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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・最終部 召喚魔法で異世界踏破
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創破の鎧

 ああ、久しぶりだな。


「世界全てを、揺るがしかねない驚愕の展開です!!しかし、戦いの開始時刻は目の前に迫っている!!本物か!!はたまた同姓同名の偽物か!!それを、あと5分もすれば我々は、真実として目にすることになるでしょう!!創世すら超えたと言われる幻想の力を、私達は、この目にすることが出来るのでしょうか!!!!」


 会場には、止むことの無い動揺のざわめき声。しかし、俺と一緒にこのフィールドに居る者たちの表情は違う。一瞬、確かに全員に動揺はあった。しかし、それも一瞬のこと。その後、全員が俺を見ているのが分かる。戦うという気持ちを宿して。ああ、そうだな。そうだ。俺が誰であろうと、この場にいる限りは君たちの敵でしか無い。たとえ、同じアルフェルトでも。


「……神を語るか」


 ナハトと呼ばれていた者が呟く。


「同姓同名?」


 続けるように、ウインディアと呼ばれた者が呟いた。


「……気にするな」


 俺は、そう一言だけ言う。そして、アルティの柄を握ったまま目を閉じて、ただ開始の時刻を待つことにした。


「答える気はないと?」

「その名を、この場で名乗る意味が分かっているのか?ただの同姓同名でしたでは、すまない事態だぞ」


 マスウェルとマックスも言葉を続ける。その言葉に、俺は目を開けて顔を向けた。


「……語って信じるのか?」

「何?」

「俺は、ここに君たちと同じようにして代表者として出てきた。それ以外に今、それは重要な情報なのか?」

「……」

「そうだ。気になるようだが、君たちも分かっているだろ。俺を知りたければ、ぶつかるしか無いぞ」


 そうだ。平和を手にして、力を手にして、最近こんな状況が無かった。だからこそ忘れそうになる。だから、俺に思い出させてくれ。戦うことでしか得られない感覚を。


「……」


 ……なんだろう。他の人達はやる気があるみたいなんだけど、フブキって子だけは雰囲気が違うな。まぁ、ニンジャ相手だからな。あまり考えても仕方ないか。心を読んでもいいけど、勝負感を取り戻したいし。今は自重しよう。


「残り1分!!!!」


 おっと、もう時間か。アルティを握り直す。そして、目の前を見据えた。


「さて」

「30!!」

「やるか」


 そう呟いた瞬間、体の内側から魔力が湧き上がる。まるで燃えたぎる炎のようにそれは、俺の内側から全身に行き渡り、俺の内側にいる全員が俺と共に戦う準備が出来たことを教えてくれた。 


「20!!」

「ハアッ!!」

「フッ」


 魔力を全身から吹き出して、マックスとマスウェルは鎧を纏う。マスウェルの鎧は、巨大じゃないんだな。安心した。他の人達は、クリームって子はガントレットを出してるか。ウインディアとフブキは、動き無し。ナハトは、剣と盾を出したな。ノーリアスは、札かな? 四角いカードにも見えるが。


「10!!」


 俺は、どうするかな。でも。


「6、5、4」


 この程度の魔力しか周りが纏って無いなら、鎧はいいか。


「3、2、1、試合開始!!!!」


 やはり、その瞬間真っ先に動いたのはマックスだった。


「マッハウインド!!」

「?」


 あれ、ディレイウインドじゃないのか? 魔法は違うが、それでもかなり速い速度でマックスは動き始める。そして、真っ先に駆けてきたのが。


「俺の方か」

「!?」


 マックスは、速度を緩めることも出来ぬまま、俺目掛けて蹴りを放つ。その足を、俺は素手で無造作に受け止めた。


「なっ!?」


 そのまま、足を掴んで一度空中に持ち上げる。そして、力を乗せて床に叩きつけた。


「がはっ!!!!」


 マックスの鎧が衝撃で弾け飛んで魔力へと還る。そして、痛みを感じてまだ間もないマックスを、俺はマックスが元居た位置目掛けて放り投げた。


「ぐあっ!!」


 回転しながら生身のマックスが転がっていく。そして建物の壁にぶつかると、そのまま動かなくなった。


「……マックスが」

「やられたのか?」


 少しの静寂を置いて、そのまま残りの全員が俺を睨みつけてくる。そして、構えた。


「あ、殺してはないからね」


 手加減はしたしな。


「……行くぞ!!」


 そう言って、ナハト達は俺目掛けて走ろうとする。しかし。


「動くな」

「な!?」


 ナハト達の足元が、いつの間にか凍結して床に張り付いていた。


「……」

「……初めまして。そして、お会いしとうございました。我らの父よ」


 そう言ってフブキは、俺の前に跪いた。


「お前、自分の種族を裏切るのか!?」

「裏切るだと?我らの種族は、今日この日、この時に我らの父がここに来られることを知っていた。ミズキ様から聞いてな」

「な、何だと!?」

「お前たちは、先祖が伝え忘れたらしいな。だが、私達は違う。今日、この日の為に我らは生きてきた!!我らの父を手助けするために!!!!」

「……」

「我らが父、ベイ・アルフェルト様。このフブキに、その力の末席に加わる許可を頂けないでしょうか?」

「えっと、つまり」

「契約をして頂きたいのです。貴方様と共に戦う名誉を、この若輩者の私に頂けないでしょうか?」

「……」


 えっと、どうすればいいのこれ? 種族ごとの試合中だよね。この場合、フブキを仲間にするとか有りなんだろうか?


「勿論、突然の申し出ですので私のことを信用できないのも仕方がないこと。ですので、この場で貴方様の敵を全て私が倒します。そのうえで、私はこの場を去りましょう。その後、どうか私をお連れ頂けないかお考え頂きたいのです」

「一人で残りをか?」

「はい。お任せ下さい」


 そう言うと、フブキは立ち上がってナハト達に向き直る。


「という訳だ。悪いが、手加減は期待するなよ」

「……なめられたものだ」


 ナハトが、剣を振るう。すると、ナハト達の足元の氷が一瞬の内に砕けて消えた。


(無駄が多い振りですね)


 レム先生の評価は厳しい。


「本当にそれが可能か、試してみろ」

「ええ、勿論」


 そう言うと、フブキは胸元から青い結晶を取り出す。こぶし大の大きさの星型の形をした石だ。なんだあれは。なんだか知ってる人の魔力を、あれから感じるんだけど。


「……本気か」

「ええ、本気です。創破水神の鎧、展開」


 そう言うとフブキは、先程の石に魔力を流した。すると、石が展開して鎧となり、フブキを包んでいく。少し形は違うが、まるでミズキの鎧を纏ったような姿になった。妙にメタリックだし、フブキが使ってるからなのか、所々凍っているが。


「貴様、アリー様が作った星の防衛兵器を」


 やっぱりアリーの作品なんだな、あれ。


「手加減は、期待するなと言ったはず」

「やむを得ないか」


 ナハトも、腰の辺りに手を回して黒い星型の石を取り出す。もしかして、それって全属性分あるのかな。あるんだろうな。アリーの作ったのだし。


「創破鎧神の鎧」


 その瞬間、ナハトの鎧の上から結晶が展開して新たな鎧を作り上げていく。今度は、レムの鎧に若干似てるな。でも、やっぱりメタリックだ。ロボと言われても頷ける光沢だな。


「やはり持っているか」

「お前のような奴を止めるために要らぬとは思えど持っていた。まさか本当に使ってくる奴がいるとは、思わなかったがな」

「ふっ、果たして本当にそうか、怪しいものだ」


 フブキとナハトがお互いに構える。その中で、俺の内側から声がした。


「いやぁ~~、ちょっと待って貰ってもええかな?」

「!?」


 相対するフブキとナハトの間に、一人の魔物が召喚される。それは、ザルシュだった。


「いや、やっぱ見とるだけって性に合わんわ。うちの旦那も召喚王やのに、召喚すら使わずに勝負付きそうやし、アルティはんすら今は振るっとらん。あ、あと私も最終進化がまだでなぁ。出来るだけ強いやつと戦ってからがええゆうことでな。あんさん、今ならなかなか良さそうやん」


 そう言って、ザルシュは足に漆黒の巨大なブーツを纏う。鋭い爪と、踵に鋭利な刃先がついたブーツだ。


「なあ、フブキはん。こいつ、譲ってもらってもよろしおすか?」

「……ザルシュ様が、そうおっしゃるのであれば」

「うお、うちのこともなんか伝わってるん?ああ、でも気にせんでええよ。ただの商売人やからな。さて」


 ザルシュは、ナハトに向かって足を突き出す。


「やろか」

「……瞬鋭か。相手にとって不足なし」


 ナハトは新たな剣と盾を作り出すと、ザルシュに向かって構えた。



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