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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・二部 入学と新たな挑戦
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校舎

 図書館は深い階に行くほど、威力の高い魔法の本が集まっている。特に最奥にある扉の奥には、今までに研究された魔法の中でも創世級や、封印指定を受けたような魔導書が眠っているという話だ。上に上がりながら、軽くアリーに説明を受けた限りでは、そんな感じらしい。そして、入口付近のカウンターでアリーが貸出の手続きをおえ、俺達は図書館を後にした。


「さて、次は……。あ、その前に、ここらへんが一年生の授業を行う教室ね。たまに別の教室に移る授業もあるけど、基本的にはここの区画でやるわ」


 教室は、学年ごとに階で基本的には区切られているらしく、2階は二年、3階は三年という感じらしい。分かりやすいね。


「で、こっちが小ホール。あっちは会議室だけど、私達が使うことはないわね。たぶん」


 すすすっと、歩きながら案内をされていく。実験室や、保健室、こうしてみると、日本の学校とあまり変わらないかもしれない。まぁ、実験室は、魔法実験室だったけど。


「職員室は、前行ったから分かるわよね。じゃあ、次は2階ね」


 2階には、アリーが授業を受ける教室がある。まぁ、アリーはもう無理に授業を受ける必要はないけども、一応念のためということで、事細かにこの授業はこの教室でやるという説明をされた。授業に出ている時に、会いたくなったらいつでも来ていいらしい。うん、アリーは可愛いなぁ。


「2、3、4階には、今案内するべき重要な施設はないわね。魔法研究会の部屋があるくらいだし」

「魔法研究会?」

「ええ、生徒が集まって、魔法の研究をする場よ。細かくその研究会も分かれていて。遊びに使ったり、魔法の威力を高めたりと、ほんと様々。まぁ、あまり私とベイには、関係ないかもね……」


 なるほど、クラブ活動のようなものか。この世界にもあるんだなぁ、そういうの。


「研究発表とかもあるの?」

「ええ、確か全ての研究会に、月一での研究発表が義務付けられていたはずだわ。玄関にあった掲示板で告知するから、興味があったら見てみるのもいいかもね。っと、ここが5階。上には実験室が幾つかあって、部外者が入れない部屋が多いわ。まぁ、最上階の屋上は広くて景色もいいし、今日はその為にあとで上がってみましょう」


 そう言うとアリーは、5階の壁端の扉を開く。そこには、落下防止の壁がついているだけで、屋上などのように開けた空間だった。その先には、謎の家が立っている。


「一応、教えとこうと思うけど。あの家に滞在しているのが、この学校唯一の召喚魔法教師、ウイリスさんね。まぁ、1年は召喚魔法対策の授業もあるから、本人には後で会えるわ」

「へぇー、なんでこんなところに?」

「あれ、見て」


 アリーが、学校の少し離れたところにある小屋を指差す。


「あれが、先生が飼っている魔物の飼育場よ。もしものことがあってもすぐ分かるように、こんなところに住んでいるみたい。まぁ、景色は悪く無いだろうから、本人的には快適かもね」

「でも、なんですぐ隣に住まないんだろう?」

「それを聞いた生徒もいたわね。まぁ、もしも自分が真っ先に暴れた魔物に巻き込まれちゃあ、対処も何もできないでしょう?だからだって言っていたけど……」

「なるほどねぇ」

「(あまり魔物を、信頼していないんですかねぇ?)」

「(まぁ、私達のように、主と普通に喋れる魔物ばかりではないからなぁ。そういうことも、あるんじゃないか?)」


 うーん、俺以外の召喚魔法使いの魔物の扱い方かぁ。興味が有るような、無いような。うちには、参考にならないかもしれないけど。


「講義を聞いて興味があるなら、訪ねてみてもいいかもね。一応、研究の先輩だし。ベイの知らないことを知っているかも?」

「そうだね。なにかあったら、聞いてみようかな」


 そう思い。俺達はその場をあとにした。階段を登って、屋上に出る。広々と辺りが見渡せて、とても気持ちがいい。


「さて、魔法科の建物は説明しおえたわね。他のは、あそこら辺に立っている研究棟とかもそうだけど、関係者以外立入禁止だから、特に気にしなくていいわ」

「やっぱり広いね。この学校」

「そうね。ほら、あっちには戦士科の校舎もあるし、寮も魔法科と似たような物があるわ。あそこは私でも分からないから、機会があったらにしましょう」

「分かった」


 見るところも見て、アリーと寮に向かって手を繋いで景色を楽しみながらゆっくり帰る。その途中で、運動をしているような掛け声や、戦闘をしているような息遣いが聞こえた。


「ああ、ここらへんがだいたい戦士科がやっている研究会の活動場所ね。闘技研究会と言って、7月の闘技会での優勝を目指して実戦の訓練をしている研究会もあるわ。そこだけは、魔法科と戦士科、両方から加入者を募っている特殊な研究会ね」

「へー」


 遠く離れているのに、ここまで掛け声が響いてくる。相当、力を入れた訓練をしているんだろうなぁ。と、思って横目に見ながら、その場を通り過ぎようとすると。


「うわああああああああ!!!!」


 いきなり人が、こちらに向かって吹っ飛んできた。俺は、軽く風魔法でその人を受け止め、落下の衝撃を防ぐ。


「うわぁっ!!……っと、止まった?」

「あの~、大丈夫ですか?」

「うわぁぁぁ!!……あ、もしかして止めてくれました?ありがとうございます!!」

「いえいえ。それより、かなりの威力の攻撃を受けたようですが」

「ああ、大丈夫ですよ!!訓練で、多少の攻撃には慣れていますから!!!!」


 いや、あの吹っ飛び方は、多少ではないだろう……。でも、元気そうだしいいか。そう思っていると、向こうから見慣れたねずみ色のマントを付けた女性がやってきた。


「すまない、ベイの声に気を取られてな。少し力を入れすぎてしまった」

「いえいえ、こんなの慣れっこなんで!!しかし、やはり噂通り。いえ、それ以上の実力とお見受けいたしました!!是非、我が研究会に入って頂けないでしょうか!!!!」

「ああ~、それは断る……」

「ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!」


 吹き飛ばされてきた女性は、その場でガクリと頭を下げる。そして、ショックで固まってしまった。


「ふむ、やはり聞き間違いでは無かったか。また合ったな、ベイ。それと……」

「むっ」


 サラサと、アリーの視線がぶつかり合う。何故か、二人とも相手の顔をよく見ていた。なんだろう? 見覚えでもあるんだろうか?


「ガンドロの爺さんとこの、お孫さんだったかしら?」

「それを知っているということは、やはりバルトシュルツさんの家の……」

「確か、サラサ・エジェリンだったわよね?」

「ええ、お久しぶりです、アリーさん。5年前以来でしょうか」


 2人は、軽く握手をする。どうやら、知り合いのようだ。


「ベイは、知っているか分からないけど、こちらはサラサ・エジェリン。私と同じで、大昔の勇者チームの一族の末裔の1人よ」

「ああ、改めてよろしく頼む、ベイ」


 へー、サラサと、アリーにそんなつながりが。


「しかし、見違えるほど成長したわね。特に背が……」

「……お恥ずかしい限りです。叔父は、迫力があっていいというのですが。おかげでどうも、年より老けて見られがちでして」

「まぁ、確かに迫力はあるわね。それはそれでいいと思うわ」

「……お心遣い、ありがとうございます」


 サラサが、アリーに軽く頭を下げる。しかし、サラサって意外と礼儀正しかったんだなぁ。もっと、ぶっきらぼうな感じかと思っていた。


「ところで、ベイ。君は、どこかの研究会に入るのか?それなら、私もそこに入ろうと思うんだが」

「なんですってえええええええええええええええええ!!!!」


 いきなり固まっていた、女性が起き上がった。そのまま俺を見る。


「ああ、でもうちは、女生徒の研究会。うぬぬ、だがしかし……」


 今度は、1人で唸り始めてしまった。


「で、どうなんだ?」

「うーん、今のところは、どこかに入る予定は無いかな」

「なるほど。では、私も今はやめておこう」

「え!?」


 また後ろの女性は、膝をついて固まってしまった。


「サラサ。あんたまさか」

「うん、なんでしょうか、アリーさん?」


 アリーの鋭い視線が、サラサに向けられる。何やら会話の空気が、悪くなっていくのを感じた。



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