未来の召喚王
「無敵と破壊。相反する力を持って、今2つの力を一つにする」
俺の手に、アルティとサリスの二本の剣が握られる。それはまるで、そこに存在するのが当たり前にのように、スムーズに俺の手のひらに握られるために出てきた。
「融合進化。幻想魔晶剣、アリスティルサ」
二本の剣が無敵と破壊のガントレットの力を受けて融合する。そしてそこに、光を放って一本の剣が完成した。
「それが、幻想剣」
「そうだ。ウインディア、分かるか。この鎧から放たれる力のお前との違いが」
俺の鎧が光る。すると、周囲に居た人々の体調が回復し始めた。
「う、動ける」
「力が、吸われなくなった?」
「な、何故!?」
「言っただろ。俺は、君と似たような力を持っている。そして、今の俺の手にはアリスティルサがある。君の能力を遮断して、完全に封じることも可能だ」
「馬鹿な!?同じ幻想の力なのに、得ることに特化した私の力を上回るなんて!?」
「それが違いだ。君は、君一人でしかその力を使えていない。しかし、俺は、俺達でここにいる」
ゆっくりと俺は、アリスティルサを構えた。
「一人では限界がある。いくら多くの魔力を得て、幻想へと至っても、その力は一人だけのものだ」
「……」
「だが、俺達は違う。力が重なり合うことで、到底普通では届かない高みにいるであろう君にでも、そう。俺達は、圧倒的優位に立つことが出来る」
「なんで、幻想の力は、ありとあらゆる困難を打ち払える力があるはずじゃ?」
「ああ、あるだろうな。しかし、幻想といえども超えられない壁がある。それが魔法の頂点。個人が生涯をかけても到れるか怪しい境地だ。それを、俺達は分けて持っている」
「……」
「これが、共に手を取り合って勝ち得ることの出来る強さだ。君たちの未来の道標に成ればいいんだが」
「……こんなでたらめな力。私達には、無理ですよ」
「いや、出来る。確かに、俺達は些か突き抜けすぎた。でも、君たちの未来を作るなら、これほどの力は要らないはずだ。出来るよ。争いのない未来を、君たちが手を取り合って作っていける」
「……」
俺は、アリスティルサに魔力を流す。すると、刀身が輝いて周囲を照らした。
「あっ」
「今、魔法を作った。君を傷つけることなく、その鎧を解除させる魔法だ」
「……綺麗」
「魔法は、何でも出来る夢のようなものだ。輝かせるのも、輝きを失わせるのも君たち次第だ。だが、力の使い方を誤らなければ、時代を輝かせ続けることが出来るだろう」
「……」
「これが、俺が君たちに見せたかった答えだ」
アリスティルサを振るう。剣から真っ直ぐに光が伸びていき、その光が、ウインディアと融合している結晶達を切り離した。どちらにも、傷一つ付けることなく。
「……」
「分かってもらえるといいんだけど」
俺は、鎧を解除する。訓練しただけあってこの程度なら疲れを感じない。これなら、今回は倒れなくて済みそうだ。
「……えっと、他に戦える人はいなさそうなんだけど?」
俺は、周囲を見渡す。全員が、俺を見た状態で固まっていた。えっと、どうすればいいのこれ?
「し、勝者、ベイ・アルフェルト!!!!」
我に返った実況のお姉さんが、なんとか勝利コールをしてくれた。まぁ、伝えたいことは伝えられたよな。あとは、ここにいる人達に任せよう。きっと、いい選択をしてくれるはずだ。そう信じたい。
「父よ、不覚を取りまして、申し訳ございません」
「フブキ、ありがとう。どうする、来るか?」
「ハッ!!有り難うございます!!!!」
俺達は、試合の場所から出ていく。そして、建物の外に出る途中、走ってきたウェルヌさんに出会った。
「ベイ様、この度は、なんとお礼をしていいやら」
「いえ、いいんですよ。いい未来を作って下さい。それで十分です」
「はい、必ず!!ありがとうございました!!!!」
フブキを連れて、建物の外に出る。そして遠くを眺めると、契約の石を作り出してフブキに渡した。
「それに、魔力を流すんだ」
「は、はい!!」
フブキが魔力を流す。すると、石はまるで凍っているかのような色に変化した。
「面白いな」
「へ、変でしょうか?」
「いや、個性があっていいさ」
俺は、再度遠くを見る。呼んでいるな。俺を。
「フブキ、来い」
そう俺が言うと、フブキの石がフブキを収納して俺の内に転移する。
「さて、行くか」
俺は、目的の場所目掛けて転移魔法を使うことにした。
「……」
そこは、迷宮であった。そこは、今までに行ったどの迷宮よりも魔力に溢れていて強大だった。しかし、外観は小さいので些か迫力にかける。だが、そこから感じる魔力量は、桁違いであった。
「……」
迷宮の外の壁を抜けて中に入る。すると、目の前には桜の並木道があった。
「桜か。あったんだな。この世界にも」
ゆっくりと歩いて進んでいく。長い道を歩く間に、いくつもの魔物と出会った。しかし、それらのどれもが俺を見た瞬間に、ゆっくりと頭を下げて固まる。まるで、おかえりなさいと言ってくれているかのようだった。
(マスター、ここは)
「ああ、ここは」
やがて、一つの家が見えてきた。そして、その横には広大な畑が広がっている。
「俺達の家だ」
そこは、未来へと辿り着いた俺達の家であった。
「よっと。完全に自然飲み込まれてますね。それでも、原型があると」
「わしの日頃の手入れの賜物じゃな」
「いやいや、これは何日も手入れしてないでしょう。常識的に考えて」
「……人の気配が、無いようですが」
「流石に、2000年も経ってたらな」
皆が、何も言わずとも出てくる。すると、家の周囲が輝き始めた。
「えっ?」
「これは?」
光は集まると、空中に映像を映し出す。そこには、成長したアリーが写っていた。
「うん?ああ、もうそんな年なのね。最近日数を数えることすらしてないから。はい、ベイ。初めて未来に来た感想はどう?と言っても、貴方は大丈夫よね。そう言ってたし」
「あ、アリー?」
「そう。貴方のアリーよ。と言っても、かなりおばあちゃんだけどね」
いや、2000年も経ってる未来のアリーならそりゃおばあちゃんだろうけど。いや、今見ている彼女はとても若々しいぞ。まるで年を取っていない。胸はかなり成長してるし、顔は大人びてハイパー美人だけどな。
「えっと、これはどういう仕組だ?」
「えっとこれはね」
「ベイ君から連絡来たの?」
「ああ、そうよヒイラ。未来に来た過去のベイからね」
「ああ、それでこんなに近い距離にいるのに宝珠が鳴ったんだ。なるほどね」
「ヒイラもいるのか」
「まぁ、結構いるわよ。こっちにはね」
「こっち?」
俺は、アリーの周囲を見渡す。だが、どこかの部屋ということしか分からない。
「私達ね」
「うん」
「今、宇宙を旅してるの」
「……?」
驚きの未来。2000年も経つと、俺達は宇宙旅行をするらしい。なんでそうなるんだ。なにか理由があるんだろうか?




