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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・最終部 召喚魔法で異世界踏破
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未来へ

「我商会への志望動機は?」

「はい!!アルティがあることです!!」

「……」


 うちの商会なんだが、以前知り合いになった女性が多く在籍している。前に研究会活動で知り合ったマーサ、ミィル、ミラもうちで働いている。その他にも、あの時研究会に居た女性は、全員うちで働いている訳なんだけど。


「うちも、普通の商品を作るべきじゃない?」

「どういうことですか、アリーさん?」

「ほら。普通アピールのために」

「なるほど。一理ありますね。尖った商品ばかりだと抱合せで何か日用品を買おうと思った時にうちの商会にないってことになりかねないですからね。普通の商品を、作るのもありですね」

「いや、まぁ、それでもいいけど」

「それで、何を作ります?」

「……冒険者用の武器とか」

「えっ?うちの商品、日用品系ばっかの魔法グッズばかりなのにですか?」

「だからよ。屋内用の品しかないわけ。アウトドア。そう言った商品も置くべきじゃないかなと」

「はぁ、屋外用ですか。なるほど。うちも懐暖かですし、試して見る価値はありますね」


 そんなこんなで武器作りをするべく新たな職人を雇うことにしたわけだけど。


「どうぞ。って、あら、貴方」

「あの時はお世話になりました!!ミオです!!」


 ミオ。アルティの製作者である。この募集をかけてからまるで見張っていたかのように彼女は、うちのアルフェルト商会に就職を申し入れてきた。


「じゃあ、特技は?」

「はい!!刀剣の装飾です!!」

「美術的価値のある剣を作れると」

「魔石加工もできます!!」

「それは、貴方の家の秘匿技術でしょ」

「はい!!いざと成れば、装飾ぐらいには使う許可を得ております!!」

「なるほど。魔石で装飾を付けた剣。有りね。売れそう」

「はい!!ご検討、よろしくお願いします!!」


 その後、面接官のアリーが詳しく聞いたところ、最後に見たアルティの姿が今でも毎日夢に出てくるらしい。その姿を超えたものを作ろうとしているが、どうやってもうまく行かない。それどころか魔石が高くて手が出せない。そんな時、アルフェルト商会の噂を彼女は耳にしたという。一度はこちらへの就職も考えたらしいが、その時に募集していた職種は輸送物の警備員だった。ミオには、やりたくない仕事であった。それでも、毎日アルフェルト商会をアルティを思って気にする日々が続いたという。そしてついに、武器職人募集の就職案内が出された。それを見て、一も二もなく彼女は、実家に話をつけて出てきたという。


「……」

「……」

「採用」

「やったああああああああああああああ!!!!」


 その後、ミオの作った魔石装飾のされた剣は、美術的価値を評価されてそこそこ貴族などに売れている。たまに俺と出会うと、アルティを見せてと言って、見せると鼻血を吹き出して倒れるを繰り返している。それでも、最近は慣れてきたのか倒れるのを堪えるようになった。ミオも成長しているな。ちなみにだが、これ以上のなんて無理だという結論に達してアルティ以上の魔剣作りは諦めたらしい。 ……ミオにアリスティルサを見せたらどんな反応をするだろうか? なんか笑顔で心臓止めそうだからやめておこう。俺はそう思った。


「子供たち、じいじが来ましたよ!!!!」

「お祖父ちゃんだ!!!!」

「登れ!!!!」

「ぐおおおおおおおおお!!!!」


 カエラとノービスは、商会立ち上げ前からうちによく来るようになっていた。特に、子供たちをアリー達が妊娠し始めてからはカエラがよく来るな。前の実家である俺の家も、この結界内にあるから行き来は簡単だ。休みの日の午後には、カエラとノービスが揃って家に来て子供たちに登られてノービスが潰れかけるという光景がよく見られる。微笑ましい。


「まだいける、じいちゃん?」

「い、行けるぞ!!まだいける!!」

「腰を壊すぞ、父さん」

「ベイ。お前の子を、俺が背負うのが苦に見えるのか」

「いや、体が悲鳴を上げているように見えるんだけど」

「家族の体重は、幸せの重さだ。俺は、まだ支えられる!!」

「いや、5人行けば凄いほうだって。もうやめておこう?」

「そ、そうだな。今度リベンジする。今度な」

「うん」

「よし、みんな降りろ!!」

「楽しかった!!ありがとう!!」

「「「「ありがとう!!!!」」」」

「ああ、いつでも登りなさい!!」


 ノービス、嬉しそうだな。うちの子達が聞き分けのいい子たちで良かった。守りたい、この笑顔。


「……娘たちはいいのか?おじいちゃんと遊ばなくて」

「登るならパパかな」

「おじいちゃんには、負担になっちゃうし」

「パパの筋肉は、素晴らしい」

「……そうか」


 俺に密着しながら娘たちはそう言う。近い。かなり近い。まぁ、まだまだパパ離れ出来てないだけだろ。そう思うことにする。


「今日の晩御飯は何かな?」

「熟成鶏の濃厚スープ!!!!」

「あれか!!凄い美味いやつ!!!!」

「楽しみ!!」

「楽しみだねぇ!!」


 ……いいなぁ、家族って。微笑ましい。こうして、未来が動いていく。人と関わり、決断をして時の流れが決まっていく。そして。


「出来たわ」

「いよいよ未来に行くわけか」

「ええ」


 俺は、アリーに渡された赤い玉を握りしめる。


「それにベイが魔力を注ぎ込んだ時点で未来に飛ぶわ。そうなってるから」

「ああ」


 未来ねぇ。アリーの作ったものだから信用できはするんだが、物が物だからなぁ。かなり緊張する。タイムワープだぞ。緊張しないはずがない。


「これで、私達に降り注ぐあらゆる困難が分かるようになる。そのはずよ」

「ああ。それを見て、未来をいい方向に導く。まるでゲームの中の出来事みたいだな」

「ゲーム?」

「ああ、俺の元いたところのゲームでね。こう、絵を動かして作った物語の中でキャラクターを操作して選択肢を決めたりして遊ぶんだけど。ゲームだと何度でもやり直して選択肢を選べるから、それみたいだなって」

「なるほど。確かに、今の私達がしようとしてるのは、それかもしれないわね」

「うん」

「でもね、ベイ。よく聞いて」

「うん」

「たとえ、あなたにとってそれが少し納得の行かない未来でも、やり直し続けるっていうのはやめたほうがいいと思うの」

「なるほど」

「確かに、今ベイの言ったように、今後ベイは何度でも納得の行く限り人生をやり直せるようになると思う」

「うん」

「だけど、だからって人生をゲームと同じだと思っちゃ駄目だと思う。ベイにはそれが出来ても、他の人にはそれが出来ないんだから」

「分かった」

「例えば、娘たちがパパのお嫁さんになるっていい年になっても言い続けててもよ」

「……」

「ま、そういうことで、ベイ、いってらっしゃい」

「……ああ、行ってきます」


 赤い玉に俺は、魔力を流していく。大きな魔力が玉に蓄積されていき、そして閃光を放った次の瞬間、俺は未来へと飛ばされた。



 


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