速い牛
「と言う訳なんで、全員出撃の準備をして車庫に集合。5分間でよろしく」
「「「「了解」」」」
そうリオーシュに言われると全員が校長室を出ていく。俺は、取り敢えずロギル君とノーマン君についていくか。
「……あの6人がここの主力メンバー?」
「はい、そうです」
「全員が出て大丈夫かな?」
主力6人同時不在はまずくないか。どこが狙われてるかも分からない状況だし。今の状況だと無差別に見えるけど。
「他にも頼りになる人達が多いので大丈夫ですよ」
「なるほど」
「俺達は、車庫に直行するか」
「そうだな。ベイさんは、何か準備したいとかあります?」
「いや、大丈夫ですよ」
「そうですか。では、行きましょう」
学校を出て壁沿いに進むと小さな建物があった。これが車庫かな。
「待ってる間どうする?」
「そうだな。ベイさんは、どんな戦い方をされますか?俺は、近接戦闘を主に担当しているんですが」
「えっ、サモナーなのに?」
「えっ、はい。あれ、珍しいですか?」
「いや、俺もそうなんですけど。最近は、そんな人を見てなかったからなぁ。すっかりそういう人は居ないもんだと思ってた」
「全召喚派が多いんですかね。俺は、部分召喚派なので」
うん、部分召喚? そう言うのもあるのか。単語的に解釈すると召喚時に一部だけ召喚するって感じかな。うちの嫁たちとは相性が悪そうだ。
「俺は、全召喚派ですね。部分的に出す良さがないので」
「そうなんですか。でも部分召喚だと全召喚時に発生する召喚時の魔力が抑えられて俺は重宝しています」
「でも部分召喚は、出す部位によっては外見最悪に成りませんか?」
「あ、それは俺も思います。なので使う部分には気をつけて使っています」
「ですよねぇ。俺は、だから全召喚派ですね」
「それは仕方ないことですね。そう考えると俺は、部分召喚に向いている仲間たちで良かったのかもしれません」
「もし宜しければ参考までにお仲間を教えて頂いても?」
部分召喚に適してるってどんな魔物か気になる。
「そうですね。蛇とか竜ですかね」
「爬虫類系ですか。なるほど」
「ベイさんは、どの様なお仲間を?」
「うちは、そうですね。牛とかヤギですかね」
「なるほど。部分召喚で使えそうなのは、角ぐらいと言った所でしょうか」
「あまり部分召喚するメリットは無いですね」
「そうみたいですね。しっぽも短いでしょうし。う~ん、統計的に見ると部分召喚派は少数なのかもしれません」
「使いこなせてる人は少ないかもしれないですね」
異世界の召喚魔法事情も面白いな。今度ベイアリーにも広めてみよう部分召喚。
「おっ、来たぞ」
「お待たせ~~」
リオーシュ達がこちらに向かって歩いてくる。そしてリオーシュが鍵を刺して車庫を開けると一台の車が出てきた。
「おお、大きい車ですね」
「以前全員乗ってぎゅうぎゅうだった時がありまして、その時に今度は大きいのにしようと思って買い替えたんです」
「6人乗っても安心の広さ、グッドだぞ」
「所でアマナ、あんたなんでその服なわけ?」
アマナ女子を見ると、黒い学生服のような服とコートを着ていた。違和感なく似合っている。
「クリーニング出したらまだ帰ってきてない」
「それで残ってたそれなわけ」
「うむ。まだぴったりだ」
「……アマナさんの成長期って何時なんですかね」
ぼそっとおっとりした女性がそう言う。
「まぁいいわ。さぁ、皆乗って。出発するわよ」
「そう言えば7人だな。どう乗る?」
「しょうがない、私がロギるんの膝の上に乗ろう。これで広々だ」
「えっ?」
「ああ。俺は、自前で乗り物を用意するので結構ですよ」
そう言って俺は、魔力を使って土の牛を作り上げる。そしてその上に飛び乗った。
「さて、準備できたら言って下さい」
「……牛?」
「何故牛?」
「……ともかく乗ろう」
「私ロギるんの隣!!」
「じゃあ、私は助手席で」
「俺達は後ろだな」
「はい」
「よし、エンジンも掛けて、OKよ」
「じゃあ行くか。ついて来いよ」
俺は、そう言うと同時に牛を走らせはじめた。
「えっ、はっや!?」
「あの牛速いぞ!!」
「リーダー!!」
「分かってる!!」
そう言うとリオーシュは、車庫から抜け出すとアクセルを踏み込んだ。
「赤い車か。アリーが好きそうだな。転移魔法あるからうちでは使ってないんだよな、車。さて、さっきから索敵を続けた結果を見るにこっちの方角だな。夕飯までには、終わらせないと」
「速すぎるだろ!!」
「ノーマンより速いんじゃないか、あの牛!!」
「いや、それはない」
「なんで掴まりもしてないのに落ちないのかしら?」
「魔法だと思います。すごい高度な魔法操作ですね。芸術を見ているようです」
「……やはり只者ではなさそうね」
「サモナーってあんな事も出来るのかよ」
「……俺には無理だ。まだまだ伸びしろがあるとうことか」
「ロギるんは頑張ってるぞ。これからおいおい出来るようにしていこう」
「ああ、そうだな」
「キャスターとしての立場が無くなりそうなのであまり頑張らなくてもいいですよ」
後ろは、にぎやかそうだな。さて、住宅街を抜けてあっちは人の気が薄い森の中と。あからさまなところにあるな。 ……うん? 気づいたか。
「おい、光の輪が出たぞ!!」
「前方に多数。どうやら案内先は、当たりみたいね」
そう言ってリオーシュは、窓を開けて片腕で銃を構えた。
「すごい。本当に分かるんですね。教えて頂きたい」
「レシアもこのくらい出来てくれるとありがたいんだがな」
「……正直に言いますけど、広範囲を魔力を頼りに探知するって人外の発想ですからね。私だって出来るならしたいです。きっと何か秘密があるに決まっています。いいマジックアイテムがあるとか」
「なるほど。お帰り頂く前に交渉してみましょうか。さて、突っ込むわよ」
「ああ」
「全部私に任せておけ。射抜く」
窓から身を乗り出すとアマナは、緑の炎で出来た弓を出現させて構えた。しかし。
「邪魔だな」
サリスを出現させて構える。俺は、サリスを振るって出てきた光の輪を全て斬撃を飛ばして叩き切っていった。
「……嘘だろ。何だあの斬撃速度」
「ノーマン、顔色が悪いぞ。一瞬で腹でも下したか?」
「アマナお前、あれ見ておかしいと思わないのか?斬撃が真っ直ぐ過ぎる。ブレが無いんだぞ!!」
「えっ、普通じゃない?」
「……お前に聞いた俺が馬鹿だった」
「ノーマンがここまで言うとは」
「恐ろしいほどに剣の腕も高いようですね」
「しかも切り残し無しじゃない。頼れるわね」
「……本当に何なんですかあの人。いや、人なんでしょうか?」
「案外、化け物かもね」
下手な斬撃をするとレム先生に心配されてしまうからな。にしても、この程度でも分かる人には分かるのか。手加減って難しいな。さて、そろそろ目的地だな。俺のお目当ての相手は居るのかな? 居るといいな。




