中を見させてもらってもいいですか?こんな大きな建物の部屋が、どうなっているか気になるので」

「……まぁ、少しだけならいいわ」


 そう言って、アリーは鍵を開けて部屋の中に入る。サラサとレラの二人は、アリーの後に続いて部屋に入っていき、そのまま部屋の中を見回した。


「はぁ~、広いねぇ~。うちの寮の部屋とは、大違い」

「確かに、私の部屋の4、5倍くらいの広さがありますね」

「わぁ~!!見てみて、サラサちゃん!!大きいベッド!!……なんか、いやらしいかも」

「ふむ、これはさすがに、2人用にしては広すぎるのでは?」

「言ったでしょう。すでにベイを好いている女性は、10人いるのよ。このぐらいで、丁度いいくらいだわ」

「あー、でもそれって……」

「ふむ、一緒に寝ているということですね」


 何を想像しているのか分からないが、二人の顔がどんどん赤くなっていく。それを見て、なぜだか俺も恥ずかしくなってきた。


「当然よ。いずれ結婚するんだもの。むしろ、別々に寝ている方が問題になると思うわ」

「むぅ~、そう言われれば確かに。それなら、別々に寝るほうが不自然な気もしますね。というか、他の女性達はどこにいらっしゃるのでしょうか?姿が見えませんが?」

「彼女達は、ここの新入生や在学生ってわけではないの。だから、大抵の時間はこの部屋にはいないわね。ベイが確実にいる時間なら別だけど……」

「なるほど。ベイの魅力をお聞きしたいと思っていたのですが……。又の機会にしますか」


 と言われても、会わせる機会があるんだろうか? 俺としては、アリーと結婚するまでは、皆に他者を合わせるのは避けたいところだけども。


「まぁ、そのうち機会があったらね。で、一通り見れたかしら?」

「ええ、ありがとうございます。羨ましいくらい広いというのが、よく分かりました」

「私も、こんな広さの部屋に住みたいなぁ~」


 レラが、自分のポニーテールをいじりながらすねている。緑に近い髪の先を、指にくるくる巻いていじっている姿は、どこか愛らしい。


「ふむ。では、お邪魔いたしました。また、機会があれば遊びにでもこさせて下さい」

「私も、機会があったらまた来るよ!!というか、こさせて!!」

「はいはい、二人共気をつけて帰ってね。ここらへん、変な研究をしている人が多いから、たまに爆発とかするわよ」

「「え!!」」

「ほら、あそこの壁。見てみなさい」

「うわ、本当だ。焦げたあとがある」

「部屋の中なら安全だけど、外となるとちょっと危ないわね。一応、気をつけなさい」

「わ、分かりました。では、これで」

「またね」


 ちょっと早足で、2人は帰っていった。というか、爆発するのか。怖いんだけど。


「まぁ、あまり気にしなくていいわよ、ベイ。爆発なんて、そんな頻繁に起こるものでもないし。皆、ある程度は実験に安全性を重視して行っているもの。……たまに、ぶっ飛んだことをする人がいるけどね」


 アリーは、近くの研究棟の黒くなった壁を見ながらそう言った。 ……俺も気をつけよう。


「さて、邪魔者がいなくなったことだし、部屋に帰ってさっさとあれを進めましょう」

「うん、あれって?」

「え、なにって……」


 部屋に入って、アリーは鞄から本を取り出す。


「神魔級魔法の習得よ」

「……ああ~、そうだったね」


 アリーとサラサの微妙に俺が聞きづらい話を聞いていたから、少し忘れていた。そう言えば、それがあったんだよなぁ。ぱらぱらと、アリーは本をめくる。


「ふむ、この厚さ、ちょっと時間がかかりそうね。まぁ、ベイと2人なら、すぐにそんな時間も過ぎるでしょう。……じゃあ、やりましょうか」

「ああ、やろう」


 二人して肩を並べて、本を読もうとする。その時、いきなりアリーがビクッと身を震わせた。


「……あ!!あの2人のせいで、忘れるところだったわ!!」

「うん、何のことだいアリー?」


 アリーは、無言で俺の方に向き直る。すると、すぐに頬に軽いキスをしてくれた。


「チュッ。おかえりなさい、ベイ。ふふっ、これがしたかったのよねぇ~」


 ……なるほど。これはいいなぁ。


「ああ、ただいま、アリー」


 俺からも、アリーにキスを仕返す。うーん、やっぱり幸せだなぁ。アリーも同じなのか、嬉しそうにはにかんでいる。その後、2人で仲良く魔法書を読み進めた。






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