部屋
移動を始めて7日めの夜。遂に俺達は、目的地に到着した。明日は一日休んで、入学式に出席予定になる。
「で、私達は宿に止まるから、ベイはアリーちゃんのところに泊まりなさい」
「え?多分大丈夫だろうけど、急に行っていいのかなぁ?」
「まぁまぁ、たまにはサプライズがある方が、人生は楽しいわよ。アリーちゃんも、きっと喜ぶわ。胸を張って、いってらっしゃい!!」
そう言ってカエラは、親指を立てて俺を送り出した。と言っても、今は結構遅い時間なんだよなぁ。アリーが寝ている邪魔になったりしないだろうか? そう思いながらも、宿に親を残して、俺は転移した。
「よっと、アリー起きてるかなぁ?」
部屋の扉の前に転移する。いきなり中にはいることもできるが、そこはマナーをわきまえてノックからにした。コンコンと扉を叩く。すると、少しして部屋中から声がした。
「……合言葉は?」
えっ? 合言葉なんて知らないんだけど? まぁ、適当でいいか。
「ベイ・アルフェルトは、アリー・バルトシュルツを愛しています」
「今度から、この合言葉を制式採用しましょう!?遅かったわねベイ。首を長くして待ってたわ!!」
勢い良く、扉が開く。部屋の中から、アリーが元気に顔を出した。もう寝る予定だったのか、来ている服は寝間着だった。
「さっき着いてね。それで急で悪いんだけど、今日はここに泊まってもいいかな?」
「勿論よ!!遠慮なんてしなくていいわ。だって、ベイと私の部屋だもの!!……ふふふ、いい響きね。ベイと私の部屋」
「ありがとう、アリー。それじゃあ、ただいま、でいいのかな」
「ええ、おかえりなさい、ベイ!!」
そのままアリーが、俺にゆっくりと腕を回してキスをしてくる。うーん、まるで新婚さん気分だなぁ。甘ったるくて、心地いい。少し長く唇を重ねて、2人で部屋に入っていった。
「さて、この部屋なら皆が出ても大丈夫よ。召喚してあげたら?」
「そうだね。じゃあっと……」
アリーに言われて、俺は皆を召喚する。部屋が広いと言っても、今では9人だ。やはり、スペースを結構取ってしまう。でも、まだ余裕があるので、この部屋本当に広いなぁと俺は思った。
「よっと!!しばらくぶりですね、アリーさん」
「こんばんは、アリーさん!!」
「ええ、ミルクもフィーも、元気そうね」
「こんばんはアリーさん。にしてもこのベッド、デカイですね」
「レムもこんばんは。ああ、これね。昨日届いたのよ。すごいでしょう!!これなら、10人だろうが、20人だろうがベイと一緒に寝られるわ」
レムの視線の先には、一部屋をほぼ丸々占領するかのような大きさのベッドがあった。確かにこれなら、かなりの人数まで一緒に寝られるだろうな。……なんというか、今更だけどすごい豪華だよなぁ。これだけの美少女達と一緒に寝れるのって。幸福感で、胸が熱くなってきた。
「こんばんは。ふむ、この大きさなら、私も天井で寝なくて良さそうですね」
「あたしも、主様のもっと近くで寝れそう!!やったー!!」
カヤもミズキも、喜んでいるようだ。その反応を聞いて、アリーが嬉しそうに胸を張る。……むっ!? またアリーの胸が、大きくなっているんじゃないか!! わずかだが、そんな気がする!!
「あわわ。す、すごいですね」
「城の良いベッドでも、これほどの広さは無いっすよ。しかも、これだけの美少女達と一緒に寝れるなんて。ベイさんは、只者じゃないっすね」
「……何か、ちょっとエッチですね」
「な、なにを言っているんですかサエラ!!ま、まるで、この前のようなことになるみたいではないですか!!!!そ、そのような……。あああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
シゼルの顔が、みるみる赤くなっていく。あの日のことを思い出すと、どうしてもこうなってしまうようだ。刺激が強すぎたのだろうか? まぁ、実際に刺激の強い内容だったから仕方ない。
「むぅ、いつまでも、このままではいけませんね。こういうのは、慣れが一番ですよ。……おやおや~、ちょうどここに、私がご主人様の荷物にこっそり混ぜた皆の水着が」
「あわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!!!!」
まるでミエルのような口調で、シゼルは壁際に逃げる。第二回・水着祭り開催は、まだ先になりそうだ。
「でも、ベイも皆も長旅で疲れているでしょう。今日は、ゆっくり休んだほうがいいわ。ほら、みんな一緒に寝ましょう」
「えっ、そうですか。まぁ、ご主人様に疲れが溜まるのは問題ですね。今日は、おとなしく休むとしましょう。そうすることで、ご主人様のあれも溜まるでしょうし……」
シゼルに、ニヤケ顔で水着を持って迫っていたミルクは、そう言うと大人しくベッドにやってきた。いや、今の発言からして、おとなしくする気の無さが伺えるけども。
「ほら、ベイもローブを脱いで、早く寝やすい格好になってきてね。ベイと寝るためのベッドなんだから」
「ああ、すぐ着替えるよ」
いそいそと、服を脱いで俺は薄着になる。……全員分の視線を感じるなぁ。恥ずかしい。着替えると俺は、ベッドに移動した。ベッド中央に行くと、その広さをさらに実感する。これなら、どんなに寝相が悪くても落ちそうにないな。
「よし皆、ベイを中心にして集合!!」
俺に群がるように、皆が集まってくる。両脇にアリーとフィー、ミエル、シスラ。足側にレム、ミズキ、カヤ、シゼル、サエラ。そして股下にミルクがおさまる。ミルク、これだけベッドが広くなっても、そこに君はおさまるのか……。
「ふぅ~。やはり、このポジションは安心しますね。ご主人様の香りがします。むふふ……」
「……」
「む、いいわねミルク!!でも私も、キスし放題よ!!チュッ!!」
そう言うと、アリーは俺にキスをした。そのキスを合図に、皆がおやすみのキスをしていく。後から仲間になったミエル達4人は、恥ずかしそうに顔を赤くして、その光景を見ていた。
「あ、あの、ベイさん!!」
「うん、どうした、ミエル?」
「お、おや、おやすみなさい!!」
そう言うとミエルは、俺に顔を寄せて……。ほっぺにキスをした。
「ほほう、やるっすねぇ、ミエル様!!」
「あらあら、ミエル様も思い切ったことをするわねぇ」
「ふ、不純です。あうう……」
キスをしおえたミエルは、恥ずかしさにうつむき、もじもじしている。その仕草が、とても可愛かった。
「ああ、おやすみ、ミエル」
俺も、ミエルの頬にキスを仕返す。
「!!!!」
すると、ミエルは顔を更に赤く染めて、固まり、後ろに倒れてそのまま気絶してしまった。
「おわああぁぁ!!大丈夫か~、ミエル~!!!!」
すぐに、俺はミエルに回復魔法をかけた。
「うにゃあ~、ベイさん」
反応があったところを見ると、取り敢えずは大丈夫そうだ。
「詰めが甘いっすねぇ~、ミエル様は。自分は、ああはならないようにしないとっすね」
「気をつけないと」
「ふ、不純です!!!!」
シゼルは、顔を赤くしてぷるぷる震えている。ミエルのように、倒れないか心配だ。
「まぁまぁ、そろそろいい時間だし、寝ましょう。明日は、学校を案内するわ」
そう言って皆に、アリーは布団をかけていく。かけおわると、俺の隣におさまった。
「これでよしっと。……やっぱ、ベイと寝むれて嬉しいわ。おやすみなさい、ベイ。皆」
「ああ、おやすみ、アリー」
「「「「「「「「おやすみなさい……」」」」」」」」
皆がそう言うと、俺達は静かに眠りに落ちていった。