修行
「……朝か」
俺は目を覚ました。窓から朝日が差し込む。昨日のことがまるで夢のような感覚だが、体中についたキスマークと、周りで寝ている水着美少女達が現実であるという何よりの証拠だった。このキスマーク、親に見られないように注意しないとな。……能力で治しておこう。その方が確実だ。
「う~ん、ベイ、おはよう」
俺の隣で寝ていた、アリーが目を覚ます。昨日はアリーも、せっかくだし泊まるということになり、本当に皆に夜中までイチャつかれた。辛うじて、ご飯時は休憩していたが、それ以外は常に皆とくっついていた。朝のキスをアリーとする。うーん、やっぱり最高だな。早く結婚したい。
「チュッ。やっぱり、早く一緒に暮らしたいわね。そう思わない、ベイ?チュッ」
どうやらアリーも、同じ気持ちのようだ。俺は、一も二もなく頷いて、再度アリーのキスに応じた。
「うむむ、朝からお熱いっすね」
「マスター!!おはようございます!!」
フィーと、シスラが起きた。フィーは、そのまま俺に寄り添ってくるが、シスラは顔を赤らめてあさっての方向を向いている。
「どうした、シスラ?」
「いや、どうしたって。昨日、皆であんなことしたって言うのに、ベイさんは意外と平気そうっすね……」
ああ、まぁ、確かに他の人には見られたくないことになっていたが、今までも今までだったし、俺としては覚悟ができていたという感じになってるからなぁ。
「皆が、あそこまでするのは予想外だったけど。皆の気持ちは、分かってるからなぁ」
「なるほど。通じ合えてるというか、受け入れられるってことっすね。うーん、自分はもうちょい時間がかかりそうっす。なにぶん、新人なもんで」
そう言うと、シスラの顔がまた赤くなっていった。昨日のことを、思い出しているのだろうか。ミエル達4人は、積極的に俺にひっついて来たりはしないものの、なんだかんだで皆の行動を最後まで見ていた。そう言う反応になるのも、仕方のないことだろう。アリーや、フィーは、当事者なので平気そうだ。むしろ、昨日よりいきいきしている感じさえする。
「マスター……」
取り敢えず、フィーと朝のキスを済ませてから、皆を起こしていく。ミエル達は、皆シスラと同じ反応をしていた。特に、ミエルとシゼルは、頭から湯気でも出そうなくらい真っ赤だ。他の皆はいつも通り、朝のキスを俺としていく。うーん、とても満たされるな。今日も頑張ろう。そう思いながら、俺は皆の召喚を解除をして、ご飯を食べにアリーと下の階に降りた。
「むむむ、ベイ。もしかして、大人になった?」
「……何言ってるんだよ、母さん」
「うーん、昨日は殆どアリーちゃんと一緒だったみたいだから、もしかしてと思って……」
「お義母さん。それは、結婚してからのお楽しみにしておきます」
「あらそう……。別に、アリーちゃんなら、いつでもベイとしていいのよ?」
「あ、ありがとうございます!!!!」
そう、そこまではいっていない。ミルクとミズキが、うっかりそこまで行きそうになったが、皆が止めていたような。まぁ、あそこまで行ったら、あんまり変わらないとも思うけど。と言うか、カエラの発言で、朝からアリーの視線が熱い。可愛いから、そっと抱きしめた。アリーも嬉しそうに、俺を抱きしめ返す。
「ふふっ。どっちにしろ、我が家は安泰みたいね……。お似合いよ、お二人さん」
そう言って、カエラは台所に戻っていった。少し、恥ずかしい。そのまま普通にご飯を食べたあと、アリーを見送って、皆のご飯を作った。食べおえたら、訓練を開始する。水属性聖魔級迷宮で、対戦相手を変えながらの模擬戦を行った。ミエル達は、4人一組で俺たち一人の相手をする。まだ、俺たちの動きにはついてこれていないが、彼女達もそのうち強くなるだろう。今は根気よく訓練して、彼女達が強くなるのを待つしか無い。
「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ミズキは、容赦無いっす!!!!」
「ちょっ!!早すぎて、対応出来な、うわっぷ!!!!」
「きゃぁああああ!!!!」
「くっ、これだけ撃っても、一発も当たらない!!うわぶぁ!!!!」
……相変わらず、ミズキ地獄はキツイようだった。まぁ、俺やフィー、レム、ミルクですらキツイもんな。……頑張れ4人とも。その分、強くなれるはずだ。たぶん。
「うーん、でも昨日よりは、動きがいい気がしますね。意外と早く、私達に並べるようになるかもしれませんよ」
「頑張って欲しいな。なんというか、ミズキが完全にいじめてるみたいになってるから、せめて少しは防げるようになって欲しい」
「あ~、それは思いますね。シスラも少しは、腰の引けが無くなってきましたが、まだまだという感じでしょうか。ご主人様のその望みが叶うのは、少し先になりそうです」
ミルクが言った通り、そこから結構な時間が過ぎた。迷宮の魔物と戦ったり、複数人での戦闘訓練をしたり、出来るだけ飽きや慣れが来ないように気をつけながら訓練を行った。その成果があってか……。
「うわっと、やっぱキツイっすね!!よっと!!」
「ええ。でも前よりは、見えてきました!!そこ!!」
「えい!!……と言っても、まだ加減された水玉を防ぐのでやっとですけど」
「いえ。これは、確実な実力の向上です!!誇っていいでしょう!!今までの我々では、弾を見切ることすらできませんでしたからね。よっと!!」
「うむ、見事だ4人とも。……そろそろ、難易度を上げるか」
「「「「えっ!!!!」」」」
少しは実力の上がった4人だが、まだまだ水まみれを防ぐのは遠そうだ。
「ところで、そろそろ4月ですね。ご主人様」
「ああ、そろそろ学校に行かないといけなくなるな」
「アリーさんは、もう先に行っていますし。合流するのが楽しみですね」
「そうだな」
なんだかんだで、アリーとミルクは俺に隠れて会話でもしているんじゃないかという節がある。やはりこの二人の相性は、やばい意味でいいみたいだ。まぁ、俺の不利益になることはないだろう。そう思いたい。
「マスターが送る学校生活。どうなるんでしょうか?」
「まぁ、普通の訓練学校みたいだし。特に問題はないと思う」
「ご主人様ですもの。何が来ても、どーんと来いって感じですよ。それに、私達もいますしね!!」
「うむ。主のためにも、もっと強くならねばな」
「そうね。あたしも、主様のためにもっと頑張らなきゃ!!」
まぁ、皆がいれば、何が起きても問題はないだろう。多少の不安もあるが、結局はアリーとの共同生活だ。きっと、良い毎日が送れるに違いない。
「うわあああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!ちょっと、タンマ!!!!早すぎ!!早すぎっす!!!!うわぶぶぶぶ!!!!」
「あああああ!!!!無理!!無理!!防げな、うわップ!!!!」
「もうちょっと遅く!!ひゃぶううう!!!!」
「まだまだ、訓練が必要ということですね……。へぶぅううううう!!!!」
4人の悲鳴に苦笑いをしながら、俺はそう思った。